ドラゴンのタトゥーをした天才ハッカー、リスベット・サランデルを主人公した‘ドラゴンのタトゥーの女’(ミレニアム・シリーズ)第3弾の新作「蜘蛛の巣を払う女」(原題「The Girl in the Spider's Web」)を期待してみましたが‥
「ミレニアム」の原作者スティーグ・ラーソン(1954~2004没、享年50歳、「ミレニアム」は、3部構成)のオリジナル原作から起こした脚本では、ないため(ミレニアム・シリーズ第4話「蜘蛛の巣を払う女」は、スウェーデンの作家
ダビド・ラーゲルクランツが、執筆)プロットのメインが、リスベット出生の秘密(謎の多い過去)と二卵性双生児の妹カミラとの確執が、中心となり前作シリーズより多いアクションも霞んでしまいました。
監督は、ウルグァイ出身のフェデ・アルバレス(1978~)で今回、主人公のリスベット・サランデルをイギリスの女優クレア・フォイ
(1984~)が、演じています。
2009年「
ミレニアム3部作」は、スウェーデンの女優ナオミ・パラスが、2011年「
ドラゴンのタトゥーの女」では、アメリカの女優ムーニー・マーラが、それぞれ個性的なリスベット・サランデルを演じました。
新作「蜘蛛の巣を払う女」のストーリーの骨子は、人工知能(=AI)の世界的権威フランスのバルデル博士が、開発した核保有国の
核攻撃システムにアクセス(侵入=ハッキング)するプログラムが、図らずもアメリカ国家安全保障局(NAS)の手に渡りました。
核保有国の核攻撃システムへのアクセスプログラムを開発したことをいたく後悔したバルデル博士は、天才ハッカーのリスベットに「君しか頼めない。私が、犯した罪(核攻撃システムへのアクセスを可能にしたこと)を取り戻して欲しい。」と依頼しま
した。
世界中のハッカーからスズメバチと呼ばれ一目置かれている天才ハッカーのリスベットにすれば、精巧なセキュリティのかかったアメリカ国家安全保障局(NAS)システムへの侵入は、簡単なはずでした。
だが、厳しい冬のストックホルムには、河も人の心も凍てつかせる陰謀が、渦巻いていました。
リスベットは、16年前に生き別れた双子の妹カミラが、元KGBに所属しその極秘組織を裏で操っていた亡き父親(=精神異常者で双子の姉妹は、彼の虐待の被害者であった)の後継者となり、スパイダーという秘密組織を率いて世界征服と自分を置いて逃亡した姉のリスベットを恨み、彼女の回りを蜘蛛の巣のように張り巡らした罠(怨念の復讐)であることに気づきました。
双子の妹カミラをオランダのシルビア・フークス(1983~、2013年「
鑑定士と顔のない依頼人」、2017年「
ブレードランナー 2049」に出演)、リスベットの協力者で雑誌「ミレニアム」の記者ミカエルをスウェーデンのスベリル・グドナソン(1978~)が、演じ、出番は、少ないもののミカエルの妻にビッキー・クリープス(1983~、2017年「
ファントム・スレッド」で引退する名優ダニエル・デイ=
ルイスの相手役に抜擢)、さらにアメリカ国家安全保障局(NAS)の特別IT監視官アロナをラキース・スタンフィールド(1991~、2013年「
ショート・ターム」で自殺未遂常習の黒人少年を好演)が、脇をしっかり固めています。
面白い映画ながら前作の2作品に比べインパクト(リアリティと云っていいかも)に欠けるのは、スパイダーという
秘密組織の存在が、希薄なことと十重二十重に厳重なシステム防御(ブロック)されているはずの高性能クラウド・コンピューターへのアクセスが、あまりにも簡単過ぎ、すぐハッキングされるシーンの連続は、やや鼻白み、もう少し演出の工夫(メリハリとキレ)が、欲しかったと私は、思いました。