
三宅唱監督(1984〜、「
ケイコ 目を澄ませて」)の 新作「旅と日々」を観ました。
奇才漫画家 つげ義春(1937~)の 短編二作を 三宅監督が、「夏と冬のパート」に分け、映像と 音の叙情詩とし

て描いています。
スランプに陥り 少し自己喪失している 主人公の韓国人女性脚本家李を シム・ウンギョン(1994〜)が、好演、

「旅と日々」の冒頭(つかみ)から 映画前半(李の脚本を映画化した 劇中劇)に描かれる「夏のパート」の 主人公を演じる 河合優実(2000〜「
由宇子の天秤」主演)ならびに、後半の「冬のパート」で、旅人の脚本家 李とからむ

雪国の 鄙びた宿の主を演じる 堤真一(1964〜)二人の ‘存在感’が、秀逸です。
劇中劇の「夏のシーン」で 河合優実演じる若い女性が、着ている ブルーの ワンピースと 台風で荒れる海で泳ぐ

水着の姿は、つげ義春ならではの エロス感を漂わせ、三宅監督の演出が、光ります。
つげ義春短編漫画が、原作の 片山慎三監督作品「
雨の中の欲情」も秀作です。

こちらは、成人映画指定(18R+)で過激な性描写シーンの多い映画です。
つげ義春のエロスが、「旅と日々」では、河合優実演じる 若い女性の肢体が、デトックス(解毒)されているので、

叙情的なエロスと云えるでしょう。
無愛想で 朴訥な雪国の宿屋の老主人の 佇まいも つげ義春漫画の人物像そのもの、夜中に豪雪の山道を 李と

一緒に、別れた元妻の実家の池へ 錦鯉を盗みに行くシークエンスは、つげ義春の諧謔性が、漂い、雪国の夜の情感溢れる 静かな映像と相俟って印象に残ります。

スイス、ロカルノ国際映画祭で グランプリを受賞、ストーリーも淡々としており、派手な見せ場は、ありませんが、滋味のある日本映画の秀作でした。