
名優 アンソニー・ホプキンス(1937〜)主演の新作映画「ONE LIFE」は、珠玉の作品です。
ジェームズ・ホーズ監督(TVのドキュメンタリー・ディレクター出身、プロファィル不詳)は、‘ONE LIFE’に「ある人生」と「一つの命」の意味を重ね合わせ(ダブルミーニング)て、アンソニー・ホプキンス演じる 老イギリス人と、映画の背景となる 1988年の 49年前 1938年、ナチスドイツ支配下のプラハで 救おうとして救えなかった ユダヤ人の子供たち何千人もの、一人ひとりの命を プロットにしています。
日本での上映時、原題のままにしたのは、正解ですが、その代わりに付けた「奇跡が 繋いだ 6000の命」という長ったらしい サブタイトルは、間違いで、映画「ONE LIFE」の プロットを曖昧なものにし、6000もの命を救ったのだと見る人の目を曇られてしまいます。

プロットは、アンソニー・ホプキンス演じる主人公が、救えなかった子供たち何千人もの命へ 無念と 苦悩を何十年も引きずり呻吟している心理ドラマですから、何とも残念で 情けなく思いました。

ジェームズ・ホーズ監督の長編映画監督デビュー作品ながら 劇作家で脚本家の ルシンダ・コクソン(1962〜、2015年「
リリーのすべて」脚本)の 史実に基づく脚本と相俟って ジェームズ・ホーズ監督が、ドキュメンタリー映画制作で培った 臨場感センス(リアリティ)は、1938年、ナチスドイツ侵略下のチェコ(プラハ)で 起きた残酷非道な歴史の悲劇を描きながら 今もなお 世界各地で起きて

いる戦争の犠牲者たちの悲劇を見ているような 臨場感が、ありました。
映画は、1938年、チェコを侵略しプラハを支配した ナチスドイツから迫害され、殺されるか 強制収容所へ送られていた ユダヤ人の子供たちを救出するため 自らの命も顧みず、戦争難民として 自国のイギリスに出国させ、命を救おうとし実際に 669人のユダヤ人子供難民を救済した実在の市民 ニコラス・

ウィントン氏(1909~2015)が、主人公です。
アンソニー・ホプキンスは、それから49年後の1988年、半世紀経ってもなお自分が、救えなかった数多の子供た

ちの命に思いを馳せ、悲嘆し苦悩する ニコラス・ウィントン氏を その表情と佇まいで名演、さすがアンソニー・ホプキンス、見事です。

戦後、家に引きこもり、救出できなかった子供たちのことで 自責の念 癒えず、戦時中のプラハでの、この活動について一切沈黙し、独り苦悩し続けていたニコラス氏をある日、一人の高齢の女性が、彼を訪ねて来ました。
彼女は、彼が、多くのユダヤ難民子供たちの 出国申請ファイルを廃棄せず 大切に保管していることを知り、BBCでこの史実の番組制作を企画していたのでした。

BBC特別番組制作チームは、そのファイルを基に、当時の子供たちの生死と 彼らの行方を調べました。
1938年当時の若い ニコラス・ウィントン氏を若手俳優の ジョニー・フリン(1983〜)が、好演、49年後の老いた

ニコラス・ウィントン氏を演じる アンソニー・ホプキンスと ジョニー・フリンの目元が、何となく似ているため ドキュメンタリーのような リアリティを感じました。

ただ純粋に 目の前に苦しむ人が、いたら 手を差し伸べるという、根源的な 人間愛に満ちた青年を ジョニー・フリンが、見事に演じています。

良識に基づく行動と 他者への優しさと 敬意を 息子に教えたと 胸を張り、プラハにいる息子からの 無理難題に近い要望を イギリス政府相手に交渉する 凛としたニコラスの母を名女優の ヘレナ・ボナム=カーター(1966〜)

が、ニコラスの苦悩を理解し ユーモアをもって 支え続ける妻 グレーテを スウェーデンの名女優 レナ・オリン(1955〜)が、脇をしっかり固めて 映画を濃くのあるものにしています。