ブログトップ | ログイン

心の時空

yansue.exblog.jp

a day in my life

波 紋  シネマの世界<第1222話>

波 紋  シネマの世界<第1222話>_a0212807_10250653.jpg荻上直子監督(1972~、2005年「かもめ食堂」、2007年「めがね」、2010年「トイレット」)の オリジナル脚本・監督による 新作「波紋」は、50歳を過ぎ、自分の内にある 意地悪さや 嫌いな人は、徹底的に嫌だし、不愉快なことされたら 根に持つし、しつこい性格などと自分を隠さず 筒井真理子(1962~、2016年「淵に立つ」主演、2019年「よこがお」主演)演じる主人公の主婦 依子に 自己を投影して撮った 秀作です。
荻上監督は、普通の主婦 依子の目(現実)と 心(本音)を通して、今や死語となった 過っての 女性規範であった ‘良妻賢母’への 柵(しがらみ)や 今でも 日常生活に 亡霊のように潜む ‘男尊女卑’の風潮を ブラックコメディとして演出、依子のまわりで起きる 日常茶飯事の出来事を 彼女の人生の ‘波紋’として描き、新作「波紋」を 一流のエンターテインメント娯楽映画にしました。
波 紋  シネマの世界<第1222話>_a0212807_10253067.jpg
映画は、私たちのまわりにある放射能の環境汚染不安、高齢者介護問題、まとわりつく 宗教の悪弊、障碍者差別など社会の不穏な空気を背景に、さらに その場の雰囲気にすぐ同調する人たちの 無気味さを醸し出しなが
波 紋  シネマの世界<第1222話>_a0212807_10262209.jpg
ら、更年期の主婦 依子の 不安と絶望を ヒンヤリ ねちねちと描いていきます。
平凡な主婦の依子は、緑命会と称する新興宗教の信者で、祈りと勉強会に日々励みながら 暮らしていました。
波 紋  シネマの世界<第1222話>_a0212807_10264611.jpg
そんなある日、十数年前に失踪した夫の修(光石研 1961~、2011年「あぜ道のダンディ」、2021年「バイプレイヤーズ もしも100人の名脇役が映画を作ったら 」、2023年「逃げきれた夢」)が、突然 帰って来ました。
波 紋  シネマの世界<第1222話>_a0212807_10264264.jpg
修は、高齢で寝たきりの父親の介護を 妻の依子に押し付け、失踪、亡くなった父親の葬儀にも帰宅しませんでしたが、突然帰って来たその理由は、癌を患い、高額の治療費が、必要となり援助して欲しいとの金の無心のため
波 紋  シネマの世界<第1222話>_a0212807_10273028.jpg
でした。
そんな時、離れて暮らす一人息子が、障碍のある年上の女性(津田絵里奈 1987~、自分が、先天性難聴という
波 紋  シネマの世界<第1222話>_a0212807_10275741.jpg
こともあって 聾唖の女性をリアルに好演)を連れ帰り、結婚する相手として 母親の依子に紹介しました。
パート先の スーパーでは、クレーマーの常連客(柄本明 1948~)に 罵倒され、自分が、どうすることもできない
波 紋  シネマの世界<第1222話>_a0212807_10281250.jpg
トラブルに押しつぶされそうな依子は、そのストレスによる悪感情を、新興宗教に のめり込むことで誤魔化し、爆発しそうな自分の感情を必死で抑えていました。
波 紋  シネマの世界<第1222話>_a0212807_10282182.jpg
依子の勤める スーパーの同僚(木野花 1948~)は、一人暮らしの孤独感の毒を吐くように依子が、必死で抑えている内なる感情を煽り、新興宗教 緑命会の女教祖(キムラ緑子 1961~)は、依子の内なる 不安と混乱につけ
波 紋  シネマの世界<第1222話>_a0212807_10291634.jpg
入り、怪しげな命の水(たぶん水道水)を大量に 高額で売り、まがい物の物品を ‘あなただけ特別に’と言葉巧みに売り付けていました。
波 紋  シネマの世界<第1222話>_a0212807_10291990.jpg
荻上直子監督の オリジナル脚本が、虚しい現実と孤独、それに向き合う者の心理を赤裸々に暴くプロットで、それに併せ、荻上監督の演出も 容赦なく、映画に登場する女性たちを、それぞれ皆、精神の弱さ、思考の危うさ、
波 紋  シネマの世界<第1222話>_a0212807_10292865.jpg
心根の意地悪さ、強欲さ、自分勝手(利己主義)さを 重ね合わせて抱える、それゆえに どこか狂っている女たちとしてリアルに描いています。
波 紋  シネマの世界<第1222話>_a0212807_10293197.jpg
エンディングで、雨の中、喪服を着た依子が、濡れながら フラメンコを踊るシークエンスは、還暦を過ぎた 筒井真理子の女性としての 魅力にあふれ、悩ましく、なかなかセクシーなシーンでした。

by blues_rock | 2023-08-10 00:10 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
名前
URL
削除用パスワード