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心の時空

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ブータン 山の教室  シネマの世界<第1102話>

ブータン 山の教室  シネマの世界<第1102話>_a0212807_15342738.jpg映画館のない国、幸福度世界一を目指す国 ブータンの映画「ブータン 山の教室」は、何の外連味もない、何の事件も起こらない、静謐(しずか)な映画ですが、心惹かれて 2回見ました。
原題は、「ルナナ(標高4800㍍ 山岳僻地の村) ヤク(牛のような家畜)のいる教室」で ここが、映画の舞台です。
ルナナ村は、ヒマラヤ山脈を望む 山岳地帯にある人口 70万人の王国 ブータンの首都 ティンプー(標高2200㍍ 人口 20万人)から バスで 2日かけ 山奥の小さな町ガサ(人口 480人)の町まで行き、さらに 険しい山岳地帯の小道を 途中野宿しながら 6日かけ、北のヒマラヤ山脈へ向かい、ようやく辿り着く標高 4800㍍ 山岳地帯の僻地にある人口 56人の小さな村です。
是枝裕和監督作品を愛する監督の パオ・チョニン・ドルジ(1983~)は、「ブータン 山の教室」が、監督デビュー作品で、主人公の 教育実習生で 見習い教師 ウゲンを演じた
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シェラップ・ドルジ(プロファィル不詳)ほか、ルナナ村の村長代理で ティンプーまで ウゲンを迎えに来た ルナナ村の青年 ミチェンを演じたノルブ・へンドゥップも、ウゲンに「ヤクに捧げる歌」を教える ルナナの村娘 セデュを演じた
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ハモ・グルンも、ルナナ村の ‘9人の子供たち’、村長も村人たちも全員、演技経験のない人たちです。
標高 4800㍍(富士山山頂の 1.5倍)の山岳の村(まさしく天空の村)に電気も電話もインターネットも無く、彼ら村ブータン 山の教室  シネマの世界<第1102話>_a0212807_15353649.jpg人は、民族衣装を身にまとい、不思議なことに英語を流ちょうに話しますが、長い間(200年近く)イギリス帝国の植民地であった隣国インドとの交流と経済関係からです。
映画は、オーストラリアに移住し歌手になるのが、夢の ヤル気のない見習い教師 ウゲン(シェラップ・ドルジ)が、主人公ながら、高地ブータンのヒマラヤ連山麓に広がる山岳地帯の自然と ルナナ村で暮らす
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人たち(映画に実出演している人たち)のすばらしいこと! とくに ‘9人の子供たち’の表情は、そこらの宝石よりもずっと美しく、学級委員のペム・ザムちゃん(9才、本名同じ)の瞳が、ダイヤモンドのようにキラキラ輝き、彼女ブータン 山の教室  シネマの世界<第1102話>_a0212807_15373673.jpgの純真無垢な心もまた主人公です。
映画は、教育実習生で見習い教師 ウゲンが、冒頭、5年間の義務教員養成期間、最後の 1年を残し、ミュージシャンを夢見るばかりで、教育実習生必須の義務を放棄、その怠惰な態度(ヤル気の無さ)から 所長に呼び出され「1年間、ブータン 山の教室  シネマの世界<第1102話>_a0212807_15385902.jpgルナナ村で教員をしなさい!」と厳しく指導されるところから始まります。
ルナナ村に行きたくないウゲンが、「高山病になるので‥」と抵抗すると 所長から「あなたの病気は、怠け病です!」と ピシャリ告げられ、真冬になりルナナ村が、雪に閉ざされるまで 春と夏の 4か月間 ルナナ村で教員をするよう
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命じられました。
村長を始め村人たち全員から大歓迎され、そして尊敬され、子供たちから慕われていくうちに、ウゲンは、ルナナ
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村人たちのお互いを思いやる気持ちに触れ、また村人たちから尊敬され 丁寧にもてなされ、必要とされることへの喜びを感じ、‘人生に大切なもの’に気付きました。
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ヒマラヤ山頂に雪が、積もり始めた晩秋、4か月の臨時教員期間を終えたウゲンは、山を下り、オーストラリアへ移住しました。
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ウゲンが、ルナナ村を発つ前の、別れの シークエンス、村長始め村人たちから惜しまれる シーン、教え子の子供たち 9人から泣かれる シーン、「ヤクに捧げる歌」を教えてくれた村娘 セデュと 淡い恋(「初恋のきた道
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を懐い出しました)を伝え合うシーンなど、胸にグッと迫ります。
映画は、シドニーに移住し、夢が、叶い ライブ・バーで、弾き語り歌手として出演している ウゲンの姿を映して終
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わります。
バーにいる客で、ウゲンの歌を聴いている者は、一人もおらず、彼らは皆、おしゃべりに夢中か、酔っ払っている
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客だけで 彼が、歌うのを止めるとバーは、急に静かになり 彼に注目が、集まりました。
ウゲンは、 ルナナ村を懐かしむように セデュから習った「ヤクに捧げる歌」をブータン語で歌い始め、エンドクレ
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ジットロールが、始まりました。(上写真 : 撮影の合間、パオ・チョニン・ドルジ監督と談笑する ペム・ザムちゃん)
心洗われたい方にお薦めいたします。

by blues_rock | 2021-06-24 00:04 | 映画(シネマの世界) | Comments(2)
Commented by ryuboku2 at 2021-06-26 13:05
(遅ればせのコメントで失礼いたします)

昨日ようやく観ることができました!
長年ブータン、ネパールへの旅を夢見てきましたが、身体的な理由でさすがに現実には無理だ、と断念しました。

映画の舞台がブータンの中でも高地にあり到着すること自体が(訪問者には)困難であることを仮想体験しながら、画面に惹き込まれていきました。
雪が降るまでの限られた時間の中で通い合う心を、淡々と表現し続けていたことが、今ズシンと心に残ります。

一年未満の僻地校での経験を持つ若かりし頃の思い出が甦り、憧れのブータンの山々や谷川の水音を聞けました。

最終日に観られて幸運でした。ご紹介頂き、ありがとうございました。

(皮肉にもノマドランドとの二択を迫られましたが、私はブータンを選びました。)
Commented by blues_rock at 2021-06-28 12:00
何の外連味もない映画なのに、全編を通しての息を呑む美しさと、ヒマラヤ山脈の高地(と云うよりブータンでも僻地)に住まう人々の純朴さと子供たちの無垢さ、その美しい瞳に魅入られて 2度見ました。
私の心を わくわくさせる音楽やドキドキさせる美術、ウキウキさせる人たちの中で短い地球滞在時間を楽しみたいと思います。
人生、死ぬこと以外、かすり傷と思って暮らしています。
コメント、ありがとうございました。
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