ブログトップ | ログイン

心の時空

yansue.exblog.jp

a day in my life

ハニーボーイ  シネマの世界<第1050話>

ハニーボーイ  シネマの世界<第1050話>_a0212807_20251283.jpgまだ三十代ながら、すでに名優の域にいる シャイアー・ラブーフ(1986~、現在 34歳)が、老け役で出演している以外何も知らないで見た新作「ハニーボーイ」ながら、この映画も若手女性監督 アメリカの アルマ・ハレル(1976~、現在 44歳)の作品でした。
長年ドキュメンタリーや CFを撮っていた ハレル監督の個性(演出センス)は、ドキュメンタリー(事実)とフィクション(虚構)をバリアーフリーにしたようなストーリー構成の独創性にあると思います。
脚本は、主人公オーティス(= ‘ハニーボーイ’、子役だった シャイアー・ラブーフが、子供のころ彼を虐待した父親から呼ばれていた ‘ニックネーム’、可愛い坊や くらいの意味)の、その父親役を演じた シャイアーが、2008年 22歳のとき、泥酔して交通事故を起こし(左手指 2本を失う)収容された更生施設で、アルコール依存症治療を受け PTSD(心的外傷ストレス障害)の兆候を診断され、心療カウンセラーから過去の記憶を洗いざら
ハニーボーイ  シネマの世界<第1050話>_a0212807_20285835.jpg
いノートに書くよう指導されました。
そのノートを旧知の友人アルマ・ハレル監督が、読み、高く評価、ハレル監督は、「ぜひ私の手で映画にしたい」と
ハニーボーイ  シネマの世界<第1050話>_a0212807_20291301.jpg
シャイアーに伝えました。
映画では、泥酔して交通事故を起こした 22歳のオーティス(シャイアー・ラブーフ)を ルーカス・ヘッジズ(1996~、
ハニーボーイ  シネマの世界<第1050話>_a0212807_20293084.jpg
2016年「マンチェスター・バイ・ザ・シー」も秀逸)、‘ハニーボーイ’と呼ばれ、虐待されても父親を愛し、離れない 12歳のオーティスを ノア・ジュープ(2005~、14歳のときの出演ながら屈折した心理の演技は、秀逸)が、演じ、
ハニーボーイ  シネマの世界<第1050話>_a0212807_20293485.jpg
シャイアーは、自分の PTSD(トラウマ)の元凶である父親の役を まるで中年の父親が、彼に憑依したかのようにリアルに演じています。
ハニーボーイ  シネマの世界<第1050話>_a0212807_20295663.jpg
父親のジェームスは、元ヒッピーで辺り構わぬ無頼な男ですが、子役として活躍する息子の オーティスを誰よりも愛し(ジェームス本人は、そう思っていた)、息子のマネージャーで 生活費のすべてを息子のギャラに頼らざるを
ハニーボーイ  シネマの世界<第1050話>_a0212807_20300005.jpg
得ない自分の不甲斐なさと その屈折した愛と憎、裏腹な憤懣をアルコールで紛らわし、鬱憤を息子オーティスにぶつけていました。
ハニーボーイ  シネマの世界<第1050話>_a0212807_20390138.jpg
ハレル監督は、余計な背景の説明を一切せず 12歳のオーティス(=シャイア・ラブーフ)を 親の愛に飢えた少年として(映画には、登場しませんが、母親は、アルコール依存症のレズで 息子オーティスを 父親に押し付け、
ハニーボーイ  シネマの世界<第1050話>_a0212807_20304387.jpg
つまり捨て、同じアルコール依存症の女性と同棲とている)、家族愛を求める孤独な少年として描いています。
孤独な オーティスを家族のような愛で包むのが、同じ貧しいモーテルに住む 黒人の娘 シャイガール(FKAツイ
ハニーボーイ  シネマの世界<第1050話>_a0212807_20313977.jpg
ッグス 1988~、イギリスのミュージシャン、映画初出演)です。
オーティスと シャイガールは、劇中何度も抱き合い(ただ抱き合いハグするだけ)ますが、このシーンを始め、ア
ハニーボーイ  シネマの世界<第1050話>_a0212807_20314302.jpg
ルマ・ハレル監督の ドキュメンタリー(事実)とフィクション(虚構)をバリアフリーした難しい演出に応えた女性撮影監督 ナターシャ・ブライエ(1974~、2016年「ネオン・デーモン」の撮影監督)の映像は、少年と少女のファンタジーな
ハニーボーイ  シネマの世界<第1050話>_a0212807_20314755.jpg
心の交歓を醸し出し 秀逸です。
シャイア・ラブーフは、この映画を撮るため、長く絶縁していた父親と会ったそうです。
ハニーボーイ  シネマの世界<第1050話>_a0212807_20315900.jpg
シャイアは、前作の「ピーナッツ・バター・ファルコン」で、ダウン症青年(演じた俳優もダウン症ですばらしい演技を披露)を相手に演じた、たった一人の家族である愛する兄を自分の運転する車の事故で亡くし、その喪失感で 心の傷の癒えなハニーボーイ  シネマの世界<第1050話>_a0212807_20320233.jpgい若い漁師の役が、秀逸でした。

(左写真 : アルマ・ハレル監督と 脚本・主演の シャイア・ラブーフ)

by blues_rock | 2020-09-09 00:09 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
名前
URL
削除用パスワード

by blues_rock