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心の時空

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キヨスク(17歳のウィーン フロイト教授の人生のレッスン)  シネマの世界<第1045話>

キヨスク(17歳のウィーン フロイト教授の人生のレッスン)  シネマの世界<第1045話>_a0212807_22192777.jpgスイス出身の稀代の名優 ブルーノ・ガンツ(1941~2019没、享年 77歳)の遺作「キヨスク(17歳のウィーン フロイト教授の人生のレッスン」をキノシネマで見ました。
昨年 7月18日~28日、福岡市総合図書館(シネラ)で開催された「EUフィルムデーズ 2019」で、ドイツ語原題直訳の「キヨスク」(このタイトルのほうが、映画のプロットに合う)として公開されたようですが、私は、その時見逃して、一年遅れになってしまいました。
1937年、ヒトラー率いるナチスドイツが、オーストリアに対しドイツとの併合(ドイツ第三帝国としての統一国家)を迫り、それに反対する当時の首相 シュシュニックは、暗殺され、ウィーンの街の至るところに ナチスドイツの旗が、掲げられたウィーンの街を背景に、街角のタバコ店(キヨスク)を舞台にした人間ドラマです。
「17歳のウィーン」と云うセンスのない ダサいタイトルに私は、がっかりし、当初 気持ちの曳けるところもありましたが、名優ブルーノ・ガンツ最期の
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作品なので 些細なこだわりは、捨てて見に行きました。
へそ曲がりで 天邪鬼の私は、見たいのに、タイトルが、気に入らないで 見ない映画も多々あります。
キヨスク(17歳のウィーン フロイト教授の人生のレッスン)  シネマの世界<第1045話>_a0212807_22201663.jpgオーストリアの監督 ニコラウス・ライトナー(1957~)の演出は、片田舎からウィーンに 母親と昔関係のあった男 オットー(ヨハネス・クリシュ 1966~)の経営する キヨスク店で働くために出て来た 初心(うぶ)で 純真な 17歳の青年フランツ(ジーモン・モルツェ 1996~)の 目と心を通して、1937年代当時 ナチスドイツに支配された ウィーンの陰鬱なキヨスク(17歳のウィーン フロイト教授の人生のレッスン)  シネマの世界<第1045話>_a0212807_22202087.jpg時代背景と、退廃した社会への 彼の好奇心を通して描いていきます。
そして、主人公のフランツが、少しずつ大人に成長していく姿を、彼の現実(リアル)と 幻想(シュールなファンタジー)を交えながら、彼を取り巻く当時のウィーン社会の鬱屈した空気感を 撮影監督 ハーマン・ドゥンツェンドルファー(1956~)は、ヒンヤリとした映像で撮っキヨスク(17歳のウィーン フロイト教授の人生のレッスン)  シネマの世界<第1045話>_a0212807_22202446.jpgています。
ユダヤ系オーストリア人で 世界的に有名な精神科医 ジークムント・フロイト教授(ブルーノ・ガンツ)は、キヨスクの常連でした。
‘頭の病気を治す医者’ としてフロイト教授を尊敬する キヨスクの店主 オットーは、店に来たばかりのフランツをフロイト教授に紹介しました。
キヨスク(17歳のウィーン フロイト教授の人生のレッスン)  シネマの世界<第1045話>_a0212807_22204063.jpg
少年期から青年期に移る年頃のフランツは、知的好奇心が、強く、知り合ったばかりのフロイト教授に、自分の人生への迷いを相談します。
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ナチスドイツによるオーストリア併合で、多様で華やかな芸術・文化の都ウィーンは、凋落し 陰鬱な空気に包まれ、分断された市民は、お互い対立し、第二次世界大戦への激動の時代を迎えようとしていました。
キヨスク(17歳のウィーン フロイト教授の人生のレッスン)  シネマの世界<第1045話>_a0212807_22211839.jpg
ライトナー監督は、人間の命や個人の尊厳を奪う 諸悪(ポピュリズム)の 独裁者 ヒトラーと ナチスドイツの残虐さを、若いフランツと老フロイト教授との出遭い、さらに年齢を超えた友情、若き青年フランツの初恋と失恋、その後キヨスク(17歳のウィーン フロイト教授の人生のレッスン)  シネマの世界<第1045話>_a0212807_22213001.jpgの成長を幻想的な映像美で描いています。
映画「キヨスク」は、様々な人生の行き交う場としての「キヨスク」を 舞台にしたプロットで、稀代の精神分析医にして心理哲学者 フロイトが、唱えた「リビドー」理論、つまり、人生の享楽(と表裏一体の苦悩)、それぞれの人生を取り巻く精神の快楽(と表裏一体の苦痛)を映像化したものなキヨスク(17歳のウィーン フロイト教授の人生のレッスン)  シネマの世界<第1045話>_a0212807_22213717.jpgので、日本の公開タイトルの「17歳のウィーン フロイト教授の人生のレッスン」は、プロット骨子を説明しているだけなのに 言い得て妙かもしれないと思いました。
フランツは、フロイト教授から「私の本など読まずに 恋をしなさい」と、人生をもっと楽しむよう諭されると 街に出て、ボヘミア出身の素生の知れない年上の女性 アネシュカ(エマ・ドログノヴァ 1995~)と出遭い、キヨスク(17歳のウィーン フロイト教授の人生のレッスン)  シネマの世界<第1045話>_a0212807_22220266.jpg一目惚れしました。
劇中、フロイト教授が、腹(たぶん胃)痛が、持病のシャイな青年 フランツに「三つの処方箋を(口頭で)書こう。まず 一つ目、恋は、君の腹痛に効く。 愛について考えるのをやめなさい。 次に二つ目、腹痛と 君を苦しめる夢に効く。 ベッド横に 紙とペンを置き、夢を書き留めなさい。 最後の三つ目(アネシュカへの片想いに)、心の痛みに効く。 その娘を探キヨスク(17歳のウィーン フロイト教授の人生のレッスン)  シネマの世界<第1045話>_a0212807_22220686.pngすか、忘れなさい。」と諭すと、恋した経験のないフランツは、「そんなこと言っても 恋なんて分からない。」とフロイト教授に言い返しました。
フロイト教授は、すかさず「水に飛び込むとき 君は、水のことを理解しているか?」とフランツの背中を押しました。
フロイト精神医学理論の リビドーは、一般的に「欲望、性的エネルギー」と解釈されていますが、フロイト教授とフランツ青年との会話キヨスク(17歳のウィーン フロイト教授の人生のレッスン)  シネマの世界<第1045話>_a0212807_22221921.jpgで、リドビーの概念は、「真の快楽は、苦悩(精神の苦痛)を解放する決断」である、と云うことが、頭でなく、心で分かります。

by blues_rock | 2020-08-24 00:04 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
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