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デッド・ドント・ダイ  シネマの世界<第1035話>

デッド・ドント・ダイ  シネマの世界<第1035話>_a0212807_20064803.jpg鬼才 ジム・ジャームッシュ監督(1953~)の新作「デッド・ドント・ダイ」(死者は、死なない)は、ジム・ジャームッシュ監督の ‘鬼才’が、‘奇才’に脱皮変態した作品です。
タイトル通り、“ゾンビ” をプロットにしたホラー映画ですが、そこは、奇才 ジャームッシュ監督ですから、一筋縄でいくホラー映画では、ありません。
ジャームッシュ監督の作品には、独自の ‘オフビート感’が、あり、新作「デッド・ドント・ダイ」では、ジャームッシュ監督作品の持ち味であるまったり感そのままに、映画の匠(たくみ)のワザが、一段と冴え、その軽妙洒脱な演出は、奇才ぶり全開で ジャームッシュ監督が、オマージュする先人監督たちの作品からワン・シーンをコミカルに(パロディっぽく)変奏したり、ギャグやおフザケを軽妙洒脱なカットで挿入したり、改めて ‘巧いなあ’ と感心しました。
デッド・ドント・ダイ  シネマの世界<第1035話>_a0212807_20070784.jpgいま公開中なので、ストーリーには、あまり触れず 見どころのポイントだけをこれから見る方のために「ここをお見逃しなく」という気持ちを込めて書きたいと思います。
地球の自転軸が、微妙にずれたために 墓地に埋葬されていた死者たちが、ゾンビとなって復活し、人間の生き血の滴る人肉を求めてさまようゾンビ映画ですが、映画
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に登場するゾンビたちは、‘生前の趣味や好みにこだわる’ どこか 愛敬のある 可笑しなゾンビたちばかりです。
ゾンビ映画の定番は、ホラーなのですが、ジャームッシュ監督の「デッド・ドント・ダイ」(死者は、死なない)デッド・ドント・ダイ  シネマの世界<第1035話>_a0212807_20073139.jpgに登場するゾンビたちは、物質文明にどっぷり浸った私たち現代人の姿であり、死んでも成仏できずに蠢(うごめ)く ‘ゆでガエルたち’の魂の 滑稽な徘徊をシリアスかつブラックに揶揄(からか)いながら描いています。
映像は、ジャームッシュ監督の盟友で 名撮影監督フレデリック・エルムス(1946~、名匠デヴィッド・リンチ監督作品の撮影監督も多い)が、撮っていますので、つまらないゾンビデッド・ドント・ダイ  シネマの世界<第1035話>_a0212807_20073670.jpg映画にあるガサツな手抜きは、まったくありません。
とにかく ジャームッシュ監督が、その強烈な個性で演出したオフビート感たっぷりの 魔界転生のブラック・コメディは、人間を襲うゾンビたちと戦う主人公の、アメリカのとある小さな町の警察署長ロバートソン、演じるのが、名優 ビル・マーレイ(1950~) とピーターソ
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ン巡査で、演じるアダム・ドライバー(1983~)の 2人を描いています。
映画冒頭のクレジットから 映画のタイトルにもなっている 長閑(のどか)な カントリー・ソング「デッド・ドント・ダデッド・ドント・ダイ  シネマの世界<第1035話>_a0212807_20081182.jpgイ」が、流れ、劇中でも パトカーのラジオから繰り返し流れ、最後のエンディング・クレジットでも流れます。
このまったりとした音楽の中で二人は、かけあい漫才のような(どこか少しずれたコントのような)会話をしながら小さな町のダイナー(食堂)で起きた猟奇殺人事件の捜査をしていきます。
デッド・ドント・ダイ  シネマの世界<第1035話>_a0212807_20081472.jpg途中から警察署に 3人しかいないので留守番の女性警官ミンディ(クロエ・セヴィニー 1974~)が、加わり、さらに不協和音は、酷くなっていきます。
次々に登場する出演者も錚々たる顔ぶれで 個性的な俳優と女優が、揃い、有名なミュージシャンもゾンビの端役(ゆるキャラ役)で出演しています。
デッド・ドント・ダイ  シネマの世界<第1035話>_a0212807_20083433.jpgジャームッシュ監督は、贅沢かつ豪華な出演者陣を好きなように弄りまわし 使い捨てするような演出をしていますが、彼らも大真面目な様相で演出に応じていて 私から見たら ‘めっちゃ 楽しんでいる’ ように感じられました。
映画に登場する出演者順に演じる役柄と併せ 紹介していくと 映画の狂言回し役(語り部として監督の分身的なデッド・ドント・ダイ  シネマの世界<第1035話>_a0212807_20083846.jpg役回り)として森で暮らす世捨て人のボブを演じるのが、名シンガーのトム・ウェイツ(1949~、よく映画に出演しているが、どの役もすぐに彼と分かる存在感あふれる俳優)、ダイナー常連の老黒人ハンク役に名優ダニー・グローヴァー(1946~)、ボブとハンクを目の敵にしている白人の農夫ミラー役を名優スティーヴ・ブシェミ(1957~)、葬儀デッド・ドント・ダイ  シネマの世界<第1035話>_a0212807_20084959.jpg屋の奇怪な女主人で 長い金髪をなびかせながら 日本刀を振り回しゾンビたちの首を次々に切り落としていく(ゾンビの首から噴き出るのは、黒いガスのような煙です)セルダ役をイギリスの名女優ティルダ・スウィントン(1960~)が、それぞれ怪演しています。
デッド・ドント・ダイ  シネマの世界<第1035話>_a0212807_20085184.jpgコーヒー・ゾンビの役で パンクロックの雄 イギー・ポップ(1947~、上の写真)、女優で製作者そして ジャームッシュ監督夫人のサラ・ドライバー(1955~)ほか、とにかく錚々たる顔ぶれが、ゾンビの様相をして人間を襲い、内臓を美味しそうに貪るなど目を覆いたくなるリアルなシーンでも、どこか長閑(のどか)なので、つい見入ってしまいました。
デッド・ドント・ダイ  シネマの世界<第1035話>_a0212807_20085400.jpg冒頭のダイナー猟奇殺人事件をゾンビの仕業と予言し、次々に起きる小さな事件の結末を予想し的中させるピーターソン巡査に パトカー内でロバートソン署長が、「何でお前には、分かるのだ」と助手席のピーターソン巡査に詰め寄ると彼は、「ジム(ジャームッシュ監督のこと)から、脚本見せてもらったから」とシレーっと答えると ロバートソン署デッド・ドント・ダイ  シネマの世界<第1035話>_a0212807_20091047.jpg長が、ブチ切れるシーンに私は、吹き出しました。
ゾンビの大群相手に 日本刀を振り回し大立ち回りを演じた セルダを宇宙船(UFO)が、迎えに来るなど ‥ スクリーン前の観客を 放りっぱなしにしたまま ジ・エンド(ラストは、見てのお楽しみ)する奇才ジャームッシュ監督ワールド炸裂の秀逸な怪作ゾンビ映画でした。

by blues_rock | 2020-07-05 00:05 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)