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心の時空

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岬の兄妹(前編)  シネマの世界<第929話>

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インディペンデント映画「岬の兄妹」は、現代日本社会の底辺に住まう人たちの現実(私たち日本人が、見て見ぬふりをしている真実)を片山慎三監督(1981~、現在38歳 製作・監督・脚本・編集の4役、長編映画監督デビュー作品)が、主人公の兄妹ともに障碍(兄は、右足が、不自由、妹は、発達障碍で放浪癖が)あるも、押し潰a0212807_23030159.jpgされそうな厳しい現実の中で生きていく姿を冷徹な目でリアルに描いています。
兄のリストラによる貧困、困窮した生活ゆえに行き着いた妹に売春させるという重くシリアスなプロットに時に、笑いを誘う‘コメデアスなシーン’のバイアスをかけ、初監督と思えない緩急自在の見事な演出で、映画の冒頭、居なくなった妹を捜す兄のシーンから、やはりエンディングで居なくなった妹を捜す兄のシーンまでa0212807_23030627.jpg徹底したリアリズムとテンションを貫き、すばらしい映画(傑作です)にしました。
片山監督は、社会派映画と呼ばれるのを避け、押しつけがましさのない見る人たちに兄妹や彼らに関わる人たちもまた「同じ人間」であると思ってもらいたいと、若干寓話性を持たせて映画を撮った(そのため障碍者施設や福祉行政のことについては、敢えて触れなかった)と公開後のインタビューに答えています。
a0212807_23032008.jpg「岬の兄妹」には、2010年の傑作「海炭市叙景」の貧しい兄妹愛と昨年(2018年)話題となった傑作「万引き家族」の貧困と生きて行くための万引き(「岬の兄妹」は、売春)が、シンクロしたような印象を私は、受けましたが、‘人間の本質’を これでもかという、おぞましいシーン、えげつないシーン、胸締め付けられる切ないシーン、やりきれないシーン、また人を思いやる情愛溢れるシーンなどの描a0212807_23031804.jpg写は、「海炭市叙景」・「万引き家族」の両傑作に勝るとも劣らない新しい傑作映画の誕生だと思います。
私が、信じられないのは、インディペンデント系とは言え、これほどの上質な映画が、西日本(京都以西九州全域)で上映されているのは、福岡市郊外の粕屋郡志免町にあるイオンシネマ福岡一館(単館)だけということです。
a0212807_23032379.jpg映画製作に当たって片山監督ほかスタッフ陣総がかり体制で(低予算ゆえスタッフが、一人何役も兼ね、移ろう四季折々のシーンを2年がかり)で撮影しています。
とくに、主人公の兄妹(きょうだい)、右足を引きずる兄良夫役の松浦祐也(1981~)、発達障害のある妹真理子役の和田光沙(1983~、2018年「菊とギロチン」に女力士役で出演)が、実にすばらしく、二人の迫真演技に私は、心底感動a0212807_23032720.jpgしました。
薄幸ながら微塵の屈託もない天真爛漫な妹真理子を演じた和田光沙の名演‘体当たり’の演技(真理子を不幸に見せないよう演じたとコメント)は、稀代の名女優 故樹々希林が、演じたどの役柄の存在感にも通じる演技の本質(リアリティ)を感じました。
片山監督は、兄良夫役を早くから松浦祐也とイメージし脚本を書いていたそうながら真理子役が、決まらずオーa0212807_23032501.jpgディションで和田光沙に決定したのだとか、和田美沙は、撮影移動車輌の運転やチラシの配布の裏方仕事も積極的(強い映画愛の顕われ)だったそうで、映画冒頭からの全身裸での体当たり演技にそれは、よく表れています。
映画は、とある岬の小さな港町(三浦半島の三崎港で撮影)で暮らす共に障碍をもつ兄妹が、主人公です。
後編に続く)

by blues_rock | 2019-03-15 00:05 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)