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心の時空

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大地のうた  シネマの世界<第901話>

a0212807_06491035.jpg福岡市総合図書館映像ホール「シネラ」12月は、インド映画特集です。
12月1日初日は、インド映画の最高傑作である映像作家で映画監督のサタジット・レイ(1921~1992)が、1955年に盟友の撮影監督スブラタ・ミットラ(1930~2001)と共同で撮った初長編映画で映像叙事詩ともいうべき「大地のうた」(原題「Pather Panchali」 ベンガル語で「小さな道の歌」)でした。
レイ監督は、イタリア・ネオレアリズモの名匠ヴィットリオ・デ・シーカ監督の1948年作品「自転車泥棒」を見て感動し「大地のうた」の脚本を書き、映画を撮る機会を待ちました。
a0212807_06492434.jpgフランスの写真家 アンリ・カルティエ=ブレッソン(1908~2004)の自然光を生かした作品(映像詩写真)に心酔していたミットラ撮影監督は、レイ監督と出遭い初めて撮った長編映画「大地のうた」(こちらの Pather Panchali をクリックすると美しい映像詩 6分55秒 をご覧いただけます)で才能が、一気に開花、その映像センスは、光ります。
音楽監督をインドの音楽家 ラビ・シャンカール(1920~2012、シタール奏者 アヌーシュカ・シャンカルと ジャズ・a0212807_06492896.jpgミュージシャン ノラ・ジョーンズは、実の娘、ビートルズやローリンングストーンズにインド楽器シタールを指導)が、務めていることも重要なポイントです。
このインド映画「大地のうた」は、1956年ヴェネツィア国際映画祭でグランプリ(金獅子賞)を受賞したほか世界各地の映画祭で数多くの賞を受賞しています。
a0212807_06493184.png映画は、1920年代のインド、ベンガル地方の貧しい小さな村が、舞台です。
主人公の家族4人は、その村の朽ちたあばら家で暮らしていました。
父親のハリホル(カナ・バナールジ 1905~1983)、母親のサルバジャヤ(コルナ・バナールジ 1919~2001)、娘のドゥルガ(ウマ・D・グプタ)、息子のオプー(スビル・バナールジ)は、貧しい生活をしていますが、先祖は、インドカースト制の最高位バラモンでした。
a0212807_06493862.jpgハリホルは、バラモン教の僧侶となる高等教育をうけながら詩の創作や大衆劇の作家になることを夢見るばかりで定職に就かず、先祖から受け継いできた果樹園も借金のために人手に渡ってしまいました。
妻で母親のサルバジャヤは、家族を養う能力のない夫に我慢しながら貧しさに耐え、二人の子供に1日2度の食事を与え1年に2枚の服を着せることをささやかな望みとして暮らしていました。
a0212807_06500987.jpgしかし、ハリホルの親戚という老婆が、同居し貧しい生活は、ますます苦しくなるばかりでした。
そんな母親の気持ちも知らず娘のドゥルガは、食べることだけが、楽しみの老婆のために、人手に渡った果樹園から果物を盗み老婆に与えるので娘のドゥルガは、泥棒扱いされ、サルガジャヤの我慢も限界でした。
a0212807_06501214.jpg映画は、父ハリホルへの母サルバジャヤの愚痴と娘ドゥルガの病死をからめながら息子オプーの無垢な目を通して、インド、ベンガルの自然(森羅万象)と貧しくとも健気に暮らしていく人間普遍の営み(生死観)を美しく描いています。
借金と極貧から脱出しようと出稼ぎに行き、何か月も帰らない夫ハリホルを待ちながら飢えを凌ぐため家財一切を売り尽くす妻サルバジャヤ、モンスーンの冷たい雨に濡れ肺炎となり高熱で死ぬ娘のドゥルガ、自分のまわり
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で起きるそんな出来事をじっと見つめ幼いながらそして受け入れていくオプー、長い間不在だった父親のハリホルは、愛娘ドゥルガのために新しいサリーを買って帰って来ましたが、母親サルバジャヤの慟哭で、すべa0212807_06502727.jpgてを察しました。
ハリホルは、先祖代々暮らしてきた土地と夢を捨て都会のベナレスで出直そうと妻サルバジャヤと息子オプーと共に夜明けの道を牛に牽かせた荷車に乗り向かいました。
サタジット・レイ監督の演出とスブラタ・ミットラ撮影監督の静謐なカメラが、実に秀逸です。
インドで歌も踊りもない映画が、上映されるなどそれまで考えられず、まして大ヒットするなど予想外の出来事a0212807_06503995.jpgだったようで「大地のうた」は、インド映画を初めて世界に知らしめた記念すべき名作映画です。

by blues_rock | 2018-12-02 06:44 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)