アメリカの名監督アントワーン・フークア(1966~)のことは、最新作「
イコライザー 2」の記事で紹介しましたが、フークア監督初期の2001年クライムアクション映画「トレーニング デイ」のキレの良い演出と迫力、アフリカ内戦(ナイジェリアの民族・宗教戦争)の惨状をリアルな映像で告発した2003年戦争映画「ティアーズ・オブ・サン」、2006年の政治サスペンス映画「ザ・シューター」で描いたフークア監督の今に至るハードなアクション描写、2009年の警察官3人の群像劇を織り込んだポリスサスペンス映画「クロッシング」と見応えある秀作も多く前後編に分け4作品を紹介したいと思います。
2001年「トレーニング デイ」は、これ以降フークア監督のアクション映画と、切っても切り離せなくなる名優デンゼル・ワシントン(1954~)が、極悪非道な悪徳麻薬捜査官を演じアカデミー賞主演男優賞を受賞する怪演を見せ、1997年の傑作「ガタカ」で主演し、脚光を浴びた若手名優イーサン・ホーク(1970~)演じる
正義感の強い新人捜査官との対立(演技コラボレーション)をフークア監督は、辛口のスパイスを効かせた演出で見せてくれました。
ロス市警麻薬取締課のベテラン捜査官アロンゾ(デンゼル・ワシントン)は、上司の命令で新人捜査官ジェイク(イーサン・ホーク)と組みますが、「狼を倒せるのは、狼だけだ。悪を倒すには、悪になる必要が、ある。」と容赦のないワルぶりを
見せ、正義感の強い新人刑事のジェイクは、次第にアロンゾへの不信感を募らせていきます。
フークア監督の迫力ある演出を撮影監督 マウロ・フィオーレ(1964~)のカメラが、見事に捉え、エキサイティングなストーリーにしています。
2003年「ティアーズ・オブ・サン」は、「ダイ・ハード」シリーズで有名な名優 ブルース・ウィリス(1955~)が、アメリカ海軍特殊部隊SEALコマンド7人の隊長ウォーターズ大尉を熱血に演じています。
共演は、イタリア語、フランス語、英語、ペルシャ語を話せるという才色兼備のイタリアの美人女優モニカ・ベルッチ(1964~、「
マレーナ」は必見)で、内戦の殺戮が、激しいナイジェリアの奥地で医療活動するアメリカ国籍のイタリア人女性医師リーナを演じています。
ウォーターズ大尉の小隊にとってアメリカ人女性医師リーナを救出せよという命令は、ごくありふれた簡単な任務のはずでした。
しかし、リーナ医師は、内戦で傷付いた瀕死の患者たちや外国人の同僚、現地スタッフたちを置いて脱出することを頑なに拒みました。
任務の完遂を最優先するウォーターズ大尉は、リーナ医師に患者たちも救援ヘリで脱出させると嘘を付き拒む彼女を強引にヘリに乗せ帰路につきました。
そして、ウォーターズ大尉が、上空から見たものは、反乱軍から無惨な姿で容赦なく殺戮された累々たる死体でした。
それを見たウォーターズ大尉は、直ちに引き返し置き去りにした患者たちの歩けない者や幼い子供たちを優先してヘリに乗せ脱出させました。
ウォーターズ大尉の小隊は、リーナ医師と歩ける患者や難民たちを護衛し山岳地帯のジャングルをカメルーンとの国境を目指し歩き始めました。
撮影監督は、「トレーニング デイ」のマウロ・フィオーレ(1964~)で、ウォーターズ大尉の小隊とリーナ医師たちが、雨の山岳地帯を脱出するシークエンスと戦
闘シーンの難しい撮影を見事にやり遂げ、凄まじい内戦のその様子をリアリティある映像で撮っています。
名映画音楽作曲家ハンス・ジマー(1957~)の音楽も見事です。