ラマン・ダブル と タリー タイトルの意味 シネマの世界<第884話>
名匠にして鬼才、フランスの映画監督 フランソワ・オゾン(1967~)の新作「2重螺旋の恋人」(原題 L'amant double 二人の愛人)と、同じ時期に公開されていたカナダの名監督ジェイソン・ライトマン(1977~)の新作「タ
リーと私の秘密の時間」(原題 Tully)は、精神疾患(サイコシス)を抱えた女性が、主人公のスリラー映画です。
「2重螺旋の恋人(ラマン・ダブル)」のオゾン監督は、2013年作品「17歳」で鮮烈な印象を残した新鋭の美人女優マリーヌ・ヴァクト(1991~)を再び起用し ‘統合失調症’(幻覚と妄想)の女性クロエ(マリーヌ・ヴァクトが、秀逸)の不可解な言動をミステリアスに描
きました。
ライトマン監督もまた2011年作品「ヤング≒アダルト」で主演した名女優シャーリーズ・セロン(1975~)と再び組み「タリーと私の秘密の時間(タリー)」(シャーリーズ・セロンは、製作も参加)で‘ストレス性精神疾患’(せん妄)の中年女性(主婦)マーロを寓話のように撮っています。
まず、「ラマン・ダブル」を「2重螺旋の恋人」としたのは、若い女性クロエ(マリーヌ・ヴァクト)の精神性疾患(発達障害、多動性障害)の迷宮(虚実)と官能(セックス)の心理ミステリーに原題の「ラマン・ダブル(二人の愛人)」では、スリラーらしくないからでしょう。
撮影監督マニュ・ダコッセ(2015年「エヴォリューション」の撮影監督)のシャープな映像も秀逸です。
クロエと関わる二人の精神分析医で似て非なる両極端な性格の一卵性双子児 ポールとルイの二役をベルギーの名優ジェレミー・レニエ(1981~、2008年「
夏時間の庭」、2011年「
少年と自転車」)が、見事に演じ分けて
います。
私の目が、釘付けになったのは、マリーヌ・ヴァクトの美しい肢体(ヌード)もですが、クロエの母親を演じた御年
74歳の大女優ジャクリーヌ・ビセット(1944~)の変わらぬ美しさにも目を奪われました。
原題の「タリー」を「タリーと私の秘密の時間」としたのは、愚の骨頂で「タリー」のほうが、でっぷり太り三人の幼い子供(うち男の子が発達障害児)の育児に疲れ果てた母親マーロ(シャーリーズ・セロン)と、夜のベビーシッター タリー(マッケンジー・デイヴィス)との ‘関係’ が、よりミス
テリアスに見えただろうにと思いました。
この映画は、生活に疲れストレスででっぷり太った‘シャーリーズ・セロン’が、見どころながら、でっぷり太った中年女性を演じてもシャーリーズ・セロン(1975~、43歳)は、やはり美しく、演技もまた見事でした。
でっぷり太った母親マーロの役作りのために シャーリーズ・セロンは、3か月半で 体重を18㌔増やしたそうです。
シャーリーズ・セロンは、28歳のとき主演した2003年「
モンスター」で体重を13㌔増やし非の打ちどころのないその美貌を壊して、連続殺人犯となり、アカデミー賞主演女優賞を受賞しています。
映画自体は、さしてミステリアスでもスリラーでもありませんが、円熟した美貌のシャーリーズ・セロンと今や盛りの美女 マッケンジー・デイヴィス この二人の艶姿を見るだけでも一見の価値のある映画としてお薦めいたします。