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心の時空

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a day in my life

「追 想」と題する二作品(後編)  シネマの世界<第873話>

a0212807_19483813.jpgイギリス映画の新作「追想」(原題「On Chesil Beach」 チェジル・ビーチにて)に話を戻します。
資産家階級の令嬢でバイオリニストのフローレンス(シアーシャ・ローナン)は、自分の四重管弦楽団の編成を夢見ていますが、労働者階級の歴史学者を目指すエドワード(ビリー・ハウル 1989~)と出遭い、お互い一目惚れし愛し合うようになりました。
a0212807_19485280.jpg旧い階級制度と道徳規範が、厳然と残るイギリス社会にあって二人は、愛を育み結婚するも性経験のない処女と童貞でした。
1962年夏、二人は、結婚しイギリス南部ドーセット州のチェジル・ビーチへ新婚旅行に行き初夜を迎えました。
愛し合う二人ですが、初夜への興奮や期待そして不安の綯(な)い交ぜになった感情と相俟ってお互い過去の様々なことを憶いa0212807_19485616.jpg出したことで会話は、止切れ、気まずくなりました。
初夜の興奮を抑えつつエドワードが、フローレンスの服を脱がせ、やさしく彼女の体に触るとフローレンスは、How to Sexの本で学んだ知識で彼女の手が、エドワードの性器に触れたとたん彼女の脚に射精してしまいました。
a0212807_19491203.jpgその瞬間、フローレンスは、少女時代に厳格で口うるさい父親から受けた性的虐待の記憶が、よみがえり(ショット映像で暗示)パニックとなりホテルを飛び出しました。
失態に茫然自失のエドワードは、気持ちを落ち着かせると後を追い、チェジル・ビーチの海岸にいたフローレンスと仲直りしようとしますが、彼女を愛する気持ちより、これまで我慢していた些細なことを言い始め、またa0212807_19491557.jpg口論となりました。
フローレンスは、エドワードへの愛を伝え、パニックになった自分を詫びますが、当惑したエドワードの怒りや羞恥心は、治まらず一緒にいたいと願うフローレンスの気持ちを拒否しました。
映画は、二人の新婚生活が、新婚旅行先のチェジル・ビーチに滞在した6時間で破局する様子を丁寧に描き、二人それぞれの過去や家族との関係を交錯a0212807_19493892.jpgさせながら展開していきます。
名撮影監督 ショーン・ボビット(1958~、2008年「ハンガー」、2011年「シェイム」、2012年「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ」、2013年「それでも夜は明ける」、2015年「ロック・ザ・カスバ!」など)のカメラワークが、すばらしく映像にヒンヤリした透明感もあって秀逸です。
a0212807_19493178.jpg共演のキャストも、エミリー・ワトソン(1967~、1996年「奇跡の海」、1997年「ボクサー」)、アンヌ=マリー・ダフ(1970~、2009年「ノーウェアボーイ ひとりぼっちのあいつ」、2014年「リピーテッド」、サミュエル・ウェスト(1966~、2017年「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」)と名女優、名優が、しっかり脇を固め、主演のシアーシャ・ローナンとビリー・ハウルの好演もa0212807_19494743.jpgあって優れた心理劇映画になっています。
私見ながら ‥ 新婚初夜の些細な諍(いさか)いで別れて以来45年、一度も会わなかったフローレンスとエドワードが、2007年彼女の引退コンサート会場で再会し涙するラストシーンは、少しメロウ過ぎます。
エンディングは、ステージでバイオリンを演奏しているフローレンスが、客席にいるエドワードを見つけ、二人静a0212807_19495227.jpgかに見つめ合うだけにして欲しかったと私は、思いました。
私の意見をついでに、もう一つ、原題(オリジナル・タイトル)やプロットを無視して日本語字幕上映タイトルを「追想」や「旅愁」など映画ファンをバカにしたような安直なタイトルは、字幕翻訳家の責任なのか、配給会社の低レベルの営業センスなのか、もういい加減、止めてもらいたいと思います。

by blues_rock | 2018-09-02 00:02 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)