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心の時空

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彼女がその名前を知らない鳥たち  シネマの世界<第850話>

壊れた人間を描く名人の鬼才白石和彌監督(1974~)が、撮った映画をいままで5作品見ました。
白石監督のどの作品にも、もし私の身近にいたら決して関わらない(関わりたくない)生理的に嫌な、ろくでなし(チンピラ)やジコチュー女(娘)など壊れた連中(男たちは言うに及ばず女たちも)たちが、たくさん登場します。
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そんなに嫌なら見なきゃいいじゃないの、と思われるかもしれませんが、白石監督は、見ている者に感情移入させない完璧な演出により、登場人物を突き放して描く(撮る)名人なので見ている方は、胸くそ悪くても案外冷静に他人(ひと)事のように見ておれます。
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白石監督作品は、薬物のようなもの、一度見るとその魅力の虜になり、やがて白石映画ジャンキーになります。
白石監督は、反骨の映画監督若松孝二(1936~2012、2008年「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」、2010年「キャタピラー」)に師事し映画監督になっただけに白石監督が、描く世界は、救い難いワル(犯罪者)、身持ちのa0212807_00031620.jpg悪い奴(女)、うだつのあがないチンピラなど社会の底辺で蠢くアウトローが、主人公のピカレスクロマンです。
私が、見た白石監督作品は、2009年「ロストパラダイス・イン・トーキョー」(監督デビュー作品)、2013年「凶悪」、2016年「日本で一番悪い奴ら」、同2016年「牝猫たち」、2017年「彼女がその名前を知らない鳥たち」、そして2018年の新作「孤狼の血」です。
今夜は、白石監督の、さらなる新境地を現した才気溢れる2017年の作品「彼女がその名前を知らない鳥たち」を紹a0212807_00032037.jpg介いたします。
映画に登場する人物たちのキャラが、とにかく‘ヒドイ!’、この映画は、一人の女と三人の男四人の過去と現在が、交錯する群像劇ながら四人を始め登場するのは、全員身勝手で皆な徹底してジコチューな女と男、相手を傷つけても自分が、良ければ平気、自分の欲望のためなら平然とウソをつき、思うとおりにならないと逆ギレして喚き、暴力を振るうこれもまたピカレスクロマン映画です。
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そんなにヒドイのなら見なきゃいいものを一度見始めるともう途中で止められない魔訶不思議な秀作映画です。
とくに主人公四人の軸である女、十和子(蒼井優 1985~、2017年の国内映画祭で主演女優賞総なめ)は、ジコチューで自堕落な女、性にだらしなく、そのフシダラな悪女ぶりは、絶対関わりたくない女の典型です。
a0212807_00034067.jpg十和子と同棲している15歳年長で身のまわりが、不潔で、うだつの上がらない粗野な男、陣治(阿部サダヲ 1970~)の偏執狂的な十和子への執着は、見る方を辟易させますが、十和子から「あんたみたいな不潔な男にそんな触られ方をしたら、虫酸が、走る!」と罵倒され、さらに「不潔・下品・下劣・貧相‥」などと、あらん限りの罵詈雑言を浴びせる十和子のエキセントリックな言動ぶりも、常軌を逸しており、前半は、愛のカケラもない二人の歪んだ共依存関係が、描かれます。
a0212807_00034323.jpg十和子は、陣治の収入で生活しながらも8年前に酷い仕打ち(強制売春)を受け、あげく殴打されて別れた黒崎(竹野内豊 1971~)を忘れられずにいました。
さらに、腕時計のクレームで知り合ったデパート店員の水島(松坂桃李 1988~)と情事に溺れ、同時に黒崎との過去の甘美な日々の記憶が、忘れられませんでした。
このシークエンスで十和子が、水島と情事に耽るラブホテルの天井から降り注ぐ砂の雨や汚れたアパートの部a0212807_00034783.jpg屋から黒崎と一緒にいるリゾート地の美しい海岸へ反転する映像(フラッシュバック)など白日夢めいた幻想シーンは、ある日、街角で十和子が、黒崎らしき人物を見かけたと錯覚し、家に訪ねてきた刑事から黒崎が、5年前から行方不明であること、十和子と水島との情事を知りながら「十和子が幸せならそれでいい」と陣治は、黙認するも 十和子を執拗に尾行しじっと監視する彼の行動などを重ね合わせ後半、白石監督のピカレスクロマンが、
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次第に不穏(サスペンスタッチ)になり、そして見る者が、あっと驚くエンディングに至ります。
普段なら入らないところにふと立ち寄り、その妖しい魅力に憑かれワクワクするような、悍(おぞ)ましいような「彼女がその名前を知らない鳥たち」は、そんな不思議な映画でした。

by blues_rock | 2018-06-24 00:04 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)