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心の時空

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ビューティフル・デイ  シネマの世界<第848話>

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現在、博多駅Tジョイで、単館上映中の「ビューティフル・デイ」(原題「You were never really here お前は、決してここにいちゃいけない」)は、才能あるのに寡黙なイギリス(グラスゴー出身)の鬼才女性監督 リン・ラムジー
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(1969~)が、脚本(今年のカンヌ国際映画祭で脚本賞受賞)を書き、アメリカの名優ホアキン・フェニックス(1974~、同じく今年のカンヌ国際映画祭で脚本賞受賞)を主演に迎え、旧くからの友人で撮影監督 トム・タウa0212807_06544270.jpgネンドならびにイギリス気鋭の映画音楽家 ジョニー・グリーンウッド(1971~、ロックバンド‘レディオヘッド’ のギタリスト) とタッグを組んで撮った秀作映画です。
撮りたい映画しか撮らないラムジー監督の「ビューティフル・デイ」へのこだわりは、このスリラー(クライム・サスペンス)映画にも、顕著に顕われ、一筋縄ではいかないラムジー監督の‘映像言語’が、多くの見せa0212807_06544762.jpg場を作っています。
映画の原題は、「You were never really here お前は、決してここにいちゃいけない」なのに、何で日本版のタイトルが、「ビューティフル・デイ」になるのか、映画の終盤、主人公のジョーは、行方不明であった少女ニーナ(エカテリーナ・サムソノフ 2003~)を拉致されていた高級売春宿から連れ出し、失踪少女ニーナが、ジョーに救い出された後、彼に「It's a a0212807_06545033.jpgbeautiful day!」と言ったことから日本版のタイトルは、「ビューティフル・デイ」になりました。
しかし、映画のプロットとストーリーは、「ビューティフル・デイ」の響きとは、真逆の、ホアキン・フェニックス演じる退役軍人で元FBI捜査官のジョーが、幼いとき父親から受けた虐待や戦場の殺戮による心的外傷後ストレス障害(PTSD)を抱え、治療のための鎮痛剤を常用、さらに慢a0212807_06551450.jpg性的な不眠と自殺願望による自殺衝動など常に意識朦朧としながらも、高齢で病気の母親を養うため「失踪者捜索」を生業として暮らしていました。
ラムジー監督の演出は、主人公ジョーが、抱える子供のころからの「絶望感(死にたい願望)」を抱え、成人しても人生に虚無と倦怠の中で暮らす中年のジョー(ホアキン・フェニックス)の姿a0212807_06553054.jpgを、そのヒゲ面と引き締まった巨体で具現化、女性とは思えない(ラムジー監督自身談)切り口で、粗暴にしてニヒルな殺し屋ジョーの絶望と心の闇をシャープに描いています。
音楽(サウンド・トラック)を担当したジョニー・グリーンウッドの重低音で鳴り響く、同時に割れたガラス片が、ぐさぐさと突き刺さって来るようなサウンドをバックに、数秒間フラッシュバックされるジョーの子供a0212807_06552123.jpg時代の虐待や戦場での殺戮の忌まわしい記憶、その傷みから逃れようとする自殺願望 ‥ ホアキン・フェニックスの怪演とラムジー監督の見る者に挑むような(不親切なくらい余計な説明をしない)クールな演出は、秀逸です。
ラムジー監督の「ビューティフル・デイ」演出意識の中に、マーティン・スコセッシ監督作品「タクシードライバー」
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(1976)へのオマージュが、あったのかどうか、私には、分かりませんが、ともに映画の終盤、「タクシードライバー」でロバート・デ・ニーロ演じるモヒカン頭の青年トラヴィスと、「ビューティフル・デイ」のホアキン・フェニックa0212807_06552783.jpgス演じる顔面ヒゲ面の中年ジョーとが、重なりました。
カンヌ国際映画祭で、パルムドールを受賞した「万引き家族」の対抗馬であった「ビューティフル・デイ」は、映画ファン必見の映画です。
余談ながら、稀代の名優ロバート・デ・ニーロ(1943~)は、嫌悪するアメリカのゲスなフェィク大統領を聴衆の面前で、こっぴどく貶(けな)すスピーチを繰り返しています。
a0212807_06553812.jpgこれにキレてツィッターする(ツィッターでしか反発できない)お下品大統領の神経を逆なでし、さらにヒワイな言葉(ブラック・ジョーク)で答える ‘お笑い芸人’ ロバート・デ・ニーロのおちょくりが、可笑しくて、つい熱烈に応援したくなります。
(上写真 : 撮影した映像を確認するリン・ラムジー監督とカンヌ国際映画祭 主演男優賞受賞のホアキン・フェニックス)

by blues_rock | 2018-06-10 00:10 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)