ミッドナイト・スペシャル シネマの世界<第720話>
インディペンデンス出身のアメリカの俊英監督ジェフ・ニコルズ(1978~)が、2016年に発表した新作「ミッドナイト・スペシャル」も2011年作品「テイク・シェルター」、2012年作品「MUD マッド」と同様、‘父と子にまつわる’物語です。ニコルズ監督作品の特長は、3作ともニコルズ監督自身が、脚本を書き、製作のサラ・グリーンや製作総指揮のグレン・バスナーなどニコルズ監督の盟友製作陣なので映像作家ジェフ・ニコルズが、監督した‘作家性の強い’映画になっていることです。
この「ミッドナイト・スペシャル」を映画のジャンルで括るのは、難しくSFスリラーなのか、オカルトやホラーなのか、ニコルズ監督が、今まで見てきた映画で、たとえば1977
年のSF映画「未知との遭遇」や1997年SF映画「コンタクト」 さらに1999年のホラー映画「シックス・センス」からの影響とオマージュを感じます。SF映画と云っても「ゼロ・グラビティ」(2013)、「インターステラ―」(2014)や「オデッセイ」(2015)のようなリアルなSF映像によるSF映画ではなく、サイキックな透視能力(千里眼)やテレキネシス(念力)をもつ8歳の少年にカルト教団と国家秘密機関の魔の手が、伸びるSFスリラー映画と私は、思いました。

親をキルステン・ダンスト(1982~ 「ゼロ・ダーク・サーティ」)、秘密機関のテレキネシス(念力)研究員にアダム・ドライバー(1983~ 「沈黙サイレンス」)そして何より得体のしれない(人間の子供なのか異星人なのか)8歳の超能力少年を演じた新人子役のジェイデン・リーバハー(2003~)が、秀逸でした。映画は、冒頭、真っ暗なスクリーンに8歳の少年の失踪事件を告げるテレビの緊急速報ニュースの音声だけ
が、流れスタートします。カルト教団の持っていた数字の羅列は、アメリカ国家の最重要機密で、少年が、どうやってそれを入手にしたのか、国家秘密機関は、少年の行方を懸命に追っていました。
カルト教団は、少年の超常的な力だけが、世界の終わりを予見でき「最後の審判」を乗り越えるためにどうしても少年を必要していました。
少年には、‘行かなければならない場所’が、あり、少年の両親は、8歳の我が子を信じ、父親と父親の親友そして少年は、彼の言う‘行かなければならない場所’へ向かいました。‘行かなければならない約束の地’に向かう途中少年は、今まで見せなかった超能力パワー ‥ 宇宙(さら)から監視している人工衛星を破壊し、相手の考えていることを察知するなど、その恐るべきパワーを発揮しました。
ニコルズ監督は、「テイク・シェルター」のプロットでもあった神秘的かつ狂信的な主人公の行動は、科学的な根拠のある信念なのか、精神疾患と紙一重の妄想なのか、映画を見ている者が、目の前で起きている摩訶不思議な現象を見て主人公の信念にどう向い合うのか、見ている私たちに‘フィクションの核心’を問いかけています。ほんの少しだけネタバレしますが、8歳の少年は、「光」として象徴的に描かれています。
「ミッドナイト・スペシャル」は、プロットが、荒唐無稽なSFスリラー(&オカルト・ホラー)であっても、才能ある監督と優秀な製作陣が、タッグを組んで制作すれば、秀作映画になるお手本と私は、思います。(右写真 : ジェフ・ニコルズ監督)

