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心の時空

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シェイプ・オブ・ウォーター  シネマの世界<第821話>

メキシコの鬼才 ギレルモ・デル・トロ監督(1964~)の最新作(原案・製作・脚本・監督)「シェィプ・オブ・ウォーター」(原題「The Shape of Water」 水のかたち)は、今年のアカデミー賞で作品賞を受賞、デル・トロ監督が、監督賞、フランスの名作曲家 アレクサンドル・デスプラ(1961~)が、音楽賞、アメリカのプロダクションデザイナー
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ポール・D・オースターベリーは、美術賞とアカデミー賞4部門で受賞しました。
これに先立つ昨年2017年9月のヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞(グランプリ)を受賞、今年のアカデミー賞各部門でノミネートされ、アメリカ各都市にある映画批評家協会賞でも軒並み受賞しており、デル・トロ監督のa0212807_21430197.jpgシュールで、ファンタスティックなロマンス映画「シェィプ・オブ・ウォーター」は、下馬評通りアカデミー賞大本命の作品が、受賞といえるでしょう。
デンマークの撮影監督 ダン・ローストセン(1954~)の映像が、すばらしく、主人公ふたりの神秘的なファンタジーロマンス(R18+指定の大人のメルヘン、芸術に1箇所〇ボカシを入れた映倫の下品が恥ずかしい)を赤や青の照明(スポットライト)で醸し出しながら一方では、アメリカa0212807_21431057.jpg社会を覆う卑劣でエゴむき出しの恥も外聞もないハレンチな人間のリアリズム(傲慢と貪欲)をダークな色調でデル・トロ監督の意図した演出に見事に応えています。
映画のプロットは、アマゾンの奥地で捕獲された水中で生きる不思議な生き物(半魚人のようなクリーチャー)と発音障害(聴覚はあるがしゃべれない)の女性とのロマンスです。
1962年、ソ連との冷戦下のアメリカ、航空宇宙開発センター内にある軍管轄の秘密研究所で清掃員として働くa0212807_21431516.jpg女性 イライザ(サリー・ホーキンス 1976~)は、研究所に密かに運び込まれた ‘不思議な生き物(クリーチャー)’ を清掃中に目撃しました。
イライザは、アマゾン河の奥地で、原住民から神として崇められていたというクリーチャー(ダグ・ジョーンズ 1960~、デル・トロ監督作品の常連俳優)に心を奪われました。
幼児期に首を怪我したことで声の出ないイライザは、手話で話していましたが、ハンディキャップのある掃除婦a0212807_21433307.jpgの自分をありのままに見てくれるクリーチャーとの言葉の要らないコミュニケーションにイライザは、彼(クリーチャー)と次第に心を通わせていきました。
ソ連との宇宙開発競争に後れをとるアメリカ政府と軍は、強靭で知能のある不思議な生き物のクリーチャーを絶対服従させ有人宇宙飛行の実験動物にしようとしていました。
威圧的で傲慢な軍人 ストリックランド(マイケル・シャノン 1974~、今までにない非人間的でサディステックな役a0212807_21433706.jpgが印象的)は、言うことを聞かないクリーチャーに苛立ち暴力を振るい、虐待したあげく生体解剖して構造を調べると宣言しました。
傲慢なストリックランドと対立するクリーチャー研究グループのリーダー ホフステトラー博士(マイケル・スタールバ 1968~、じつはソ連のスパイ)は、ソ連本国からクリーチャー研究についての情報収集と併せアメリカの研究を妨害する工作、それが済んだらクリーチャーを抹殺(殺害)するよう指令を受けていました。
a0212807_21434276.jpgイライザは、ルームシェアしている初老の画家 ジャイルズ(リチャード・ジェンキンス 1947~、独身女性のイライザと同居するジャイルズをゲイにする脚色も面白い)と同僚の黒人女性ゼルダ(オクタビア・スペンサー 1972~)を巻き込んで「彼を救わなければ、私たちは、人間じゃない!」とクリーチャーを研究所から運び出しました。
肉を切り血しぶきの飛ぶ暴力と相俟って当然のことのように人種差別、男女差別、少数者差別、異端差別などa0212807_21441802.jpgの‘差別’のオンパレード、1960年代のアメリカ社会を映し出すようなドス黒い、リアルなシークエンスとその対極にあるファンタジックで美しい異色のラブシーン映像の合体は、奇怪なファタジー映画監督の印象が、強いデル・トロ監督の新境地なのかもしれません。
今またアメリカは、自分たちが、選んだアホウなフェィク大統領によって国家の分断と人種差別による国民対立という忌まわしい先祖返りをしています。
a0212807_21442335.jpgわずか150年前、アメリカ国家を二分し70万人の国民が、戦死した内戦、南北戦争(第二次世界大戦のアメリカ将兵戦死者数は40万人)を経験したはずなのに、また同じ過ちを繰り返そうとする一部の愚かなアメリカ国民へのギレルモ・デル・トロ監督のアンチ・メッセージ映画かもしれません。

by blues_rock | 2018-03-17 21:33 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)