ローズの秘密の頁(㌻) 前 編 シネマの世界<第817話>
アイルランドの名匠 ジム・シェリダン監督(1949~)の最新作「ローズの秘密の頁(㌻)」(原題「The Secret Scripture」秘密の聖書)は、何と云っても主人公の女性ローズを演じるルーニー・マーラ(1985~、若いローズ)
とバネッサ・レッドグレーブ(1937~、老いたローズ)二人の名演技が、最大の見どころのすばらしい映画です。
とくに、ルーニー・マーラの‘目の演技’は、秀逸です。
シェリダン監督が、撮った映画にハズレは、なく新たにまた名作が、一つ加わりました。
シェリダン監督は、1989年「マイ・レフトフット」(ダニエル・デイ=ルイス アカデミー賞主演男優賞受賞)、1993年「父の祈りを」(ベルリン国際映画祭グランプリ受賞)、1997年「ボクサー」と稀代の名優 ダニエル・デイ=ルイス(1957~)が、主演した傑作を立て続けに発表、2002年「ブラ
ディ・サンデー」、2009年「マイ・ブラザー」(ナタリー・ポートマンの性フェロモンが出色)、2011年「ドリームハウス」そして最新作「ローズの秘密の頁(㌻)」のどれを見落としても後悔する作品ばかりです。
「ローズの秘密の頁(㌻)」は、現在KBCシネマで公開中なのでストーリーのディテールは、見てのお楽しみということにして映画の背景、そして見どころ(ぜひ見逃さないで欲しいところ)だけをご紹介したいと思います。
主人公は、我が子殺しの冤罪で、40年もの長い間、精神病院に収容(監禁)された一人の女性ローズこと ロザンヌ・マクナルティの物語で、若いローズをアメリカの若き名女優 ルーニー・マーラ、40年後の老いたローズをイ
ギリスのベテラン女優 バネッサ・レッドグレーブが、演じています。
シェリダン監督の丁寧な演出とローズ役のルーニー・マーラならびにバネッサ・レッドグレーブの演技力(凛とした佇まい)、ロシアの撮影監督 ミハイル・クリチマン(1967~)が、撮った美しい映像、さらに映画の冒頭からラストまで劇中、何度も流れる(老いたローズが恋人を想って精神病
院の音楽室で弾くシーンなど)ベートーヴェンのピアノ曲「月光」の効果は、抜群、名作「ショーシャンクの空に」(1994)の感動を思い出させる監督・脚本・俳優(演技者)の三位一体が、見事に融合した傑作映画です。
これまでシェリダン監督作品の主人公は、男性ばかりでしたが、「ローズの秘密の頁(㌻)」では、初めて女性を主人公にしました。
ローズは、イギリス領の北アイルランド育ちのプロテスタントですが、ナチスドイツとの戦況悪化で中立国アイルランドにいる伯母の元に身を寄せました。
カトリック教国のアイルランドは、プロテスタントのイギリスに植民地として長い間支配され搾取されたことへの恨みと反感が、強く、プロテスタントのローズは、アイルランド社会の少数派として奇異な目で見られ差別されていま
した。
ある日、ローズは、街で同じプロテスタントの若者マイケル・マクナルティ(ジャック・レイナー 1992~)と知り合い恋に落ちました。(
後編に続く)