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ペーパー・ボーイ  シネマの世界<第816話>

ペーパー・ボーイ  シネマの世界<第816話>_a0212807_14191533.jpg名匠リー・ダニエルズ監督(1959~)が、2013年の秀作映画「大統領の執事の涙」を撮る前年の2012年に製作・脚本も含め監督した「ペーパー・ボーイ」は、個性と実力を併せ持った演技者をそろえ、意表を突くサスペンスを幾重にも重ねた脚本で撮った見事な映画です。
映画のプロットは、アメリカ南部の湿地帯=フロリダで起きた人種差別主義者で悪徳保安官が、殺された事件で逮捕され死刑宣告されたホワイト・トラッシュ(白いゴミ 南部地域に住む貧困層白人を蔑むスラング)の真相(冤罪ではないかという疑念)をめぐるクライム・サスペンス(‥ミステリーでもあり、スリラーでもある)映画です。
映画の舞台が、アメリカ南部のスワンプ地帯、つまり湿地帯(=沼地)で、物語の主人公は、父親の経営する小さな新聞社で記者(ペーパー・ボーイ)として働く兄弟ながら、そう単純ではなく、獄中にいる死刑囚と兄弟に近づく彼の婚約者(愛人)と称する美人で妖艶な女、この女に一目ぼれする記者の弟や次第に露見していく記者の兄の性癖など、黒人で同性愛のダニエルズ監督が、描く独特のペーパー・ボーイ  シネマの世界<第816話>_a0212807_14200014.jpg破滅していく人間世界は、魔界を見るようで必見です。
ダニエルズ監督の演出は、自分が、指揮するオーケストラの楽器奏者それぞれの音色(役者の個性)を知り尽くし、演奏する楽曲(脚本)を自家薬籠中の物としてタクトを振る名指揮者(監督)のようで、記者の弟ジャックを演じるザック・エフロン(1987~ 2016年「ダーティ・グランパ」で不良祖父役の名優 ロバート・デ・ニーロペーパー・ボーイ  シネマの世界<第816話>_a0212807_14200593.jpg相手に生真面目な孫を好演)、記者の兄ウォードを名優マシュー・マコノヒー(1969~)、妖艶な女シャーロット(実は毒婦)を演じる名女優ニコール・キッドマン(1967~ 出演時45歳、ニコール・キッドマンの卑猥ぶり、アバズレぶりが、最高!)、‘本当にコイツ冤罪なの? コイツが、真犯人者だよ’ と最初から映画を見ている者にそう思わせる死刑囚ヒラリー役のジョン・キューザック(1966~ サイコなホワイト・トラッシュぶりも見事な演技)です。
ペーパー・ボーイ  シネマの世界<第816話>_a0212807_14201577.jpgこのキャストを見ただけでも端から ‘不穏な’ ヒンヤリした空気が、漂って来ます。
映画の骨子は、1969年のフロリダ、事件を起こし大学から追放されたジャック(ザック・エフロン)が、父親の経営する小さな新聞社で新聞配達など雑用を手伝いながら、毎日を無為に過ごしていました。
そんなある日、新聞記者をしいてる兄ウォード(マシュー・マコノヒー)が、以前この地で起きたペーパー・ボーイ  シネマの世界<第816話>_a0212807_14201941.jpg保安官殺人事件の犯人として死刑になった男は、無罪(冤罪)の可能性が、あるとしてその取材のために帰って来ました。
弟ジャックは、兄ウォードの取材の手伝いをすることになりました。
取材中、死刑囚の婚約者と称する美しく妖艶な女シャーロット(ニコール・キッドマン)に出遭いました。
ペーパー・ボーイ  シネマの世界<第816話>_a0212807_14205167.jpgジャックは、シャーロットのセクシーな美しさに魅かれ彼女の虜(とりこ)になりました。
前述したこの4人の人物を軸にしてワキ役たちが、またすばらしく、ウォードとジャック兄弟の父親(スコット・グレン 1941~)の家に住み込みメイドとして一家の面倒を見ている黒人女性アニタ役のメイシー・グレイ(1967~)、兄ウォードの同僚で高潔な黒人記者ヤードリー役のデビッド・オイェロウォ(1976~)などいずれも秀逸でした。
これまで何度も述べていますが、映画は、監督・脚本・俳優この三つが、そろえば そうびどい作品には、なりません。
しかしながら、どんな名監督でも学芸会寸劇まがいの脚本とド素人の出演者では、泣きたいだろうし、どんなに優れた脚本でも 無能な監督の演出と大根役者の演じる映画で撮られたら脚本家は、泣くに泣けないでしょう。
さらに、いかなる名優(名女優)なれども、くだらない脚本や映画を知らない名ばかり監督のもとでペーパー・ボーイ  シネマの世界<第816話>_a0212807_14204872.jpg演技しろと言われても、その気にならない(まず出演しない)でしょう。
今夜このブロクにお立ち寄りいただいた方に映画の見方をアドバイスするなら、自分の好きな監督、脚本、俳優(女優)を自分のランドマークにして見たい映画を選ばれたら後で悔しい思いをすることは、まずないでしょう。

by blues_rock | 2018-02-24 00:04 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
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