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心の時空

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スリー・ビルボード  シネマの世界<第811話>

映画「Three Billboards Outside Ebbing, Missouri」(ミズーリ州エビング外れにある三つの広告看板)は、タイトルそのままに「レイプされて殺された」、「逮捕はまだ?」、「どうして?ウィロビー署長」と書かれた三枚の大きな広
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告看板が、アメリカの南部ミズーリ州のとある田舎町エビング郊外に建てられたことで起きる登場人物たちそれぞれの‘怒り’を描いた心理サスペンス映画の傑作です。
a0212807_17052282.jpg監督・脚本・製作は、イギリスの劇作家 マーティン・マクドナー(1970~)で、長年演劇(戯曲)で培った脚本センスが、生きている抜群の映画(アカデミー賞脚本賞の有力候補)です。
ほとんど誰も通らないような片田舎の道路沿いに突如出現した大きな三枚の奇妙な看板を設置したのは、近くに住む主婦ミルドレッド・ヘイズでした。
a0212807_17173571.jpg7か月前、ミルドレッドの19歳の娘が、この看板の近くで「レイプされた挙句焼き殺された」未解決の凶悪事件にミルドレッドは、「逮捕は、まだ?」、「どうして? ウィロビー署長」と何の手がかりも発見できない地元警察に対して心中の‘怒り’を爆発させたのでした。
a0212807_17175628.jpg捜査をしているのか、それとも無能なのかと、地元住民の信頼厚いウィロビー署長をあからさまに非難した広告看板は、ミルドレッドの家族、高校生の息子と別れた夫(殺された娘の父親)も巻き込み、地元の警察や地域の住民を敵にまわす騒動に発展、騒ぎに便乗したローカルテレビが、ニュースで報道するという不穏な事件に発展しました。
a0212807_17183294.jpgエビングで小さなギフト店を営むミルドレッドは、孤立無援となり娘と生前、諍(いさか)いした後悔やレイプされた挙句焼死体となって発見された娘を殺した犯人への憎悪でやり場のない‘怒りと悲しみ’に翻弄され、その苛立ちを抑えきれませんでした。
‘怒り’を抑え切れず粗暴に振る舞うミルドレッドの感情の起伏をフランシス・マクドーマンド(1957~、1996年の名作「ファーゴ」でアa0212807_17190029.jpgカデミー賞主演女優賞受賞、私は、この「スリー・ビルボード」のミルドレッド役でもアカデミー賞主演女優賞を受賞すると予想)が、名女優の名に違わない実に見事に表現しています。
主人公のミルドレッドに大きく関わるのa0212807_17185555.jpgが、二人の人物、一人は、住民から信望厚いのある警察署長ウィロビーで個性派俳優のウディ・ハレルソン(1961~、1995年の怪作「ナチュラル・ボーン・キラーズ」は秀逸)、もう一人が、彼の部下で人種差別主義者の巡査ディクソンです。
アメリカのどこにでもいような平気で暴力を振るう単細胞の人種差別主義者ディクソンをサム・ロックウェル(1968~、2010年「ディa0212807_17190713.jpgア・ブラザー」主演、この「スリー・ビルボード」でアカデミー賞助演男優賞を受賞すると推察)が、映画の中でミルドレッドと関わることにより次第に変化していくディクソンを好演しています。
登場人物たちは、それぞれの心理に苛立ち(不穏な感情つまり‘怒り’)を抱え、この映画の重要なキーポイントになります。
a0212807_17191022.jpgマクドナー監督は、アメリカを旅行中、行く先々の道路沿いにある大きな広告看板(ビルボード)を見てこの映画の構想を膨らませていったそうです。
主人公は、‘フランシス・マクドーマンド’をイメージして脚本を書いたのだとか、そしてこれだけの傑作映画を製作するのa0212807_17192235.jpgですから相当な才能です。
イギリスの撮影監督 ベン・デイヴィス(1962~)が、撮った静謐な中に醸し出す‘不穏さ’は、マクドナー監督が、演出した登場人物たちの‘怒り’を自然に見せ実に見事です。
映画にいわゆる善人や単純な悪人は、登場せずマクドナー監督が、創造した「スリー・ビルボード」の物語は、‘終わり’のないダークなサスペンス心理劇映画の傑作です。           (下写真 : 出演者たちと撮影の打合をするマクドナー監督)
a0212807_17192508.jpg映画には、他にも名優 ジョン・ホークス(1959~、2010年「ウィンタース・ボーン」、2012年「セッションズ」)、オーストラリアの女優 アビー・コーニッシュ(1982~)、アメリカの若手俳優 ルーカス・ヘッジズ(1996~、2016年「マンチェスター・バイ・ザ・シー」)などの演技巧者が、脇で物語をしっかり固めています。
「スリー・ビルボード」は、現在、中洲大洋映画劇場で公開中、ベネチア国際映画祭脚本賞、トロント国際映画祭最高賞の観客賞を受賞していて来月3月4日のアカデミー賞授賞式を賑わす中心作品となることでしょう。

by blues_rock | 2018-02-08 14:30 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)