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否定と肯定  シネマの世界<第785話>

この映画は、ナチスドイツの独裁者ヒトラーとナチスが、ヨーロッパのユダヤ人600万人を虐殺した‘ホロコースト’という歴史を前提に1996年、イギリスで係争(裁判)された「アーヴィング 対 ペンギンブックス、リップシュタット事件」(名誉棄損に当たるか否かの裁判)の事実をもとに製作された法廷劇の秀作です。
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映画の原題は、「Denial(否定)」ですが、日本公開タイトルは、「否定と肯定」となっており映画のプロット(論旨)が、「否定と肯定」では、なくお互いの主張の非を裁判で係争する「否定と否定」であると分かって見ないとこんがらがるかもしれません。
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映画は、前述したとおり独裁者ヒトラーとナチスが、ヨーロッパ全域のユダヤ人600万人を虐殺した‘ホロコースト’という歴史的事実に対し「ヒトラーとナチスによるユダヤ人ホロコースト否定論者 デイヴィッド・アーヴィング(1938~、イギリスの人種差別主義 歴史学者)が、アメリカのユダヤ系女性歴史学者(ホロコースト研究の専門a0212807_07434825.jpg家)デボラ・リップシュタット(1947~)と出版社ペンギンブックスに対し著書「ホロコーストの真実」で自分の主張を嘘と捏造と否定していることは、‘名誉棄損’であるとイギリスの高等裁判所に告訴した裁判をめぐる法廷劇です。
原告アーヴィングと被告リップシュタットは、お互い主張する論旨を歴史的事実に基づきその証拠と論理(弁舌)で相手を否定する「否定と否定」の裁判ドラマ(法廷劇)なので見ていてぐいぐい引き込まれていきます。
a0212807_07435208.jpg監督は、イギリステレビドラマのベテラン監督ミック・ジャクソン(1943~、1992年「ボディガード」)、脚本が、イギリスの劇作家・脚本家デヴィッド・ヘアー(1947~)、良く練られた脚本と演出ならびに演技に定評のあるキャストの表情を追うハリス・ザンバーラウコス撮影監督(1970~、2015年「アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場」、2017年「オリエント急行殺人事件」の撮影監督)のスムーズなカメラワークと、いずれも秀逸です。
a0212807_07440460.jpgホロコーストは、真実であるの立証責任を負わされた被告リップシュタットとその弁護団とイギリスの司法の仕組みを知る狡猾な原告アーヴィングの策略、このシリアスな裁判ドラマをジャクソン監督が、抜群の演出でエンターテイメントたっぷりの法廷劇にしました。
1994年、アメリカの歴史学者でホロコースト研究の第一人者 デボラ・リップシュタット教授(レイチェル・ワイズ 1970~)は、イギリス人の自称歴史学者 デイヴィッド・アーヴィング(ティモシー・スポール1957~、根っからの人a0212807_07440833.jpg種差別主義者アーヴィングを怪演、すばらしい、2014年作品「ターナー、光に愛を求めて」も秀逸)が、主張するホロコースト否認論を激しく攻撃していました。
アーヴィングは、リップシュタット教授の著作で自分が、ホロコースト否認論者と呼ばれ社会的名声と信用さらに経済的損失を被ったとして名誉棄損の訴訟を起こしました。
イギリスの名誉毀損訴訟では、被告(リップシュタット)側が、立証責任を負うため彼女の弁護士ジュリウス(アンドa0212807_07442063.jpgリュー・スコット1976~)のチームは、アーヴィングのホロコースト否定に関する虚偽(ウソ)の主張を立証しなければなりませんでした。
老獪なアーヴィングは、証拠を捻じ曲げ自分の主張(民族主義的ポヒュリズム)が、マスコミで大きく取りあげられるよう画策(ねつ造と隠ぺい)、リップシュタットの法廷弁護士ランプトン(トム・ウィルキンソン 1948~、名演)は、被告の彼女を連れ、ポーランドの歴史学者とともにユダヤ人ホロコーストのあったアウシュヴィッツ=ビルケナウa0212807_08030807.jpg
強制収容所を訪ねました。
アーヴィングは、思惑どおりのマスコミの関心(ホロコーストのニュース)に自惚れ不遜な態度でリップシュタットを煽りました。
感情的になった彼女は、自分とホロコーストの生存者を証人として出廷させアーヴィングと対決させるよう法廷弁護士のランプトンに詰め寄りますが、裁判に熟練したランプトンは、アーヴィングの反対尋問でひどく感情を害され逆に精神を傷付けられるだけだと諌めました。
a0212807_07441650.jpg裁判に長けたランプトンは、老練な弁論でアーヴィングの主張が、不条理で矛盾に満ちており、ホロコーストならびにアウシュヴィッツ強制収容所の研究者は、アーヴィングが、事実を歪曲している箇所もあると指摘しました。
アーヴィングの主張は、明らかに一貫性を欠いており、反論されるとナチスが、虐殺の証拠をすでに破壊していると知りながら「拠を出せ」と開き直り、自説の矛盾を指摘されると「記憶違いだってある」と平然としている姿は、滑稽かつ恐ろしくもあります。
a0212807_08032468.jpg人種差別主義者でヒトラー信奉者のアーヴィングは、アメリカのフェィク大統領とダブり、自分の都合良いように事実を曲解、捏造(ねつぞう)し、自分に都合の悪い真実や論理の弱点、さらに自分の明らかな嘘(うそ)や捏造を反証されると大声で‘ウソ(フェィク)だ’と喚くところなんか、そっくりでした。 (上写真 : 中央 ミック・ジャクソン監督、その右 デボラ・リップシュタット本人そして主演女優のレイチェル・ワイズ )

by blues_rock | 2018-01-17 00:17 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)