Gifted / ギフテッド シネマの世界<第792話>
主人公は、数学に特別の才能(Gifted )を発揮する7歳の女の子メアリーとメアリーのペット(友だち)である片目の飼い猫フレッドさらに一緒に暮らす叔父のフランク(メアリーの育ての親)の二人と一匹です。
メアリーの亡き母ダイアンは、天才数学者でしたが、精神を病んでいて生まれたばかりの娘メアリーを弟のフランクに託し「普通の子供に育てて欲しい」と遺言して自死しました。
利発な7歳の少女メアリーを演じる天才子役 マッケナ・グレイス(2006~)のキュートでチャーミングなこと、2001年映画「アイ・アム・サム」や2004年映画「マイ・ボディガード」に出演していたころ天才子役と絶賛されたダコタ・ファニング(1994~)を彷彿とさせる演技の上手さです。
育ての親ながらメアリーから友だちのようにフランクと呼ばれ子育てに奮闘するメアリーの叔父役のクリス・エヴァンス(1981~)も好演しています。
隣人でメアリーとフランクの無二の親友である黒人女性ロバータを演じるオクタヴィア・スペンサー(1970~、2016年映画「ドリーム」主演)の存在感も抜群です。
メアリーの母ダイアン(映画に登場しません)が、亡くなるとフランクは、メアリーを連れてイヴリンの前から姿を消し、それ以来疎遠になっていました。
イギリス人の祖母イヴリンは、資産家で自分も昔ケンブリッジ大学で数学を学んだ数学者でしたが、結婚してダイアンとフランクを産み母になると、数学の天才であった娘ダイアンに‘未解決の最も難解な数学の課題 ナビエ–ストークス方程式’を解析させ数学史に娘の名を残したいという自分の夢をダイアンに託して徹底した数学の英才教育を行ないました。
やがてダイアンは、メアリーを妊娠するもパートナー(メアリーの父親)に逃げられ精神を病み生後6か月のメアリーの養育をボストン大学准教授で哲学を教えていた弟のフランクに託しました。
亡き姉の意思どおり普通の子供として姪のメアリーを育てたいフランクと孫メアリーに天才数学者としてエリート教育を授けたいイヴリンの親権を巡る親子の法廷係争が、始まりました。
この映画にちょっぴり意地悪な人は、登場しますが、世に言う悪人は、一人も登場しません。
映画の顛末は、二転三転しますが、またもう一度見たくなる映画です。
今夜のシネマの世界は、当初「Gifted / ギフテッド」ではなく、私の好きな女優シャーリーズ・セロンとスペインの名優ハビエル・パルデム主演の映画でショーン・ペン監督作品「ザ・ラスト・フェイス」(劇場未公開)を書こうと思っていました。
この映画は、ペン監督が、撮影当時の婚約者 シャーリーズ・セロンを主演させたシリアスな社会派の映画です。
2003年凄惨な内戦下にあったリベリアで国連難民キャンプを運営する難民救済組織の医療官レン(シャーリーズ・セロン)と国際医師団の医師ミゲル(ハビエル・パルデム)との愛の相克と葛藤を描いた物語です。
ペン監督は、レンとミゲルのロマンスを情熱的に描く一方、不条理で凄惨なリベリア内戦による残酷極まりない惨状を徹底したリアリズムで描き、映画を見る者に、この悲劇から目を背けないで欲しいと強いメッセージを送っています。
しかし、目を背けるわけではありませんが、私は、この世界のあまりの悲劇の多さに息苦しくなることが、あります。
そんなとき「Gifted / ギフテッド」のような人間らしいユーモアのあるハートフルな映画を見ることが、精神安定のためには、必要不可欠のように思えてなりません。
だから今夜は、「Gifted / ギフテッド」を掲載しました。