ブリーダー シネマの世界<第694話>
とくに ‘赤’を配置したシーンを多用するレフン監督の映像は、初期作品の「ブリーダー」にも顕在していました。
ビデオレンタルショップで働く映画のことしか頭にない映画オタクの店員で主人公レニーを演じるマッツ・ミケルセン(1965~)が、店にビデオ(棚にズラリ並ぶのがVHSというのも時代を感じます)を借りに来た客に世界中の映画監督名をペラペラと語るシーンは、レフン監督の映画の好みが、分かって楽しめます。
だが、客は、レニーが、店の品ぞろえの良さを一生懸命説明するのに映画に興味は、なく結局ポルノを借りて帰るところは、笑えます。
映画は、レニーの静に対して、レニーの友人レオ(キム・ボドゥニア 1965~)とルイ(ズラッコ・ブリッチ 1953~)が、動の役割を演じ、これにレオの恋人でルイの妹ルイーズ(リッケ・ルイーズ・
シャイなレニーは、デリカショップで働く読書家のレアを映画に誘いますが、彼女は、映画のことなどチンプンカンプンなのに映画オタクのレニーが、パニック・ホラー映画の古典「悪魔のいけにえ」(1974)を彼女に「見た!?」と質問するところなど ‘クスッ’ と笑えるシーンです。
レアとの念願のデートも映画館の前にいる彼女を見たとたんレニーは、逃げ帰りすっぽかしました。
レオは、恋人ルイーズの妊娠にとまどいイライラをつのらせ妊娠を喜ぶルイーズに暴力を振るうようになりました。
ルイは、レオの妹ルイーズへの暴力にさらなる暴力で追いつめました。
どこにでもいるセルフコントロールできない男のブチ切れぶりに見ている方は、呆れうんざりしながらもあまりのリアリティにすくんでしまいます。
ルイーズが、流産したことでルイとレオの間は、最悪な事態となりレフン監督独特のケレンミあるクールな演出が、冴えています。
映画のラストでレニーは、デリカショップにレアを訪ね、また映画デートに誘い、レアが、「すっぽかさなければ、いいわ。」とOKします。
エンディングに流れるテクノポップ風にアレンジされたジョン・レノンのラブは、なかなか効果的でレフン監督の音楽センスも感じました。