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心の時空

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美術館を手玉にとった男(ドキュメンタリー)  シネマの世界<第650話>

昨年11月に日本公開された「美術館を手玉にとった男」(原題「Art and Craft」 図画工作)は、2011年に発覚したアメリカ20州 46美術館に所蔵されている 100点以上の贋作について、その真相を追った(実話を描いた)たいへん興味深い秀逸なドキュメンタリー映画です。
美術館を手玉にとった男(ドキュメンタリー)  シネマの世界<第650話>_a0212807_3234349.jpg
監督は、エジプト出身の俳優サム・カルマン(1953~ 監督・撮影)と元ニューヨーク現代美術館職員ジェニファー・グラウスマン、共同監督と編集をドキュメンタリー作家(ジャーナリスト)マーク・ベッカーが、担い、精神を病んだ(10代で統合失調症と診断された)天才贋作画家マーク・ランディス(1955~ 自閉症サヴァン症候群と推美術館を手玉にとった男(ドキュメンタリー)  シネマの世界<第650話>_a0212807_3304687.jpg察)は、なぜ30年間もアメリカ20州、46の美術館に 100以上の自分の贋作を資産家や神父と偽り、慈善活動と称して無償で寄贈し続けたのか ‥ 2008年、最初に彼が、寄贈した作品は、贋作であることを見破り、贋作者マーク・ランディスを調査するも執着し過ぎて、美術館を解雇されてもなお執拗に調査を続けるオクラホマシティ美術館の元レジストラー(情報管理担当者)マシュー・レイニンガー、さらに彼の友人で、シンシナティ大学ギャラリーの美術館を手玉にとった男(ドキュメンタリー)  シネマの世界<第650話>_a0212807_791823.jpgアートディレクター アーロン・コーワが、ランディスに贋作の寄贈を止めさせようと説得する電話のやり取りも誠実で他にも、精神疾患患者としてマーク・ランディスを長年ケアしている医療介護士との会話やFBI美術品詐欺捜査官の困惑(ランディスが金銭を受け取っていないので罪に成らず捜査中止となる)、ランディスの贋作を無視しようとする(美術館が、寄贈を受けた贋作を認めることは、ランディスの実力と才能を証明することになり、自らの権威と鑑識眼の失墜を恐れる)各美術館のキュレーターや美術館を手玉にとった男(ドキュメンタリー)  シネマの世界<第650話>_a0212807_3331372.jpgディレクターの姿、彼の贋作を美術館で見た人たちの反応など「美術館を手玉にとった男」に登場する実在の人たちも興味深く丁寧に描かれています。
ジェニファー・グラウスマン監督は、ニューヨークタイムズで‘前代未聞の贋作事件’として報道された「30年に亘りアメリカ20州46の美術館に贋作を寄贈し続けたマーク・ランディス」に興味を持ちサム・カルマン監督とマーク・ベッカーと共同で(監督・撮影・編集を分担して)マーク・ラン美術館を手玉にとった男(ドキュメンタリー)  シネマの世界<第650話>_a0212807_336245.jpgディスを天才贋作画家と慈善活動家の両面からドキュメンタリーで撮ることにしました。
グラウスマン監督は、ランディスの行為が、美術界の常識(美術館やコレクター、美術評論家)には、収まらないもっと本質的なテーマが、含まれていると考えポスト・プロダクションに多くの時間を割いています。
ドキュメンタリーの映像を見ていると良く分かりますが、主人公のマーク・ランディス始めマシュー・レイニンガー、美術館を手玉にとった男(ドキュメンタリー)  シネマの世界<第650話>_a0212807_3371179.jpgアーロン・コーワその他、被写体(取材されるほう)とカメラを持つカルマン監督さらにグラウスマン監督・ベッカー監督三人の撮影者(取材するほう)とは、お互い相手に敬意を持ち信頼し合っていることを感じます。
そもそもマーク・ランディスが、絵を描き始めたのは、10代で統合失調症と診断され両親が、不在の時は、自室で母親から買ってもらったテレビを点け美術館のカタログにある絵を模写することが、習慣となったからです。
美術館を手玉にとった男(ドキュメンタリー)  シネマの世界<第650話>_a0212807_33754100.jpgランディスは、ランディスなりに子供のころから自分をコントロールするために自己流のアートセラピーを実践していたのでした。
早く父親を亡くし、やがて母親も亡くなるとランディスの模写は、エスカレート、彼に天性の画才が、あっただけに美術館のキュレーターやディレクターなど専門家も見破れない天才贋作画家になっていきました。
ランディスは、「絵に完全なオリジナルは、存在しない」と言い切り、贋作中「草は、適当でいいよ」と指先に絵の美術館を手玉にとった男(ドキュメンタリー)  シネマの世界<第650話>_a0212807_3385042.jpg具を塗りさらさらと描き、「裏は、コーヒーをかければ古く見える」と飲みかけのコーヒーをかけ「ウォルマートで売っている額を使えば、サザピースに出品されたみたいに良く見えるよ」とウォルマートで購入した画材を見せてくれました。     (上写真 : 左、マシュー・レイニンガー / 右、アーロン・コーワ)
自分の絵に対する問いにランディスは、「芸術(Art)‥? 違うよ、工作(Craft)だよ」と事もなげにシンプルに答美術館を手玉にとった男(ドキュメンタリー)  シネマの世界<第650話>_a0212807_3391772.jpgえ、彼の答えが、このドキュメンタリー映画「Art and Craft」の原題になっています。
ランディスには、金儲けなど関心が、なく自分の記憶の中の母親=テレビなのか彼は、絵を描いているとき必ずテレビをつけ、旧い映画を流しながら制作しています。
ランディスが、資産家や神父を装い、美術館に自分の贋作を寄贈しに行くとき彼は、テレビで何度も見た旧い映美術館を手玉にとった男(ドキュメンタリー)  シネマの世界<第650話>_a0212807_3394235.jpg画やドラマの登場人物を模倣し、セリフまで真似ることもあり、なかなかのユーモアセンスに笑ってしまいます。
マーク・ランディスは、絵(完ぺきな模写=贋作)だけでなく旧い映画を見て自己流のアートセラピーを実践していたのでした。
映画の最後、シンシナティ大学ギャラリーのディレクター アーロン・コーワが、ランディスに声をかけ、ランディス美術館を手玉にとった男(ドキュメンタリー)  シネマの世界<第650話>_a0212807_7122887.jpgの贋作を最初に見破ったマシュー・レイニンガーに監修の協力を求め、天才贋作画家マーク・ランディス個展を開くシークエンスは、感動的です。
さらにエンディングで、これからも贋作を描くのかと質問されたランディスが、答えたセリフもなかなかユーモアにあふれていて同時にクール(贋作制作を止める気なし)です。
(上写真 : 左から天才贋作画家・寄贈者マーク・ランディス、監督・撮影サム・カルマン、監督ジェニファー・グラウスマン、共同監督・編集マーク・ベッカー)
by blues_rock | 2016-09-11 03:15 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
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