クライム・ヒート シネマの世界<第643話>
監督、脚本、キャスト(配役)と申し分ないのに日本では、配給会社も上映館もないとは、トホホと云った(信じられない)心境です。私が、映画館でいつも生理的につらいのは、本編始まる前に流れるつまらない宣伝と予告編を見せられることで、とくに邦画の予告編の酷さ(映画の酷さを予告しているようなもの)は、目を覆うばかりです。
さて、この映画「クライム・ヒート」(タイトルは「ザ・ドロップ」が良い)は、少しマニヤックなクライムサスペンス映画なので、胸にグサリとくる刺激的な映画を見たいと思う方にぜひお勧めしたい作品で、たとえば、ミステリアスにしてダークなクライムサスペンスの秀作「ブルーベルベット」のような映画(ただし「クライム・ヒート」にはキス・シーンす
らなくエロティック度ゼロ)と想像していただければ良いと思います。監督は、ベルギーの異才ミヒャエル・R・ロスカム監督(1972~、2011年の長編初監督作品「闇を生きる男」も秀逸)で、原作と脚本が、アメリカの名脚本家デニス・ルヘイン(1965~、2003年映画「ミスティック・リバー」や2004年映画「シャッター アイランド」ほか秀
作映画の脚本多数)、キャストは、イギリスの若手名優トム・ハーディ(1977~)アメリカの名優ジェームズ・ガンドルフィーニ(1961~2013病没、享年51歳)、スウェーデンの女優オミ・ラパス(1979~ スウェーデン映画「ドラゴン・タトゥーの女ミレミアム」主演)、ベルギーの若手名優マティアス・スーナールツ(1977~、前述の「闇を生きる男」に主演、主
人公の孤独と絶望感は見事、「リリーのすべて」では、リリーの恋人ハンス役)、アメリカの俳優ジョン・オーティス(1968~)と味のある名優たちばかりです。映画の舞台は、ニューヨークのダウンタウン、ブルックリンの場末にあるバーで店を仕切るバーテンダーのボブ(トム・ハーディ)が、主人公です。
店の経営者は、表向きボブの叔父マーヴ(ジェームズ・ギャンドルフィー二)ながら、彼のバクチの借金の形(かた)にチェチェン・マフィアに店を乗っ取られマフィアが、裏金を一時的に集める「ドロップ・バー(The Drop)」にしていました。
映画は、ボブが、深夜仕事を終えた帰り、自宅アパート前のゴミ捨て場で殴られ傷つき血だらけになった犬を拾うところから始まります。偶然、隣人のナディア(ノオミ・ラパス)と知り合い犬の治療と世話の仕方を教わりました。
ある夜、ボブとマーヴが、閉店の準備をしていると二人組の強盗に襲われ売上金5千㌦を奪われました。
売上を集金に来たチェチェン・マフィアから即刻奪われた金と同額を工面するようボブとマーヴは、脅されました。この強盗事件は、借金返済の金に困ったマーヴが、苦し紛れに仕組んだ偽装強盗でした。
ボブが、拾った犬の持ち主は、ナディアの元恋人でチンピラのエリック(マティアス・スーナールツ)で、これにニューヨーク市警のトーレス刑事(ジョン・オーティス)とチェチェ
ン・マフィアが、ボブとマーヴに関わりながらダークなサスペンスドラマを展開していきます。トム・ハーディ演じるバーテンダー ボブの寡黙で朴訥(ぼくとつ)とした雰囲気は、感情を表に出さない分、彼を取り巻く事態が、暗転したとき現われる彼の裏に潜む狂気との対比は、この映画の見どころで秀逸です。
惜しくも名優ジェームズ・ギャンドルフィー二の遺作になりましたが、トム・ハーディほか名優(名女優)たちの名演技を堪能する映画でもあります。

