ジャングル・ブック シネマの世界<第640話>
「ジャングル・ブック」の原作は、イギリスの作家で詩人ラドヤード・キップリング(1865~1936、インド・ムンバイ生まれ、ノーベル文学賞受賞)が、1894年に発表した児童文学の短編小説集です。
ほとんどの方が、子供のころ一度は、児童小説として読んだことがあると思います。
本は、読んでいないという方も幼いころ、アニメーションや映画で見た、狼に育てられた少年が、熊や豹に助けられジャングルで様々な冒険をする物語に胸躍らせたことを憶えておられるのではないでしょうか。
この映画の製作者であるファヴロー監督は、アカデミー賞撮影賞・視覚効果賞を受賞した「アバター」(2009)、「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」(2012)、「ゼロ・グラビティ」(2013)などハリウッド屈指のCG(ヴァーチャル)映像チームならびに製作スタッフを集め、彼らの最先端映像技術が、「ジャングル・ブック」でフルに発揮できるよう環境を整え製作に入りました。
映画は、主人公の少年モーグリ以外、スクリーンに登場する動物たちやジャングルすべてを実写と見紛(みまご)うリアルなCG映像で表現されています。
私の「ジャングル・ブック」への強い関心は、ジョン・ファヴロー監督の最新作であること、と映画の‘最先端CG(ヴァーチャル映像)技術’が、どこまでリアリティ(本物=質感・実在感)を表現できるようになったか自分の目で確かめたかったことの二つです。
さすがファヴロー監督です、最先端CG映像に申し分なく演出といい構成といい素晴らしい冒険活劇の「ジャングル・ブック」でした。
映画好きの大人からアニメーション動画の大好きな子供まで三世代家族そろって楽しめる映画です。
この「ジャングル・ブック」には、ジブリの宮崎駿監督作品と共通するところもあり熊のバルーが、人生について語る含蓄あるセリフは、大人でないと分からないかもしれません。
ジャングルで黒豹に拾われた赤ん坊のモーグリは、狼一族に預けられジャングルを元気に走り回る少年に成長しますが、ある日人間への復讐心に燃える虎に見つかりモーグリを引き渡すよう狼に迫りました。
モーグリは、狼の群れから離れジャングルでいろいろな動物と出遭い、困難に遭遇するたびに人間の智恵に目覚め、ジャングルで共生することを学び、モーグリを執拗に追う虎と対決するという物語です。
ファヴロー監督は、数千人のオーディションから12歳の新人ニール・セディ(2003~ 初々しい秀逸な演技に感心)を快活なジャングル少年モーグリに抜擢、演技経験のないニール少年を付きっきりで演技指導しながら‘実写’しました。 (こちら参考)
字幕版の声優陣も豪華で、それぞれ動物たちの個性にぴったりのキャストです。
モーグルを厳しく同時にやさしく見守る黒豹のバギーラを名優ベン・キングズレー(1943~)、モーグルに惜しみない愛をそそぐ母オオカミ ラクシャにメキシコの女優ルピタ・ニョンゴ(1983~)、恐ろしい虎のシア・カーンをイギリスの俳優イドリス・エルバ(1972~)、モーグルに人生を教える熊のバルーに名優ビル・マーレイ(1950~)、ジャングル奥地に迷いこんだモーグルをねらい言葉巧みに近付く にしき蛇のカーを若手名女優のスカーレット・ヨハンソン(1984~)さらにオランウータンのキング・ルイを名優クリストファー・ウォーケン(1943~)と声(セリフ)の名演ぶりも楽しめます。
音楽監督ジョン・デブニー(1956~)によるディキシーランド・ジャズやニューオリンズ音楽を使ったサウンド・トラックは、紛れもなく音楽好きな大人向けと推察、ドクター・ジョンと劇中で熊のビル・マーレイが、それぞれ歌う「The bare necessities」、にしき蛇のスカーレット・ヨハンソンは、ハスキーな声で妖艶に「Trust in me」を歌い、オランウータンのクリストファー・ウォーケンが、渋く陽気にのりのりで歌う「I Wan'na be like you」も秀逸です。
二枚目のカット、最高です。
「オオカミ少年ケン」を思い出しました(笑)
「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」は、映像が綺麗でしたね。
あえてCGなのがよかったです。
昭和30年代にテレビ放映された子供(少年向け)の探偵もの・SFもの・冒険ものの中に(今見るとどれもちゃちでふき出しますが)、最新CG映像技術でリメイクしたら良さそうな活劇が、いくつかあります。
たとえば、「海底人間8823」、「ハリマオー」、「七色仮面」など‥少年の心をもった名監督‥和製ファヴロー監督は、いずこに?