ボーダーライン(前編) シネマの世界<第604話>
私が、ビルヌーブ監督作品を最初に見たのは、2010年映画「灼熱の魂」で、シリアスな内容ながら作品の質の高さに感銘しました。

撮影は、「プリズナーズ」からビルヌーブ監督とタッグを組むイギリスの名撮影監督ロジャー・ディーキンス(1949
~)で、さすがと云うシャープな映像で撮っています。音楽は、ディーキンス撮影監督と同じく「プリズナーズ」からビルヌーブ監督映画に加わったアイスランドの作曲家ヨハン・ヨハンソン(1969~)が、不穏な音でバイオレンス&クライム・サスペンス映画「ボーダーライン」の緊張感を煽ります。
映画は、日本語タイトルの「ボーダーライン」そのままに、アメリカとメキシコの国境地帯(ボーダーライン)を挟んで、
アメリカの特殊部隊とメキシコの麻薬組織との麻薬戦争の現実をリアリスティックにかつクールに描いています。映画が、始まると冒頭からいきなりメキシコと国境を接するアリゾナ州の空き家で麻薬組織による凄しいメキシコ人複数の惨殺死体が、発見されます。
誘拐事件を捜査していたFBIチーム(SWAT)は、その凄惨さに愕然とし空き家の地下室に入ろうとしたその瞬間、大爆発が、起き映画を見ている者は、一気に緊張感に包まれます。
この冒頭からの緊張感は、エンディングまで緩むことがありません。
この映画のリアリティは、国家安寧(体制維持と国益)のためなら‘何でもあり(非合法)’という世界秩序の現実をまざまざと見せてくれます。映画は、麻薬組織の勢力拡大に絡みアメリカとメキシコの国境地帯で次々に発生する抗争による残忍な殺人事件や裏切り者への見せしめ虐殺事件、その元凶でアメリカにいる麻薬密売シンジケートのボスにプレッシャーをかけ、不安になり動揺した彼が、動き出すのを軍事衛星で追跡し、シンジケートの背後にいるメキシコの麻薬王
暗殺極秘作戦にFBIを協力させると云う物語ながらそう単純なストーリーではありません。次々に登場する人物たち‥国防総省の顧問(アドバイザー)という怪しげな謎の男、ウサン臭いいわく有り気なCIAの男、武装した屈強な特殊部隊の男たち(コマンド部隊)が、麻薬組織(シンジケート)に買収されたアメリカとメキシコの地元警察(メキシコの警察官はパトカーで麻薬を運んでいる)とさらにメキシコ国境フアレス市民に紛れこんだ麻薬組織の武装ギャング団との敵味方区別のつかない‘国境地帯(ボーダーライン)’の銃撃戦など正しく戦争と呼んでいい問答無用の抗争を続けていました。
FBIの女性捜査官ケイト(エミリー・ブラント 1983~)は、アリゾナ州で起きた不審な殺人事件現場の指揮官であったことからアメリカ政府の特務機関にリクルートされメキシコに身を隠している麻薬王を捜す特殊部隊に配属(これはCIAとFBI二者の策略)されました。(後編に続く)

