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心の時空

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オデッセイ  シネマの世界<第581話>

名匠リドリー・スコット監督(1937~)の最新作「オデッセイ」を見ました。
スコット監督の映画作風は、娯楽性の高い、スケールの大きな描写が、特徴です。
オデッセイ  シネマの世界<第581話>_a0212807_2333619.jpg宇宙を舞台にしたスコット監督のSF映画は、1979年の長編第2作となるユニークなSFスリラー映画「エイリアン」に始まり、1982年SF映画の傑作「ブレードランナー」そして2012年「エイリアン」創生記のようなSF冒険映画「プロメテウス」へと受け継がれていきます。
スコット監督は、今回の最新作SF映画「オデッセイ」のプロットを宇宙空間そのものにおき猛烈な砂嵐のため‘火星’置き去りにされた火星有人探査チームの一人である植物学者マーク・ワトニー(マット・デイモン 1970~)が、大気のない無人の火星で生き延びたサバイバル561日(1年半)をスケールの大きなSF宇宙冒険映画‥古代ギリシャの詩人ホメロスの叙事詩に擬えて「オデッセイ」として描きました。
オデッセイ  シネマの世界<第581話>_a0212807_235927.jpgアルフォンソ・キュアロン監督(1961~)のSF宇宙映画「ゼロ・グラビティ」でも宇宙空間とくに無重力(ゼロ・グラビティ)のリアリズム描写に感心しましたが、「オデッセイ」での酸化鉄(赤さび)に覆われた火星ならびに宇宙探査船ヘルメスやシャトル内の無重力宇宙遊泳(船内活動)のリアリティには、驚嘆しました。
映画の大半は、火星に取り残された植物学者マーク・ワトニーを演じるマット・デイモンが、‘ひとり芝居’をしているような展開ながらスコット監督は、火星と宇宙空間の科学的な分かり難さをマーク・ワトニーが、口述記録していくという手法でマークの絶望的な生存の困難さを見る者に説明していきます。
そのシリアスな主人公の状況を娯楽性の高いSF宇宙映画にするためスコット監督は、植物学者マーク・ワトニーをユーモアのあるユニークな人物として演出、それが
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マット・デイモンのキャラクターと相俟って「オデッセイ」の劇中での絶望的な苦境を笑い飛ばすエッセンス(映画のエンタメ要素)になっています。
オデッセイ  シネマの世界<第581話>_a0212807_23101454.jpgマーク・ワトニーが、科学者の智恵を活かし前回ミッションの残留した保存資材で水・空気・電気を確保し、さらに植物学者としての知識で火星の土とクルーたちの残した排泄物で有機土壌をつくり冷凍ジャガイモを発芽させてジャガイモ栽培に成功するところなどは、見ていて愉快なシーンの連続(シークエンス)です。
オデッセイ  シネマの世界<第581話>_a0212807_23111818.jpgスコット監督は、マット・デイモンが、クリストファー・ノーラン監督のSF宇宙映画「インターステラー」で演じたネクラな科学者マン博士とは、真逆なタイプの何事にもポジティブな科学者マーク・ワトニーにしました。
もうひとつは、劇中の随所に流れるポップな70年代モータウン・サウンド(ディスコ・ミュージック)楽曲の明るいこと、これは、宇宙探査船ヘルメス船長のメリッサ(ジェシカ・オデッセイ  シネマの世界<第581話>_a0212807_23153344.jpgチャステイン1977~)の所持品(好きな音楽)ながらマーク・ワトニーが、‘趣味が悪い’と文句言いつつ火星でいつも聴いている音楽です。
マーク・ワトニーの火星滞在219日目に、NASA(アメリカ航空宇宙局)が、JPL(ジェット推進研究所)と共同で彼の救出に向かうと発表したときに流れる音楽は、デヴィッド・ボウイの「スターマン」です。
エンドロールで流れるグロリア・ゲイナーの「恋いのサバイバル(I Will Survive)」も「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドオデッセイ  シネマの世界<第581話>_a0212807_23221222.jpgア」(こちら) の劇中に何度も流れた音楽で改めて感動しました。
リドリー・スコット監督の最新作「オデッセイ」は、ディスカバリー計画で火星に残したマーズ・パスファインダー(火星探査車・宇宙航空機・無人基地)などNASAの全面的な協力(コラボレーション)により撮影されただけあって最新VFX映像の超絶リアリティなこと、大型スクリーンでその迫力を楽しみながら映画の醍醐味を味わっていだきたいと思います。
オデッセイ  シネマの世界<第581話>_a0212807_23233661.jpg映画の中で、NASAとJPLによるマーク・ワトニー救出計画が、ロケットの打ち上げ失敗で、もはや救出不可能かと思われた矢先、JPLは、中国航空宇宙局から所有ロケットの提供を受け、NASAも地球帰還途中の宇宙船ヘルメスへ救援物資を送ります。
火星往復の物資を受け取ったヘルメスは、Uターンして火星にいるマーク・ワトニーの救出に向かいました。
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映画の中でなぜ唐突に中国が、登場するのか‥リドリー・スコット監督によるアメリカのロケット開発を担うジェット推進研究所(JPL)の創設者セオドア・フォン・カルマン(1881~1963)の弟子にしてJPL共同創設者でもあったオデッセイ  シネマの世界<第581話>_a0212807_23254083.jpg中国宇宙開発の父と呼ばれる銭学森(1911~2009、1950年マッカーシズムの弾圧で中国のスパイとされ捕虜交換で中国に帰り中国のロケット・ミサイル開発ならびに宇宙開発を指導、アメリカにとって皮肉なものです)へのオマジュと私は、推察しました。
オデッセイ  シネマの世界<第581話>_a0212807_23261410.jpg最後に余談ながらマット・デイモンが、8年ぶりに新作「ジェイソン・ボーンⅣ」に出演するとのこと、うれしい限りです。
新作「ジェイソン・ボーンⅣ」の監督は、マット・デイモンが、‘ジェイソン・ボーン’シリーズへの出演条件にしていた‘ポール・グリーングラス監督’となったことで出演オファーを受け早や撮影も終了、現在ポスト・プロダクションに入っているそうです。
by blues_rock | 2016-02-16 21:16 | 映画(シネマの世界) | Comments(2)
Commented by j-machj at 2016-02-16 22:48
リドリー・スコットの映像は、ダイナミックで迫力がありますねえ。
ジェームズ・キャメロンといい勝負です。
ストーリーの構成もしっかりしていて退屈させないです。

そういえばリドリー・スコット版「十戒」の「エクソダス:神と王」を見ましたけども、海の割れるシーンとか、ナイル川が血で染まるシーンとか、もっと現実的な解釈をしていました。
Commented by blues_rock at 2016-02-17 00:07
やっと画像を貼付しました。
リドリー・スコット監督やジェームズ・キャメロン監督のようなスケールの大きな映画監督が、なんで日本映画界に育たないのでしょうかねえ‥。
映画狂の大物プロデューサー不在もあるかもしれません。
未だに世界で日本映画と云えば、小津安二郎監督、黒澤明監督、溝口健二監督‥なんて、さみしい限りです。
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by blues_rock