サイダーハウス・ルール シネマの世界<第570話>
1999年作品「サイダーハウス・ルール」(リンゴ農園の規則)もまた秀作で見事な映画です。
原作は、アメリカの作家ジョン・アーヴィング(1942~ 1982年映画「ガープの世界」の原作者)の1978年出版小説「サイダーハウス・ルール」で同名映画の脚本もジョン・アーヴィング自ら書いています。(備考:ジョン・アーヴィング自作の脚本であるためアカデミー賞では脚色賞を受賞)
映画は、アメリカの最東北に位置するメイン州(ニューイングランドの1州でカナダに深く接した長い国境をもつ)の奥地にある鄙びた村の孤児院で生まれ育った青年ホーマーの自立と旅立ちの物語です。
ホーマーを演じるのは、デビューして間もないトビー・マグワイア(1973~)、この後2002年の映画「スパイダーマン」で一躍有名になりますが、「サイダーハウス・ルール」のトビー・マグワイアは、実にすばらしく「ギルバート・グレイプ」でのジョニー・デップやレオナルド・デカプリオに匹敵すると思います。
望まない妊娠で孤児院を訪ねる女性たちから産まれた子供は、孤児として孤児院に引き取られホーマーもその一人でした。
また妊娠中絶のためにラーチ医師を頼って来る女性たちもいて、その度にホーマーは、中絶手術の手伝いをしていました。
ある日、空軍パイロットの少尉と妊娠中絶に来た美しい女性キャンディの手術を手伝い、恋人の少尉に「帰るとき車に同乗させて欲しい」と頼みました。
若く美しいキャンディ役を当時24歳のシャーリーズ・セロン(1975~)が、初々しく演じ、そのシャーリーズ・セロンの美しいこと、うっとり見惚れてしまいました。
ラーチ院長は、突然のことで驚きますが、ホーマーの希望を叶えてあげました。
初めて見る海、初めて食べるロブスターなど見知らぬ世界の出来事に感動するホーマーは、生活のため少尉の母親が、経営するリンゴ農園(サイダーハウス)で季節労働者の黒人たちと共に働くことにしました。
いつしかホーマーとキャンディは、愛し合うようになりますが、二人は、自分たちの関係が、長く続かないことも知っていました。
漁師でキャンディの父親役にJ・K・シモンズ(1955~「セッション」の鬼教官フレッチャー教授役でアカデミー賞助演男優賞受賞)、ホーマーが、図らずも近親相姦による妊娠の中絶手術をすることになる黒人娘の役にニューソウル(Nu soul)シンガーのエリカ・バドゥ(1971~)など共演者たちも好演しています。
撮影監督のオリヴァー・ステイプルトン(1948~)は、孤児院とリンゴ園で映像の色調を変えることでホーマーの心理を表わしたり、音楽監督のレイチェル・ポートマン(1960~)のやさしく包みこむような音楽も「サイダーハウス・ルール」を見る者の心象に大きく貢献しています。
名作「ギルバート・グレイプ」を見て感動した方にお薦めしたい作品です。