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ヒトラー、暗殺 13分の誤差  シネマの世界<第546話>

ライフワークとして‘ヒトラーとナチス’を撮ると明言しているドイツのオリヴァー・ヒルシュビーゲル監督(1957~)が、傑作「ヒトラー 最期の12日間」以来10年ぶりに撮った‘ヒトラーとナチス’映画の最新作「ヒトラー、暗殺 13分の誤差」も、なかなかの力作で、独裁者ヒトラーの暗殺未遂事件の史実を描いた秀作映画です。
ヒトラー、暗殺 13分の誤差  シネマの世界<第546話>_a0212807_17315158.jpg映画の原題は、「エルザー」、ヒトラー出現の危険性をいち早く予感した平凡なドイツ市民ゲオルク・エルザー(1903年1月4日生~1945年4月9日ダッハウ強制収容所にて処刑、享年42才)の名前で、一介の家具職人のエルザーがなぜ、ヒトラーを危険人物と考えナチス親衛隊から十重二十重に警護されているヒトラーを無謀にも単独で暗殺しようとしたのか‥映画は、そのことを淡々と描いています。
エルザーは、ドイツとヨーロッパ諸国の衝突(ヒトラーの戦争と虐殺によりヨーロッパ市民5,500百万人が死亡)を阻止することが、ドイツ国民を救うことと信じ、誰にも言わず誰にも知られないよう単独で用意周到にヒトラー暗殺計画を準備し実行した普通のドイツ市民でした。
本来ならエルザーは、戦後の民主国家ドイツの‘英雄’であるはずなのに長い間知る人も少なく、事件から75年ヒトラー、暗殺 13分の誤差  シネマの世界<第546話>_a0212807_17353158.jpg経った2014年になって、ドイツ国家として初めてメルケル首相が、公式にゲオルク・エルザーのヒトラー暗殺未遂事件を「ヒトラーの戦争を阻止しようとしたドイツ国民」として認め評価しました。
独裁者ヒトラーの暗殺未遂事件は、40件以上も存在、ほんの少しでも疑惑が、発覚すれば即死刑となる覚悟と危険を冒し決行された暗殺計画ながら、どれも失敗しています。
このヒトラー暗殺未遂事件の顛末は、イギリスのドキュメンタリー映画監督ジョン・テイラー(1960~)が、2008年ヒトラー、暗殺 13分の誤差  シネマの世界<第546話>_a0212807_17363895.jpgにドキュメンタリー映画「ヒトラーを殺す42の方法」として発表しています。
このドキュメンタリー映画に「21.ゲオルク・エルザー」が、登場しますので現在公開中の映画「ヒトラー、暗殺 13分の誤差」の主人公エルザー(クリスチャン・フリーデル 1979~ 「白いリボン」主演)を重ね合わせて見ると、当時のドイツ社会を覆う閉塞的な雰囲気が、良く理解できると思います。
音楽と自由を愛するエルザーは、1945年4月30日ヒトラー自殺でナチスドイツ第三帝国が、崩壊(消滅)する5年ヒトラー、暗殺 13分の誤差  シネマの世界<第546話>_a0212807_17444972.jpg前の1939年9月1日、ナチスドイツ軍のポーランド侵攻に大変ショックを受け、ナチスの総統ヒトラーは、ドイツ国民を悲惨な戦争に巻き込む危険な人物と予感しました。
ヒトラーは、巧みな演説で社会不安を煽り、アーリア民族(ゲルマン)主義、言論の弾圧、自由の抑圧、ナチスの暴力、ユダヤ人虐殺などファシズムの危険な思想をドイツ全体に蔓延させ「国民の総意(ハイル・ヒトラー)」による戦争に突入させました‥その恐ろしさを「ヒトラー、暗殺 13分の誤差」では、当時の世相を再現しなヒトラー、暗殺 13分の誤差  シネマの世界<第546話>_a0212807_17453987.jpgがら描いています。
映画の骨子は、家具職人のエルザーが、誰にも気付かれないよう首尾一貫して単独で綿密なヒトラー暗殺計画を練り実行するため1939年11月8日ナチス党幹部を集め演説するミュンヘンのビヤホールに精密な時限装置爆弾を仕掛けました。
時限爆弾は、予定時間どおり正確に爆発しましたが、ヒトラーは、当日急きょ予定を変更して13分早くビヤホールを出てミュンヘン駅に向かっていました。
ヒトラー、暗殺 13分の誤差  シネマの世界<第546話>_a0212807_17471035.jpgヒトラーは、一介の家具職人エルザーが、専門家も驚く精巧精密な時限爆弾を独りで作れるはずはない、時限装置の材料、爆弾の質量、ビヤホールで用意周到な準備、そのどれひとつ取っても単独犯の仕業ではない、エルザーの背後にイギリス(のスパイ)がいると疑い、ゲシュタポ長官ヒムラーに何としてもエルザーに自白させよと厳命しました。
ゲシュタポの過酷な拷問を受けてもエルザーは、‘自分一人でやった’と単独犯であると主張しました。
ヒトラー、暗殺 13分の誤差  シネマの世界<第546話>_a0212807_17521415.jpgヒトラーは、なぜ演説を当日13分早く切りあげたのか? なぜヒトラーの暗殺未遂犯が、単独犯ではいけなかったのか? ヒトラーは、なぜエルザーを即刻死刑にしないで5年間もベルリン郊外のダッハウ強制収容所で生かし続けたのか?‥ぜひ映画をご覧になって‘なぜ?’の謎を自分で解いて欲しいと思います。
‘ヒトラーとナチス’をライフワークにしているオリヴァー・ヒルシュビーゲル監督は、‘ヒトラーとナチス’の映画をヒトラー、暗殺 13分の誤差  シネマの世界<第546話>_a0212807_17525036.jpg撮るたびに「ヒトラーのことは、見るもの知るものすべてが、とても不快で嫌悪感を覚える、とても辛い作業である」と述懐しています。
天皇の臣民であった旧日本人もまた70年前の8月15日、連合国に無条件降伏し敗戦するその日まで「天皇陛下バンザイ!」、「鬼畜米英」、「一億総玉砕」と叫び、戦争に異を唱えた国民を「非国民、売国奴」と罵倒し、赤紙一枚で多くの同胞を戦死させていました。
ヒトラー、暗殺 13分の誤差  シネマの世界<第546話>_a0212807_18175874.jpg日本の若者たちが、将来‘いつか来た道’に戻らないよう、ぜひこの映画を一人でも多くの若い人たちに見て欲しいと思います。


ゲオルク・エルザー
ドイツ南西部ヴュルテンベルク出身、1903年1月4日生れ、家具職人
1939年11月8日 ミュンヘンのビヤホールでヒトラー暗殺未遂
1945年4月9日 ダッハウ強制収容所にて処刑、享年42才
1945年4月30日 ヒトラー自殺
by blues_rock | 2015-11-01 00:01 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
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