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心の時空

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伊丹十三監督の異色作「たんぽぽ」  シネマの世界<第537話>

日本映画界で類稀な奇才ぶりを発揮したのが、伊丹十三監督(1933~1997没、享年64才、不審死)です。
警察は、死因を‘飛び降り自殺’と発表しましたが、私は、間違いなく暴力団による暗殺と思っています。
伊丹十三監督の異色作「たんぽぽ」  シネマの世界<第537話>_a0212807_263630.jpg
生前の伊丹監督は、様々な分野に造詣深くマルチな才能を発揮しました。
1984年マルチ才能人の伊丹十三は、「お葬式」で長編映画監督デビュー、その年の映画賞を総ナメにし伊丹十三監督の異色作「たんぽぽ」  シネマの世界<第537話>_a0212807_282536.png大ヒット映画になりました。
翌年の1985年、伊丹監督が、第2作目の作品として発表したのは、異色作「たんぽぽ」という‘ラーメンウエスタン’で、そのユーモア精神とパロディならびにギャグ満載のコメディ映画でした。
イタリア映画のマカロニウエスタンを元ネタに伊丹監督らしいマニヤックな演出で国内外の映画ファンを唸らせましたが、映画興行伊丹十三監督の異色作「たんぽぽ」  シネマの世界<第537話>_a0212807_291041.jpgとしては、成功しませんでした。
しかし、海外の映画ファンには、大好評で、とくにアメリカでは、日本映画としての興行成績が、歴代第2位という大ヒットでした。
この「タンポポ」を見たのが、きっかけで日本に興味を覚え来日する、実際東京でラーメン店を開く外国人もいたくらい大きな海外の反響でした。
アメリカの映画監督ジョン・ファヴロー(1966~ 俳優・プロデューサー)は、「たんぽぽ」からインスピレーションを伊丹十三監督の異色作「たんぽぽ」  シネマの世界<第537話>_a0212807_2114277.jpg得て新作を自主制作し映画「シェフ」を発表しました。
映画の本筋は、街の片隅にある寂れたラーメン屋にふらりと立ち寄ったタンクローリーの運転手(山崎努 1936~)と相棒(渡辺謙 1959~)が、女主人(宮本信子 1945~)を助け街一番のラーメン屋にして立ち去っていくというベタなストーリーながら、本筋と関係なく‘食のエピソード’の伊丹十三監督の異色作「たんぽぽ」  シネマの世界<第537話>_a0212807_2132132.jpgシークエンスを唐突に挿入、その斬新な構成と伊丹監督の自由自在な演出にただ脱帽です。
映画のエピソードをいくつか紹介すると、まず映画冒頭に登場する白服の男(役所広司 1956~)と情婦(黒田福美 1956~)の「食と性」で二人のエロチックなシーンは、口移しで生卵の黄身を崩さず何度もやりとりするカットなどポルノ真っ青なシー伊丹十三監督の異色作「たんぽぽ」  シネマの世界<第537話>_a0212807_214633.jpgンです。
海辺の若い海女(洞口依子 1965~)から買った生牡蠣を食べ、牡蠣殻で切った唇の血をその若い海女が、唇を舐めるようにキスするシーンもエロチックです。
ラーメンの由緒正しい食べ方を教える老人(大友柳太朗 1912~1985)が、登場したり、高級レストランでスパゲッティの食べ方マナーを生徒に講義する先生(岡田茉莉伊丹十三監督の異色作「たんぽぽ」  シネマの世界<第537話>_a0212807_2144371.jpg子 1933~)の傍らでズズズッー、ズズズッーとスパゲッティを啜(すす)って食べる外国人(アンドレ・ルコント 1932~1999、「ルコント」オーナーパティシエ)いたり、顧客接待でフランス語メニューの読めない顧客と上司が、当たり障りのない料理や安いワインを注文するのに、フランス語は、読めるが、空気の読めない新米社員は、高級料理や高級ワインを次々にオーダーするシーンなどゲラゲラ笑えます。
伊丹十三監督の異色作「たんぽぽ」  シネマの世界<第537話>_a0212807_2152556.jpg食の細いラーメン屋の息子にホームレスのシェフが、リストラされたレストランに夜忍び込み本物のオムライス(伊丹監督発案のレシピで現在このオムライスは、日本橋「たいめいけん」の名物メニュー)を作って食べさせるシーン、アイスクリームをじっと見ている自然食だけの子供にタンクローリーの運転手が、自分のアイスクリームをあげるシーン、食品店の柔らかい商品だけ触り回る老婆(原泉 1905~1989)とそ伊丹十三監督の異色作「たんぽぽ」  シネマの世界<第537話>_a0212807_216870.jpgれを見張る店長(津川雅彦 1940~)との追っかけっこ、有名大学教授を装うスリに北京ダックを奢(おご)りニセ投資話で騙そうとする詐欺師のエピソード、幼い子供たちを抱える男が、危篤の妻にどう声をかけて良いか分からずチャーハンを作らせるシーンなど悲喜交々のエピソードが、本筋に13話挿入されます。
伊丹十三監督の異色作「たんぽぽ」  シネマの世界<第537話>_a0212807_2164933.jpg映画のラスト‥クレジットロールの背景に映し出される「授乳」が、人間にとって最初の食事であり、これこそが、食の原点であるという伊丹監督のメッセージと私は、受け取りました。
エキストラと思われる公園で授乳する母親と赤ん坊の名前もちゃんと出演者クレジットにあり、さすが伊丹監督とその細やかな気配りに感心しました。
映画のサウンドトラックにさり気なくリストやマーラーを流す音楽センスもいいですねえ。

by blues_rock | 2015-09-29 02:09 | 映画(シネマの世界) | Comments(5)
Commented by hihararara at 2016-04-04 10:36
はじめまして。
この映画大好きで、今、牡蠣のシーンを伝えたい相手がいて、検索してこのブログにたどりつきました。

この記事だけでも、私の大好きな要素が網羅されていて、何度も読み返したいくらいです。
『タンポポ』を初めて観たのは中学生くらいでしたが、その時も、すごい!と思ったけど、大人になってから、さらには授乳を経験してから観ると、エンドロールの授乳シーンが一層「カンペキ」と思えます。

食と生と性が絡み合う、本当に名作だと思っています。
まとめてくださって、ありがとうございました☆

ありがとうございます!!
Commented by blues_rock at 2016-04-04 12:13
日原いずみ さま
拙文に作家の方から身に余るお褒めの言葉に恐縮、こちらこそありがとうございます。
日原さんのブログ、拝見させていただきました。
私も愛知(名古屋に住まい小牧が職場)に7年間暮らし農業関係の仕事がら中日本各地に出かけていましたので貴ブログに出てくる地名が、とても懐かしく楽しく読ませていただきました。
とくに‘食や農’についての記事は、興味深く拝見、併せて食べ物や料理の写真もすばらしく、また日原さんご自身も料理上手と推察しました。
同時に貴ブログに紹介されているどの店にも行ってみたくなりました。
Commented by hihararara at 2016-04-04 14:19
ありがとうございます!
こっそりコメントするつもりが(コメント記入欄には、自分の名前を書く場所がなかったので)、同じexciteブログのためか、コメント反映と同時に、自動的に自分のブログが表示されました(笑)

また、最初のコメントでは、末尾に、消し忘れた「ありがとうございます!!」が残っていて、文章がおかしくてすみませんでした。

blues_rockさんのお好きな世界、私も重なるようで、例えば、ブログの人気記事となっている、中島みゆきさんや「ジュ・テーム・モワ、ノン・プリュ 」も、私は映画の方ですが、好きです。

私のブログ、読んでいただいたようでありがとうございます。
愛知はいいところですよね!
またいらっしゃることがあれば、教えて?ください。

私も改めて、blues_rockさんのブログ、過去記事なども読ませていただきますね。
これからも、上質な記事を楽しみにしています☆

Commented by ラーメン at 2022-01-24 06:42 x
晩飯後、家族全員でテレビでこの映画鑑賞中、CMの時に親父がすす~と居なくなって、戻ってきたその手には、お湯入れたカップ麺が!「きたねぇ~~ぞ!!」「あなた!晩御飯食べたでしょ!」などの罵詈雑言も、画面の向こうとこっち側で面をすする音がかき消し、次のCM明けには全員でカップ麺すすってましたww。ただ、牡蠣のシーンとか生卵のシーンで、いろんな意味ですする音が消え、お茶の間に静寂が訪れました。
Commented by blues_rock at 2022-01-28 04:06
牡蠣と生卵のシーンは、美しくも生々しい 秀逸なエロチックなシーンですものね、伊丹十三監督の秀でた演出センスを感じます。
この映画は、日本よりもアメリカのほうが、大ヒット、アイアンマンシリーズの監督 ジョン・ファブローは、絶賛、ラーメンをハンバーガーに置き換えて、伊丹監督作品へのオマージュ映画を撮っています。
牡蠣と生卵のシーンは、ありませんけど。
コメント、ありがとうございました。
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