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NO(ノー)  シネマの世界<第487話>

NO(ノー)  シネマの世界<第487話>_a0212807_19353477.jpg2014年夏、日本公開されたチリ・メキシコ・アメリカの合作映画「NO(ノー)」は、新作なのに、なんとも旧いレトロな映像を見ているような感覚になる映画でした。
現在の新作映画は、高度なCG技術(SFX・VFX)を駆使し撮影には、デジタル・カメラを使用、登場人物の毛穴や小皺(コジワ)までくっきり映す映像なので、逆にアナログ時代の8㍉カメラで撮影した映画か、ビデオ映像を見ているようで反って新鮮でした。
チリの新鋭映画監督パブロ・ラライン(1976~ ペドロ・ペイラノと共同脚本、製作にも参加)は、当時撮影されたフッテージ映像(未編集アーカイブ映像)を自作「NO(ノー)」の中に多く使用することから撮影した映像が、フッテージ映像に馴染むようアナログ撮影を行ない、日本製ビンテージカメラで撮影するなど斬新なアイデアで製作しています。
映画のストーリーは、1988年のチリが、舞台です。
1973年、チリ国民の自由選挙で選ばれたアジェンデ大統領(社会主義)政権が、アメリカ(CIA)の支援を受けたNO(ノー)  シネマの世界<第487話>_a0212807_19452713.jpgピノチェト将軍率いる軍事クーデターで崩壊、チリの新しい大統領となったピノチェト将軍の治世下で15年間、軍事独裁政権が、続いていました。
ピノチェト大統領は、政権に反対する国民を徹底して弾圧、とくに社会主義者や民主化運動の活動家を逮捕し投獄、拷問・虐殺していました。
ピノチェト大統領独裁を非難する国際世論の中ピノチェト政権は、世界に向けた政治パフォーマンスとしてピノNO(ノー)  シネマの世界<第487話>_a0212807_1946822.jpgチェト大統領信任を自国民に問う直接選挙(国民投票)を実施することにしました。
ピノチェト政権支持は「yes」、反ピノチェト野党連合支持が「no」と記載する国民投票で選挙キャンペーンの期間は27日間、それぞれ1日15分ずつ国営テレビ深夜放送で政治キャンペーンCM放送することをピノチェト政権は、認めました。
映画は、フリーの広告マン、レネを反ピノチェト野党連合の中心人物でレネとは、家族ぐるみで付き合いのあるNO(ノー)  シネマの世界<第487話>_a0212807_19464247.jpg友人ウルティアが、訪ねて来るところから始まります。
主人公の広告マン、レネをメキシコの俳優ガエル・ガルシア・ベルナル(1978~)が、活き活きと演じています。
ガエル・ガルシア・ベルナルは、メキシコ映画の鬼才アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの長編映画初監督作品「アモーレス・ペロス」で鮮烈なデビューをしました。
ベルナルは、革命家チェ・ゲバラ(こちら参照)を尊敬すると言うだけあって、2004年映画「モーターサイクル・ダNO(ノー)  シネマの世界<第487話>_a0212807_19475882.jpgイアリーズ」などで若き日のチェ・ゲバラを演じると青年チェ・ゲバラもきっとこうだったろうなと想わせる雰囲気をもっています。
広告マンのレネは、最初からピノチェト政権による政治パフォーマンスである国民投票に関心なく乗り気ではありませんでしたが、親しい友人の強い希望なのでシブシブ引受けました。
プロの広告マンとしてレネは、反ピノチェト野党連合の代表者たちを前に「自由投票へ行こう、NO(ノー)に投票を、これでは人は動かない。過去の暗い話なんて誰も見たがらない。」と喝破しますが、教条主義で筋金入りの政治活動家、投獄・拷問の被害者代表たち、家族を虐殺された運動家たちは、レネの斬新なCMに納得しませんでした。
NO(ノー)  シネマの世界<第487話>_a0212807_1949567.jpgレネは、15年間独裁政権に弾圧され抑圧されたチリ国民に、まるで新商品発売CMのような明るい未来、喜び、さらに人生の希望を謳いあげる斬新な言葉やポップな映像により「NO(ノー)」のキャンペーンCMを制作、次第にチリ国民の心をつかんでいきました。
映画のラスト、「NO(ノー)」の得票は、大方の予想に反して過半数を超え奇跡的な反ピノチェト野党連合側の勝利となり、開票速報で歓喜する陣営の中でレネが、「えっ、勝ったの?」と怪訝そうな顔をしてスタッフに質問するNO(ノー)  シネマの世界<第487話>_a0212807_1949397.jpgところで映画は、終わりました。
反ピノチェト野党連合「no」の中心人物でレネの広告を支持する友人ウルティア役にルイス・ニェッコ(1962~ )、ピノチェト政権「yes」の広報責任者でレネに圧力をかける広告会社役員グスマン役をアルフレド・カストロ(プロファイル不詳)が、リアルな渋い演技を披露しています。
1980年代当時のリアルなVTR映像が、要所に使われていますので報道番組の密着ドキュメンタリーを見ているようでリアリティ溢れる面白い映画でした。
by blues_rock | 2015-05-03 00:03 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
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