夏の終り シネマの世界<第428話>
「夏の終り」は、瀬戸内寂聴(1922~)が、瀬戸内晴美(1963~)のペンネームで‘女と男’の赤裸々な性愛小説を発表していた時代、自らの実話(年上の男と年下の男との三角関係)小説を原作に、いつものように熊切組の宇治田隆史(1975~)が、脚本を書き、撮影を近藤龍人(1976~)、音楽をジム・オルーク(1969~ アメリカのロックミュージシャン)が、担うという熊切監督作品4人衆の2013年8月公開映画です。
音楽のジム・オルークは、若松孝二監督の映画に心酔、若松監督の映画に関わりたくて2006年日本に移住し日本語を習得、努力の甲斐あって念願叶い若松監督映画(こちら)の音楽監督になった作曲家です。
さて「夏の終り」は、昭和30年代の初め、主人公の染色家相澤知子(満島ひかり 1985~)が、妻子ある年上の小説家小杉慎吾(小林薫 1951~)との同棲生活8年を軸に、知子が12年前、教師の夫と我が子を捨て駆け落ちした相手、夫の教え子で年下の男木下(綾野剛 1982~「そこのみにて光輝く」)を入れ、 ‘女1人と男2人’ 愛と孤独の三角関係を描いてい
ます。
小杉は、週の半分を小田原の妻子の元で後の半分を東京の知子のところで均等に暮らしていました。
ある日、小杉が、小田原に行った留守の時、別れた木下からの久しぶりの電話に、小杉のいない寂しさもあって「会いにきて欲しい」と誘惑しました。
その日から知子は、小杉が妻子宅に行った留守中、木下と密会し、小杉が戻るといつものように普段の生活をしていました。
知子を愛し嫉妬に身を焼く木下は、小杉と別れるよう知子に迫りますが、彼女は、一途に自分を求める木下を持て余しながらも別れず小杉と木下二人の男から離れられませんでした。
自分の愛が、知子に届かないと知り憔悴した木下は、知子に別れを告げ自殺しました。
純文学の小説家を志す小杉を愛して生活を支えていた知子ですが、ある日小杉から大衆小説の連載を引き受けたこと聞いた知子は、あれほど軽蔑していた仕事をなぜ引き受けたのかと小杉を激しく責めました。
剣劇の真似をして自虐するようにおどけて見せた小杉は、知子の前で「自分の居場所がない」と堰(セキ)を切ったように泣き崩れました。
知子は、小杉が、自分との生活に息苦しさを感じていることを知ると小杉と別れ、人生をやり直そうと決心しました。
知子を演じた満島ひかりの印象が、2010年「川の底からこんにちは」で演じた主人公の佐和子と随分違うので、主演する役柄を