フェイク シネマの世界<第374話>
監督は、イギリスのマイク・ニューウェル(1942~ 2007年「コレラの時代の愛」が私の印象に残る作品)で、特命捜査官による犯罪組織(マフィア)への潜入捜査という映画プロット自体、特別目新しいものはありません。
映画は、実在のFBI潜入捜査官ジョー・ピストーネが、ドニー・ブラスコ(ジョニー・デップ)と名乗り、盗品をさばく宝石鑑定士を装い、6年前マフィアの下部組織に密かに潜入するところから始まります。
ドニーは、マフィア幹部のレフティ(アル・パチーノ)に近づきますが、ドニーの素生を怪しみ、用心しながら手持ちの宝飾品で鑑定の腕試しをしました。
やがてドニーは、レフティから身内として息子のように可愛がられマフィアの一員になっていきます。
レフティ=アル・パチーノとドニー=ジョニー・デップのふたりが、次第に友情を交感していく名シーンの数々は、この映画の見どころです。
昔堅気で要領の悪いレフティは、幹部ながら組織の中で出世できず、ドニーがレフティに流すフロリダの儲け話(FBIがマフィアに撒いたエサ)も、ボスに取り入るレフティの弟分ソニー・ブラック(マイケル・マドセン 1958~)に横取りされました。
ドニーの手腕(情報収集力)を見込んだソニー・ブラックは、ドニーに近づきレフティを無視してドニーに直接指示するようになりました。
それを横目に、見て見ぬふりをするレフティの寂しげで情けなさそうな表情は、さすがアル・パチーノ、うだつの上がらぬ壮年男の哀感があり、実にすばらしい演技です。
FBI捜査官ドニーは、マフィア組織に深く潜入、やがて組織の重要な一員になりました。
犯罪捜査の使命と恩義あるレフティとの友情の狭間で苦悩するドニーの姿をジョニー・デップは、暗く哀しい目の表情で名演しています。
死の危険を常に感じながら、さらに深く組織潜入していくドニー、そのストレスで押しつぶされそうになる彼のイラダチは、数カ月に一度深夜こっそり帰る自宅で妻にも挙動不審(家族の危険を避けるため潜入捜査は極秘)を疑われ爆発しました。
ドニーが、FBIに報告する犯罪証拠の情報をもとに捜査は、ついにマフィア中枢に及びました。
ドニーが、父親のように思い自分に全幅の信頼を寄せるレフティに見せるドニー(ジョニー・デップ)のやり切れない思いを湛えた憂愁あふれる眼差しは、必見です。
マフィアも組織内に‘裏切り者’がいることに気づき、お互い疑心暗鬼となり、レフティもボスから呼び出しを受けました。
レフティは、自宅を出る前、身に付けた金品の一切を外し、長年連れ添った妻の引き出しにそっと入れ、何も知らない妻に「(裏切り者が)お前なら許す」とドニーへ最後のメッセージを頼みました。