バベットの晩餐会(前編) シネマの世界<第254話>
原作者アイザック・ディネーセン(またはイサク・ディネーセン)と聞くと男性のようですが、これは英語で小説を書くときのペンネームでカレン・ブリクセン(1885~1962)が本名です。
カレン・ブリクセンは、デンマークの著名な作家で、小説をデンマーク語で発表する時は、本名をペンネームにしています。
主人公のバベットを演じるのは、フランス人女優ステファーヌ・オードラン(1932~)、私が見たステファーヌ・オードラン出演映画は、「バベットの晩餐会」だけなので、私にとって、いまでは主演女優バベット・ステファーヌ・オランドンとファースト・ネームに‘バベット’が付く女優です。
「バベットの晩餐会」は、アカデミー外国語映画賞を受賞、その他イギリス始め各国の映画祭で作品賞・監督賞・主演女優賞など受賞しました。
映画の時代と舞台は、19世紀後半、デンマークの辺境にある海辺の小さな寒村です。
キリスト教の教義に従い信仰に生きる牧師の老父とその美しい姉妹、牧師の教えに従い清貧に暮らす10人くらいの村人たち全員が信者でした。
美しい姉妹を見染め求愛する二人の若者、一人は、姉に魅かれた軍人(後年将軍になる将校)、もう一人は、妹に魅かれたフランスの高名なオペラ歌手(後年バベットをこの村に亡命させた)が、現れました。
しかし、キリスト教の教義を信じ清貧に禁欲的な暮らしを続ける姉妹は、二人の若者の求愛を受け入れませんでした。
それから長い歳月が過ぎた雨の降る寒い夜、辺鄙な村で暮らす姉妹の家に憔悴し疲れ切った女性バベットが訪ねてきました。
驚く姉妹にバベットは、昔妹に求愛したオペラ歌手からの手紙を渡しました。
手紙には、バベットが貴族の未亡人であること、貴族の夫と子供は、パリ・コミューンで殺され失意のうちに亡命しなければ処刑されること、バベットに身寄りがなく亡命できるところは、姉妹の住む地しかないことが書いてありました。(後編に続く)