汚れなき悪戯(いたずら) シネマの世界<第156話>
ラディスラオ・ヴァホダ監督(原作者ホセ・シルバと共同脚本)の映画「汚れなき悪戯(いたずら)」は、1955年カンヌ国際映画祭で作品賞と特別子役賞を受賞しました。
この特別子役賞を受賞したのが、物語の主人公5才のマルセリーノを演じたパブリート・カルボ6才でした。
まさに、天使のようで無垢な悪戯っ子マルセリーノそのもので、マルセリーノを演じているというより、まだ幼いパブリート・カルボ少年が、そのまま純真で無垢な可愛いマルセリーノでした。
捨て子であったマルセリーノを深い愛情で包み成長を見守る修道士12人一人ひとりの個性豊かな表情も心温まります。
主題歌の「マルセリーノの歌」も映画「汚れなき悪戯」の人気を高めました。
聖マルセリーノ祭を迎えたスペインの小さな寒村が、映画の舞台です。
村の貧しい家に、病気で聖マルセリーノ祭に行けない少女を修道士が見舞い、昔修道院であった奇蹟の物語を少女に話して聞かせました。
聖マルセリーノの日に、修道院に一人の赤ん坊が、捨てられていました。
その赤ん坊は、男の子だったので、マルセリーノと名付けられました。
5才になったマルセリーノは、元気な悪戯っ子で12人の修道士たちを困らせていました。
マルセリーノが、野原で遊んでいる時、偶然出遭った若い農婦に、自分の母親を重ね合わせ、彼女にマヌエルという息子がいると聞き、マヌエルを空想の友だちにして、ひとりぼっちの寂しさを忘れていました。
修道院の2階には、怖い大男がいるので、そこへ絶対行ってはならないとマルセリーノは、修道士たちに言われていました。
しかし悪戯盛りで好奇心旺盛なマルセリーノが、じっといているはずもなく、修道士たちの目を盗んで2階に行くと農具や古い道具が置いてあり一番奥の部屋にキリストの磔刑像を発見しました。
荊(いばら)の冠をつけた十字架の男を見たマルセリーノは、びっくり仰天し逃げ帰りましたが、十字架の男の哀しい顔と痩せた姿は忘れられませんでした。
その日以来、台所からパンとワインを持ち出し2階のキリストに届けました。
キリストは、無言でそれを受け取っていましたが、ある日マルセリーノに「あなたは、私に十分してくれた。これからマルセリーノ・パン・ビーノと呼ぼう。お礼に願いを叶えてあげよう。」と言いました。
マルセリーノは、「天国のママに会いたい。」と答えました。
キリストは、「ここに来なさい。」とマルセリーノを迎えました。
キリストに抱かれたマルセリーノの回りには、眩いばかりの光が、輝いていました。
村の病気の少女に、マルセリーノ・パン・ビーノ奇蹟の物語を話した修道士は、聖マルセリーノ祭の終わった修道院へ帰って行きました。