アモーレス・ペロス(犬のような愛) シネマの世界<第148話 後編>
事故の大ケガでスサナは、片足を切断され、トップモデルの仕事を失いました。
この時から恋人との同居生活にも軋みが生まれました。
ここでもスサナの愛犬が、重要な狂言回しの役どころを演じます。
3組目は、いつも数匹の犬をつれ、メキシコシティの街角でゴミの収集をしている初老の男性エル・チーボは、元大学教授で、若いころ理想に燃えて労働者革命を夢見た社会主義者でした。
メキシコの貧困撲滅と公平な社会正義のために家族(妻と一人娘)を捨て、革命運動に身を投じテロリストとして逮捕され、長い獄中生活を送りました。
刑期を終え釈放された彼は、彼を逮捕した刑事と密かに組んで‘暗殺’を請け負い、遠くから娘を見守りながら、密かに娘の部屋に忍び込みお金を置いて経済的な支援をしていました。
エル・チーボは、依頼された暗殺の仕事に向かう途中、偶然スサナとオクタビオの車の衝突事故に出遭いました。
大破したオクタビオの車を覗き込むと、血に染まった瀕死の犬がいました。
エル・チーボは、血だらけの犬を抱きあげ連れて帰り、彼の介抱でオクタビオの犬は、元気になりました。
だが、オクタビオの犬は、エル・チーボを激怒させる事件を起こしました。
映画全体を通して、犬が重要な役割を演じています。
元大学教授で社会主義革命家であった初老のエル・チーボが、ホームレスのような姿で、ゴミ収集をしながら娘の経済支援のために悪徳刑事と組んで暗殺の仕事をしているという役どころをエミリオ・エチェバリアが、渋くクールに演じています。
初監督作品「アモーレス・ペロス」で大絶賛を受けたイニャリトゥ監督は、ハリウッドからオッファーがあり、撮影監督の盟友ロドリゴ・プリエトと組んで、2003年ショーン・ペン、ナオミ・ワッツ、ベニチオ・デル・トロ主演のアメリカ映画「21グラム」、2010年ハビエル・バルデム主演のメキシコ映画「BIUTIFUL ビューティフル」という秀作映画を発表しました。
(左写真)2004年映画「モーターサイクル・ダイアリーズ」で、若き日の革命家チェ・ゲバラを演じた時のガエル・ガルシア・ベルナル