きっとここが帰る場所 シネマの世界<第131話>
ショーン・ペンは、世界の三大映画祭(ヴェネチア・カンヌ・ベルリン)で主演男優賞を受賞(ヴェネチアでは2度受賞)しており、俳優としても国際的に高い評価を受けています。
2003年公開のクリント・イーストウッド監督作品「ミスティック・リバー」ではアカデミー主演男優賞を受賞しました。
2008年公開映画「ミルク」では、ゲイのサンフランシスコ市議会議員ハーヴェイ・ミルクを好演し二度目のアカデミー主演男優賞を受賞しています。
今まで彼が、主役を演じた40本以上の映画は、どれも質が高く秀作ぞろいです。
さて、ショーン・ペンは、「きっとここが帰る場所」でも人気絶頂にありながらうつ病でダブリン(アイルランド)にある豪邸に引きこもり濃厚な化粧でメイクしたロックミュージシャン、シャイアンを怪演しています。
監督・脚本は、イタリアの若手監督パオロ・ソレンティーノ(1970~42才)です。
シャイアンは、「何かヘンだ。これとは言えないけど‥」と何かにつけて言います。
共演した俳優たちも個性的で、消防士で明るいシャイアンの妻をフランシス・マクドーマンド(1996年「ファーゴ」でアカデミー主演女優賞受賞)、近所に住むシャイアンの友だちで内向的なロック少女メアリーをイヴ・ヒューストン(U2ボノの娘、左写真)、映画のライブ・シーンでデイヴィッド・バーン(元トーキング・ヘッズ)が、歌う映画のタイトルにもなったトーキング・ヘッズの「This must be the place」(きっとここが帰る場所)など見どころも多くあります。
オリジナルの脚本は、味わい深い言葉にあふれ、登場人物の役割を引き立たせます。
撮影の名匠ルカ・ヴィガッツィの流麗な映像にも見応えがありました。
映画のストーリーは、前半のうつ病で引きこもりのロックミュージシャン、シャイアンの不思議な暮らしぶりから一転、30年以上も疎遠になっていたニューヨークで暮らす老父の危篤知らせを受けたシャイアンは、アメリカに向かいますが、父の死に目には会えませんでした。
彼は、何気なく見た亡き父の腕にナチスが、ユダヤ人に付けた強制収容所のタトゥー番号を見つけました。
彼は、自分の父親が、生涯をかけてユダヤ人虐殺者であったナチスの生存者を追跡していたことを知り、シャイアンは、その遺志を受け継いでアメリカ国内の旅を続けます。
このあたりから映画の展開が、がらりと変わり、亡き父のミステリーとシャイアンによる亡父の人生を狂わせたナチス残党捜しは、映画をサスペンスタッチのストーリーにしていきます。(予告編はこちらから)