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心の時空

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ゴモラ  シネマの世界<第74話>

2008年イタリア映画「ゴモラ」の舞台は、イタリアのナポリで、ゴモラとは、旧約聖書の創世記に出てくる古代都市ゴモラのこと、旧約聖書によると古代都市ゴモラは、背徳の罪により神により滅ぼされたそうです。
映画は、ナポリを中心拠点として都市の裏社会を暴力で支配する“カモッラ”と呼ばれるイタリア犯罪組織(闇の企業集団)の暗部を赤裸々に描いています。
ゴモラ  シネマの世界<第74話>_a0212807_021165.jpgカモッラとは、シチリアを支配するマフィアと同じ暴力犯罪組織ですが、イタリア南部では、マフィアをしのぐ支配力と経済力を持っていました。
庶民の暮らしにも深く入り込み、各種業界・各市場との取引業者・商店などからテラ銭を徴収し、密輸・麻薬売買・産業廃棄物の不法処理・海外不動産取引など非合法な活動で利益(不正な金)を独占してきました。
映画「ゴモラ」では、カモッラ組織の掟と敵対する組織・裏切り者へのり容赦のない殺戮をリアルに描き、第一級の社会派映画と思います。
監督のマツテオ・ガローネ(1968~)は、イタリア映画界気鋭の若手映画監督です。
まだ44才の若さながらイタリア映画伝統のネオレアリズモ美学を継承し、そのドライな演出と感情移入しないクールな映像に、ハリウッドの名匠マーティン・スコセッシ監督や俳優で若手監督のベン・アフレック(2011年映画「ザ・タウン))などが、最大級の賛辞を贈りました。
映画「ゴモラ」は、2008年カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞しました。
映画は、カモッラをめぐる5つの物語で構成され、ストーリーの展開は同時並行に進行していきます。
ゴモラ  シネマの世界<第74話>_a0212807_0252577.jpgEU企業から排出され処分に困る毒性の高い産業廃棄物を不法投棄するカモッラ系ゴミ回収処理会社の幹部を演じるトニー・セルヴィッロの存在感がすばらしく、私の目を惹きました。
トニー・セルヴィッロは、「湖のほとりで」で生活にくたびれた初老の刑事役を見事に演じていました。
さらに2010年映画「穏やかな暮らし」では、若いころカモッラの殺し屋だった男が、組織を抜け地下に潜伏しドイツへ逃亡、名前も変え結婚し子供と三人幸せに暮らしているところにイタリアの青年2人が、突然現れました。
この「穏やかな暮らし」は、「ゴモラ」の続編と見ることもできます。
ゴモラ  シネマの世界<第74話>_a0212807_0254682.jpg映画「ゴモラ」には、カモッラに憧れる殺人の手引きをする少年、自己顕示のため組織を裏切ったためカモッラの仕掛けたワナで惨殺される二人の青年、カモッラに無断で中国人蛇頭の経営する仕立て工場に高級ドレス縫製技術を教えたために中国人たちもろとも処刑される仕立て職人などが登場‥どれも失業と貧困が引き起こすリアルな物語なので、現イタリアの経済不況と不安定な社会現象をドキュメンタリーで見ているような映画でした。
近未来の日本でも今の閉塞した社会状況が続き、さらに経済と失業が悪化すれば、市民社会システム(行政・警察・金融など)を丸ごと呑みこんだ犯罪企業グループ(チンピラあがりの旧い暴力団ではムリ)が台頭してくるかもしれません、くわばら、くわばら。
by blues_rock | 2012-07-26 00:32 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
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