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心の時空

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a day in my life

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「バベル」は、メキシコの映画監督アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ(1963~)原案・製作・監督(共同原案、脚本ギジェルモ・アリアガ 1958~ イニャリトゥ監督作品常連)の2007年日本公開映画です。
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イニャリトゥ監督の「バベル」は、カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞、東京を舞台にしたシーンで母親を自殺で亡くした聾唖(ろうあ)の娘千恵子を演じた菊地凛子(1981~ 手話・フルヌードなど心的外傷を抱えた女子高生千恵子役を熱演)が、米映画批評会議賞新人女優賞を受賞、その演技は、高く評価されました。
a0212807_123321.jpg撮影は、メキシコの撮影監督ロドリゴ・プリエト(1965~)、音楽監督をアルジェンチンのミュージシャン、グスターボ・サンタオラヤ(1952~ 「バベル」でアカデミー賞作曲賞受賞)、この二人もまたイニャリトゥ監督作品の常連で、監督・脚本・撮影・音楽と才能ある四人が、担っているわけですから映画は、面白いに決まっています。
映画は、一丁の狩猟用ライフル銃を道具(軸)にして、アメリカ(サンディエゴ)、メキシコ(ティフアナ)、モロッコa0212807_127035.jpg(荒涼とした過疎地)、日本(東京)とまったく違う場所で唐突に始まる物語が、登場する人物たちの時間軸を交差させながら次第にそれぞれ繋がりながら展開していきます。
タイトルの「バベル」は、旧約聖書(創世記)にある‘バベルの塔’の原罪‥神が、天に届くバベルの塔を築こうという人間の傲慢(驕り)に対し、罰として「世界の人々に別々の言葉を話させるようにした」という逸話を背景に、世界各地で「言葉が通じない」、「心が通じない」ためにa0212807_127394.jpg起きる人間たちの苦悩と不幸を描いています。
アメリカ(サンディエゴ)では、メキシコの不法移民でベビーシッターのアメリア(アドリアナ・バラッザ 1956~)が、メキシコ(ティフアナ)で行なう息子の結婚式に出席するため外交旅行中の主人から預かる幼い兄妹(妹役のエル・ファニング 1998~が良い、出演時8才、「アイアムサム」のとき3才、稀有な天才子役)を連れて甥のサンティアゴ(ガエル・ガルシア・ベルナル 1978~)の運転する車でメキシコに向かいました。
モロッコ(荒涼とした過疎地)では、遊牧民の兄弟、正直な兄アーメッド少年(サイード・タルカーニ)と要領のいいa0212807_1282748.jpg弟ユシフ少年(ブブケ・アイト・エル・カイド)が、羊を狙うジャッカル退治のため父親から狩猟用ライフル銃を持たされました。
弟のユシフが、崖の上から面白半分に下の山道を走るバスの運転手を狙い撃ったところバスの乗客であったモロッコ旅行中のアメリカ人リチャード(ブラッド・ピット 1963~)とスーザン(ケイト・ブランシェット 1969~)夫婦の妻スーザンに命中、出血多量で瀕死の重体となり、近くの寂れた寒村に運ばれました。
観光バスを狙ったテロリストの犯行とするアメリカ政府と地元警察が現在捜査中とするモロッコ政府の外交問題となり、苦しむスーザンを必死で看護するリチャードを尻目に対立、要請している救急ヘリコプターの到着が、遅a0212807_1291987.jpgれリチャードを苛立たせました。
狙撃に使われた狩猟用ライフル銃が、以前モロッコに狩猟に来た日本人ハンター綿谷(役所広司 1956~)のものであったことで物語の展開は、日本(東京)に移ります。
綿谷は、娘の千恵子(菊地凛子)と二人暮しながら心に抱える妻の死(娘には母の死)の苦悩を分かち合えない不器用な父娘関係に悩んでいました。
女子高生の千恵子もまた孤独感に苛まれ、街で友だちと遊んでいても聾唖(ろうあ)である疎外感から苛立ち、自虐するかのような性的露出行為(上写真:隣りの席にいる少年たちを見据え挑発するように平然とスカートをめa0212807_1295011.jpgくり、ノーパンの下半身をさらすシーンはエロティックにして秀逸)をしていました。
刑事の真宮(二階堂智1966~)が、父綿谷を訪ねて来た時、千恵子は、真宮に一目惚れ、片想いの恋をしました。
千恵子は、刑事の真宮が、再び父綿谷を訪ねマンションに来たとき、父親は、不在ながら室内に招き入れ、リビングで待つ真宮の前に一糸まとわぬ全裸(菊地凛子のヌードが美しい)で現われ彼に抱きつきました。
映画4つの物語は、ラストで重なり悲喜交々の結末を迎えますが、イニャリトゥ監督は、映画に登場するそれぞれ家族の行く末を見る者の想像に委ねて映画を終えました。
by blues_rock | 2015-05-11 00:01 | 映画(シネマの世界) | Comments(1)
イギリスの若手名優ベネディクト・カンバーバッチ(1976~ 私は2006年映画「アメイジング・グレイス」を見て注目、2011年「裏切りのサーカス」出演、2014年「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」主演など)が、アメリカ政府始め世界中の政府を震撼させた内部告発サイト“ウィキリークス (WikiLeaks) ”の主宰者
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ジュリアン・アサンジ( 1971~ オーストラリア国籍ながら居住地不定)を熱演しています。
映画の撮影前にジュリアン・アサンジ本人から主演するベネディクト・カンバーバッチに「映画への出演を考え直してほしい。」と要請があったとのこと‥アサンジは、名優カンバーバッチが、自分そっくりになることを予感して
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いたのかもしれません。 (上写真:左 ジュリアン・アサンジ本人、右 主演のベネディクト・カンバーバッチ)
映画のタイトル「フィフス・エステート」(Fifth Estate 第五集団)とa0212807_4471684.pngは、内部告発サイト“ウィキリークス”・百科事典サイト“ウィキペディア”・検索エンジンサイト“グーグル”などインターネット・サイト界のこと、ちなみに「」(Fourth Estate 第四集団)は、言論・出版・放送メディアなどジャーナリズム界のことを意味しています。
「フィフス・エステート 世界から狙われた男」は、2013年映画ながら日本では、‘ビデオ・オン・デマンド(VOD 有料動画配信サービス)’で配信上映されただけ‥現在、世界で最も注目を浴びている「内部告発サイト“ウィキリークス”とその主宰者ジュリアン・アサンジ」の実態と実像に迫った鮮度の高い映画なのに劇場公開しないなんて、あーっ何ともったいないことをするわが国の配給会社と映画館でしょう。
劇場公開すれば、この映画プロット(内部告発サイト“ウィキリークス ”と主宰者ジュリアン・アサンジの実態と実像)とキャスト(主演イギリスの若手名優ベネディクト・カンバーバッチ、共演スペインの若手名優ダニエル・ブリュール 1978~、さらにドイツの若手名優モーリッツ・ブライプトロイ 1971~、アメリカの名女優ローラ・リニー 1964~など錚々たる顔ぶれ)ならヒットすること間違いありません。
監督のビル・コンドン(1955~ )は、脚本家出身(「シカゴ」の脚本担当)なので映画の見せ方が、なかなか上手く、アサンジは英雄なのか?それとも反逆者なのか?と映画を見る者に問いかけてきます。
ウィキリークスは、軍レベルの暗号化技術をもち、内部告発として手に入れたアメリカ政府ほか各国政府の最高a0212807_4483693.jpg機密文書をすべて未編集のまま全公開、中国政府が必死に検閲しても手に負えない盤石のネットワークを有する巨大組織であるかのように世界中の人びとから想われていました。
それは、ITの天才ジュリアン・アサンジが、インターネット・サイト上で、そう「見せかけていた」だけで当初は、相棒のダニエル(ダニエル・ブリュール)とサーバー1台だけの内部告発サイトでした。
ウィキリークス(ジュリアンとダニエル)が、密かに入手した内部告発情報(極秘データ)をそのままインターネット上に公開するや大騒ぎとなりました。
a0212807_4491845.jpg内部告発サイト、ウィキリークスへの賛否両論、同サイトへの激しい攻撃と強い支援(バックアップ・サポート)が、交錯しながらウィキリークスが、当初の目的を果たし機能し続けるには、政府や軍などにとって都合の悪い機密情報を内部告発する協力者の保護が、絶対の条件となります。
膨大な内部告発の機密情報が、集積するようになったウィキリークスは、そのデータを世界中に拡散した無数のサーバーで管理するようになりますが、データ分析に多大な時間を必要とするようになりました。
a0212807_4512023.jpgその膨大な告発情報(極秘データ)の分析と正否の精査に長い時間がかかり、即時公開できないことにイラ立つ主宰者ジュリアンは、「ウィキリークスのポリシーは、未編集のまま公開することだ。」と主張、一方「内部告発者の身に危険が及ぶ行為は、絶対避けるべきだ」と反論する盟友のダニエルと激しく対立するようになりました。
社会正義と反権力のために内部告発者の犠牲など当然と考えるカルト教団の教祖のように独善的になっていくウィキリークス主宰者にしてITの天才ジュリアン・アサンジをベネディクト・カンバーバッチが、本人と同期したかのように、そっくりに演じています。
by blues_rock | 2015-05-09 00:09 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
五月連休最後の日が立夏にあたり、日ごろ出不精の私ながら新緑に誘われてドライブに出かけました。
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まず出遭ったのが、マンションのエレベーター扉に留まる貴婦人(レディ)のような白い蛾でした。
清楚なレディは、羽化したばかりなのか、飛べないので、ツツジの生け垣の上にそっと放してやりました。
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今宿青木の「花野季(かのき)」で昼食を摂り九大学研都市のイオンモールでコーヒータイム、その後国道202号線徳永交差点からすぐの「玄洋窯」へ‥ギャラリーで陶の器を手に取り眺めていると無性に欲しくなります。
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どれも未練断ち難く、それでもじっと我慢、今日購入するのは、この花器一点だけにしました。
家に着くとさっそく野の花(母子草と雪の下)を活けてみました。(‥So happy !)
by blues_rock | 2015-05-07 00:01 | 柏原生活/博多叙景 | Comments(0)
a0212807_20372480.jpg2011年日本公開されたアメリカ映画「キッズ・オールライト」は、これから日本社会の私たちのまわりでも顕在化していくと思われるゲイ・カップル(夫妻という言葉は馴染まない)とその子供(ドナー精子による人工授精で妊娠出産)にまつわる家族崩壊の危機と成長を描いています。
映画は、ゲイの聖地サンフランシスコ市を舞台にそこに住むゲイ・カップル(レズビアン)と同じ男性から精子提供を受けた子供二人(異母姉弟)の家族を中心に、幸せだった家族四人の前に現われた精子ドナー男性との悲喜交々の物語です。
監督(脚本)は、ゲイ(レズビアン)をカミングアウト(公表)しているアメリカの女性映画監督リサ・チョロデンコ(1964~)で、彼女自身も精子提供を受け出産していますので映画には、自分の人生体験も反映されていると推察します。
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ちなみに、彼女の実生活パートナーは、ロックミュージシャン、プリンスのバンド、レボリューションの女性ギタリスト、ウェンディ・メルヴォワン(1964~)だとか、チョロデンコ監督が、自作「キッズ・オールライト」に込めたメッセージは、見る人に‘家族になること’と‘個のセクシュアリティ’が、別の問題であり、これからの社会において‘普通a0212807_20425913.jpgの家族など存在しない’ということです。
さて、映画は、コメディアスな一風変わったファミリードラマながら一方で映画を見る人に「家族とは、何ですか? あなたの家族は‘普通の家族’ですか?」と問いかけるシリアスなヒューマンドラマでもありました。
映画の主人公は、ニック(アネット・ベニング 1958~)とジュールス(ジュリアン・ムーア 1960~)のゲイ・カップルa0212807_20435148.jpg(レズビアン夫婦)、ニック(家族の父親的役割)が、精子提供を受けて産んだ18才の娘ジョニ(ミア・ワシコウスカ 1989~)とジュールス(家族の母親的役割)が、精子提供を受けて産んだ15才の息子レイザー(ジョシュ・ハッチャーソン 1992~)の家族四人です。
ある日、姉ジョニと弟ジュールスは、好奇心から精子バンクを通して二人の母親に精子提供したドナーの男性(バイオロジカル・アァーザー=生物学的な父親)に会いに行き、平穏で幸福な家族四人の中に少しずつトラブルが、a0212807_2046117.jpg起き始めました。
精子提供者ポール(マーク・ラファロ 1967~)は、19才のとき献血より精子提供のほうがお金になる(1回60㌦のアルバイト感覚)ため精子バンクに登録、ニックとジュールスは、その精子提供による人工授精を受け、それぞれ出産したのが、娘のジョニと息子レイザーでした。
車の中でレイザーが、自分の生物学的な父親であるポールに精子提供の経緯についてストレートに質問するa0212807_2056065.png会話は、映画を見ていて思わず吹き出してしまいました。
ゲイ・カップルの母親を演じる名女優二人アネット・ベニングとジュリアン・ムーアの自然な同性愛(レズビアン)が、秀逸でした。
無農薬農園と有機野菜のシャレたレストランを経営している独身四十男ポールの愛人を演じたトップモデル出身のアフリカ系アメリカ人女優ヤヤ・ダコスタ (1982~)もなかなか魅力的でした。
by blues_rock | 2015-05-06 00:06 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
玄洋窯元の冨永氏から修理(漆繕い)を依頼された‘粉引ぐい呑み’です。
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ロクロで形成したぐい呑みを素焼きせず、そのまま粉引釉をずぶがけして焼成した作品で、口縁部の釉薬剥離と内側にタテ2本、外側にタテ1本の短いヒビがありました。
a0212807_20161825.jpg焼成時の窯傷なのでそのまま粉引のぐい呑みとして使えますが、釉薬剥離の広がりを止めるためとタテのヒビ1本は、水の滲みが、懸念されるためサビ漆で補修しベンガラ色漆継ぎにしました。
玄洋窯を訪ねたとき、ヨコに1本のヒビ(窯傷)とタテに2本のニュウのある白い湯呑茶碗(もちろん非売品)が、目に入りました。
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手の収まりと意匠(カタチ)が、良いので無理を言って分けてもらいました。
ヨコヒビの深い箇所にサビ漆を、2本のニュウには、陶芸用カッターナイフで少し切り込みを入れ生正味漆を流し
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最後は、ベンガラ漆で仕上げました。
割れた「五弁輪花大鉢」の修理を依頼されました。
a0212807_204085.jpg割れた破片(パーツ)をまず生漆で継ぎ欠損しているところにパテとサビ漆を入れて復元、次に呂漆を塗り、乾燥と水砥ぎを繰り返しながら整え、最後に輪花大鉢の雰囲気を壊さないようベンガラ漆で仕上げました。




(参考記事)ベンガラ色漆継ぎ‥銘「粗相」ベンガラ色漆継ぎ‥伊羅保ぐい呑み
by blues_rock | 2015-05-04 00:04 | 金継ぎ/古美術/漆芸 | Comments(0)
a0212807_19353477.jpg2014年夏、日本公開されたチリ・メキシコ・アメリカの合作映画「NO(ノー)」は、新作なのに、なんとも旧いレトロな映像を見ているような感覚になる映画でした。
現在の新作映画は、高度なCG技術(SFX・VFX)を駆使し撮影には、デジタル・カメラを使用、登場人物の毛穴や小皺(コジワ)までくっきり映す映像なので、逆にアナログ時代の8㍉カメラで撮影した映画か、ビデオ映像を見ているようで反って新鮮でした。
チリの新鋭映画監督パブロ・ラライン(1976~ ペドロ・ペイラノと共同脚本、製作にも参加)は、当時撮影されたフッテージ映像(未編集アーカイブ映像)を自作「NO(ノー)」の中に多く使用することから撮影した映像が、フッテージ映像に馴染むようアナログ撮影を行ない、日本製ビンテージカメラで撮影するなど斬新なアイデアで製作しています。
映画のストーリーは、1988年のチリが、舞台です。
1973年、チリ国民の自由選挙で選ばれたアジェンデ大統領(社会主義)政権が、アメリカ(CIA)の支援を受けたa0212807_19452713.jpgピノチェト将軍率いる軍事クーデターで崩壊、チリの新しい大統領となったピノチェト将軍の治世下で15年間、軍事独裁政権が、続いていました。
ピノチェト大統領は、政権に反対する国民を徹底して弾圧、とくに社会主義者や民主化運動の活動家を逮捕し投獄、拷問・虐殺していました。
ピノチェト大統領独裁を非難する国際世論の中ピノチェト政権は、世界に向けた政治パフォーマンスとしてピノa0212807_1946822.jpgチェト大統領信任を自国民に問う直接選挙(国民投票)を実施することにしました。
ピノチェト政権支持は「yes」、反ピノチェト野党連合支持が「no」と記載する国民投票で選挙キャンペーンの期間は27日間、それぞれ1日15分ずつ国営テレビ深夜放送で政治キャンペーンCM放送することをピノチェト政権は、認めました。
映画は、フリーの広告マン、レネを反ピノチェト野党連合の中心人物でレネとは、家族ぐるみで付き合いのあるa0212807_19464247.jpg友人ウルティアが、訪ねて来るところから始まります。
主人公の広告マン、レネをメキシコの俳優ガエル・ガルシア・ベルナル(1978~)が、活き活きと演じています。
ガエル・ガルシア・ベルナルは、メキシコ映画の鬼才アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの長編映画初監督作品「アモーレス・ペロス」で鮮烈なデビューをしました。
ベルナルは、革命家チェ・ゲバラ(こちら参照)を尊敬すると言うだけあって、2004年映画「モーターサイクル・ダa0212807_19475882.jpgイアリーズ」などで若き日のチェ・ゲバラを演じると青年チェ・ゲバラもきっとこうだったろうなと想わせる雰囲気をもっています。
広告マンのレネは、最初からピノチェト政権による政治パフォーマンスである国民投票に関心なく乗り気ではありませんでしたが、親しい友人の強い希望なのでシブシブ引受けました。
プロの広告マンとしてレネは、反ピノチェト野党連合の代表者たちを前に「自由投票へ行こう、NO(ノー)に投票を、これでは人は動かない。過去の暗い話なんて誰も見たがらない。」と喝破しますが、教条主義で筋金入りの政治活動家、投獄・拷問の被害者代表たち、家族を虐殺された運動家たちは、レネの斬新なCMに納得しませんでした。
a0212807_1949567.jpgレネは、15年間独裁政権に弾圧され抑圧されたチリ国民に、まるで新商品発売CMのような明るい未来、喜び、さらに人生の希望を謳いあげる斬新な言葉やポップな映像により「NO(ノー)」のキャンペーンCMを制作、次第にチリ国民の心をつかんでいきました。
映画のラスト、「NO(ノー)」の得票は、大方の予想に反して過半数を超え奇跡的な反ピノチェト野党連合側の勝利となり、開票速報で歓喜する陣営の中でレネが、「えっ、勝ったの?」と怪訝そうな顔をしてスタッフに質問するa0212807_1949397.jpgところで映画は、終わりました。
反ピノチェト野党連合「no」の中心人物でレネの広告を支持する友人ウルティア役にルイス・ニェッコ(1962~ )、ピノチェト政権「yes」の広報責任者でレネに圧力をかける広告会社役員グスマン役をアルフレド・カストロ(プロファイル不詳)が、リアルな渋い演技を披露しています。
1980年代当時のリアルなVTR映像が、要所に使われていますので報道番組の密着ドキュメンタリーを見ているようでリアリティ溢れる面白い映画でした。
by blues_rock | 2015-05-03 00:03 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
私の好きなフランスの若手女優レア・セドゥー(1985~)と個性的な俳優タハール・ラヒム(1981~)が、共演している2013年のフランス映画なので二人の演技コラボレーションを期待して見ました。
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映画のタイトル「グランドセントラル(Grand central)」を‘中央駅’と早合点、フランス映画のエスプリを効かせたシャレたロマンス映画と思いきや、タイトルの‘Grand central(中央駅)’は、 ‘Grande centrale(大型発電所=原子力発電所)’に引っかけたタイトルであることが、映画を見始めて気付きました。
a0212807_2105741.jpgこの映画の監督・脚本、レベッカ・ズロトヴスキ(1980~)は、フランスの若手女性監督で2010年、レア・セドゥを主演に「美しき棘」を撮っています。
ズロトヴスキ監督の「グランドセントラル」は、若い男女のロマンスもながら原子力発電所の保守点検を行なうと必然的に少量ながら被ばくする‘線量(放射能濃度)’というリスクを負いながら原子力発電所施設で働く下請け作業員たちの姿を描いています。
a0212807_2195899.jpg作業員の一人新入りのギャリー(タハール・ラヒム、2009年「預言者」、2013年「ある過去の行方」)と現場監督(作業員)の愛人キャロル(レア・セドゥ 2013年「アデル、ブルーは熱い色」)との人目を避けた恋(密会)をシリアスに描いています。
ベテラン原発下請け作業員の苦悩をリアルに演じるベルギーの俳優オリヴィエ・グルメ(1963~)の演技も光りa0212807_2204764.jpgました。
被ばく線量(放射能濃度)が、上限を超えると即刻解雇なのでウソの報告(実際は上限の30倍)を続けるギャリー、自分も原発の施設内で働き放射能の恐怖と被ばく不安に怯えるキャロル、ズロトヴスキ監督は、脚本を書いているとき東日本大震災による福島の原発事故を知ったそうで劇中にチェリノブイリに加えてフクシマという言葉が、出ていることに対し、私は、原子力に素人ながら‘フクシマとチェリノブイリの原発事故は同じもa0212807_221219.jpgの?’と少し気になりました。
映画の撮影は、稼働している原子力発電所で行なえるはずもなく、ズロトヴスキ監督は、どこで撮影したのだろうとプロダンションデザインを調べてみたら、ウィーン郊外の使われていない原発で撮影したと書かれていました。
さらにリアリティを持たせるため原発での撮影に際しては、保守点検作業の技術アドバイザーとして元原発作業の専門家に参加してもらい演技指導してもらったそうです。
a0212807_2234822.jpg「グランドセントラル」は、カンヌ国際映画祭「ある視点賞」を受賞しました。
映画に原発賛成・反対のメッセージはありませんが、原発で儲ける投資家・資本家、原発の安い電気料金でメリットを享受する大勢の消費者、その陰で被ばくの危険に曝され働く下請け作業員たち、もし安全基準の被ばく線量の上限を超えたら失業するリスクを抱えながら原発で働く人たちの知られざる実態をリアルに描いたシリアスな社会派映画でした。
(付録:私個人の提言として「原子力発電所‥もっと皆なで考えよう」と題し2012年9月1日から5日まで5話シリーズで書きましたのでご参考に貼付いたします。)
by blues_rock | 2015-05-01 01:55 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)