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心の時空

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a day in my life

<   2015年 05月 ( 17 )   > この月の画像一覧

日本映画の監督として世界で最も有名なのが、黒澤明監督(1918~ 「羅生門」はこちら」)です。
a0212807_117445.jpg名匠黒澤明監督については、映画評論や人物評伝など多くの出版物が、ありますので詳しくは、そちらをご覧いただくとして今夜は、私の個人的な‘黒澤明の世界’を書きたいと思います。
私は、黒澤監督の全作品30本をすべて見たわけではなく、目隠しして巨象の一部を撫でて、象のすべてが、分かったような一端(ぱし)のことを言うつもりは毛頭ありません。
黒澤明監督作品には、おもしろい映画が、たくさんありますので、‘この1本’を選ぶことはできません。
a0212807_128320.jpg先に述べましたとおり、私の個人的な好みから云えば、黒澤明監督の魅力が、一番良く現われているのは、1950年「羅生門」、1954年「七人の侍」、1961年「用心棒」、1962年「椿三十郎」と思います。
黒澤明監督の映画製作チームは、黒澤監督が求める完璧な映画づくりのため常連メンバーで構成され“黒澤組”と呼ばれていました。  (上写真:「七人の侍」、豪雨の中での戦闘シーンを入念に打ち合わせる黒澤監督、左端)
黒澤監督は、脚本に必ず加わり常連の脚本家菊島隆三(1914-1989)や橋本忍(1918)他と自分の原案(プロットa0212807_1292326.jpgやアイデア)を伝えながら共同で書き、さらに自分の絵コンテ(撮影イメージやカットの下絵)で常連の撮影監督中井朝一(1901~1988)、宮川一夫(1908~1999)、斎藤 孝雄(1929~2014)他に伝え、セットから大道具・小道具、美術衣裳(プロダンション・デザイン)、照明、音楽などスタッフ全員に完璧を求めました。
主演俳優は、言うに及ばず、撮影シーンに登場する共演者、通行人などのエキストラたち全員にも妥協しない演出を行ない、出演者全員の演技が、ごく自然に見えるまで徹底してリハーサルを行ないました。
さらに黒澤監督は、撮影に数台のカメラを同時に回し、ワンカット・ワンシーン(長回し)にすることで出演者、製作スタッフの緊張感を高め、黒澤映画独特(ワン・アンド・オンリー)の迫力あるリアルな映像を生みだしました。
a0212807_1322240.jpgそれは、「七人の侍」で撮り直しのできないシーン(騎馬野武士と百姓集団との戦いや豪雨の中の合戦など)があり、当時映画用のフィルムは、高価だったにも関わらず、黒澤監督の指示で同時に複数のカメラを回し、同じシーンを撮影したことから始まりました。
主演俳優始め出演者も常連の名優揃いで黒澤映画と云えば、何と言っても三船敏郎(1920~1997、16本に出a0212807_1333261.jpg演=主演)、さらに志村喬(1905~1982、21本に出演、1952年「生きる」、「七人の侍」の演技は秀逸)と仲代達矢(1932~、「七人の侍」でエキストラ出演、その後黒澤監督に見込まれ三船敏郎と共演、三船敏郎のあと主演1985年「乱」まで出演)という類稀なる名優三人の存在が、欠かせません。
1951年「羅生門」のヴェネチア国際映画祭金獅子賞(グランプリ)から始まりアカデミー外国語映画賞、カンヌ・ベルリン・モスクワ国際映画祭で受賞、「世界のクロサワ」として名を馳せました。
a0212807_1343295.jpg海外の映画監督には、黒澤明監督を尊敬し黒澤映画に大きな影響を受け現在に至る名監督たち、サム・ペキンパー(1925~1984)、アンドレイ・タルコフスキー(1932~1986)、フランシス・フォード・コッポラ(1939~ 下写真中央)、クリント・イーストウッド(1930~)、マーティン・スコセッシ(1942~)、ジョージ・ルーカス(1944~ 下写真右)、ジョン・ミリアス(1944~)、スティーヴン・スピルバーグ(1946~)、ロン・ハワード(1954~)など錚々たる顔ぶれで名匠と称される監督たちが、ずらり並びます。
a0212807_135235.jpgわが国では、日本を代表するアニメーション映画監督宮﨑駿(1941~)や、黒澤明監督のもとで長年助監督を担い、2000年「雨あがる」で監督デビューした小泉堯史(1944~)なども黒澤映画の影響を受けています。
余談ながら、1964年映画「荒野の用心棒」(イタリアの映画監督セルジオ・レオーネが 黒澤明監督映画「用心棒」をイタリア製西部劇マカロニ・ウェスタンとしてリメイクし世界的に大ヒット、エンニオ・モリコーネの音楽も良かった)に主演し一躍大スターとなったクリント・イーストウッド監督a0212807_1353310.jpgは、「クロサワは、自分の映画人生の原点だ。」とコメントしています。
私は、黒澤明監督の信念であった「一生懸命に作ったものは、一生懸命見てもらえる。」という映画へのコダワリ(妥協を許さない完璧主義)こそが、世代を超え今に続く「世界のクロサワ」の遺伝子(黒澤映画のDNA)であると思います。
by blues_rock | 2015-05-30 00:00 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
イギリスの異才トッド・ヘインズ監督(1961~ 「ベルベット・ゴールドマイン」)が、2007年映画「アイム・ノット・ゼア」(監督・原案・脚本)で、6人の俳優に多種多様な‘ボブ・ディラン’を演じさせるという奇想天外な秀作映画をa0212807_1936821.jpg撮りました。
ヘインズ監督の脳内には、名前も年齢も人種さえも違うボブ・ディランが、存在するようで、言うなれば映画「アイム・ノット・ゼア」は、鬼才トッド・ヘインズ監督と天才ボブ・ディランのコラボレーションが、創り上げた芸術作品と云っても良いでしょう。
「アイム・ノット・ゼア」は、ヴェネツィア国際映画祭で審査員特別賞を受賞、6人のボブ・ディランのうち1人を演じたケイト・ブランシェット(1969~)が、女優賞を受賞しました。
男性のボブ・ディランを演じて女優賞受賞とは‥ヴェネツィア国際映画祭の審査委員たちも粋でシャレたことをするものだといたく感激、確かに‘ロックミュージシャン、ボブ・ディラン’を演じたケイト・ブランシェットが、1970年代のボブ・ディランそっくりですばらしい演技力に感心しました。
a0212807_19365627.jpg映画は、6人のボブ・ディランが、シンクロナイズされて登場、映像もカラーとモノクロ(白黒)を使い分け、最初に登場するウディ•ガスリーと名のり放浪する黒人少年のボブ・ディラン(マーカス・カール・フランクリン 1993~)と最後に登場する山中で隠遁生活を送る中年ビリー・ザ・キッドのボブ・ディラン(リチャード・ギア 1949~)の2人が、カラー映像で、モノクロ映像は、反体制詩人アルチュール・ランa0212807_19434452.jpgボーのボブ・ディラン(ベン・ウィショー 1980~)が、映画の語り部となり、社会派フォーク(プロテスト・ソング)シンガーのボブ・ディラン(クリスチャン・ベール 1974~)、映画俳優のボブ・ティラン(ヒース・レジャー 1979~2008、この映画に出演した翌年2008年、服薬事故で死亡)の4人です。
女優陣では、映画俳優ボブ・ディランの妻役でシャルロット・ゲンズブール(1971~)と、若いころボブ・ディランのa0212807_19471220.jpg恋人であったフォークシンガー、ジョーン・バエズ役をジュリアン・ムーア(1960~)が、さすがと感じるリアルな演技で名女優ぶりを発揮しています。
ロックミュージシャン、ボブ・ディランのガールフレンド役でミシェル・ウィリアムズ(1980~)も出演していました。
映画の裏方ながら‘縁の下の力持ち’と云うべき役割で6人のボブ・ディラン、撮影現場でそれぞれの時代背景をa0212807_19481888.pngセッティングした女性プロダクションデザイナー、ジュディ・ベッカー(プロファィル詳細不明、彼女がプロダクションデザインした主な映画は2005年「ブローバック・マウンテン」、2011年「シェイム」、2012年「世界にひとつのプレイブック」、2013年「アメリカン・ハッスル」など、どれも秀作)の才能も光りました。
a0212807_19514616.jpgワンカットながらビートルズ(演じるはそっくりさん俳優)も登場、しばらく庭でボブ・ディランとじゃれ合い遊んだあと別れるときジョン・レノンが、ボブ・ディランに日本語で「サヨナラ」というシーンにヘインズ監督脚色の粋を感じました。
a0212807_19535791.jpgボブ・ディラン(1941~)本人が、出演した映画と云えば、1973年の西部劇「ビリー・ザ・キッド/21才の生涯」(原題 Pat Garrett and Billy the Kid、サム・ペキンパー監督作品)で、当時32才ボブ・ディランは、ビリー・ザ・キッド(クリス・クリストファーソン 1936~)の友人エリアス役で出演しています。
ビリー・ザ・キッドの恋人マリア役でリタ・クーリッジ(1945~)も出演していました。
a0212807_2011499.jpgボブ・ディランは、出演と併せ音楽(サウンド・トラックがアルバム「ビリー・ザ・キッド」となる)も担当、中でも劇中に流れる「天国への扉」(Knockin' on Heaven's Door)は、名曲で今でも多くのロックミュージシャンにカヴァーされ歌い継がれています。
参考:ドイツの映画監督トーマス・ヤーンが、32才のとき「天国への扉」にインスパイアーされて撮ったドイツ映画「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」(こちら)も斬新な映画です。
by blues_rock | 2015-05-28 00:00 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
平成27年8月31日(月)~9月6日(日)、アクロス福岡(福岡市中央区天神1丁目1-1)2階のギャラリー「匠(たくみ)」で‘金継ぎ工芸会’の10周年記念作品展を開催いたします。
a0212807_6363997.jpg本格的な金継ぎ作品を中心に銀継ぎ、呼び継ぎ、梨子地などの技法で制作された作品150~200点を展示予定です。
‘百聞は一見にしかず’と申します、ぜひお近くで金継ぎ、銀継ぎ、呼び継ぎ、梨子地作品の美しさに触れて楽しんでいただければ光栄です。
また、平成27年8月31日(月)から1週間(7日間)の期間中、毎日14時から15時まで金継ぎ講師による実演を行いますので興味のある方は、ぜひ会場へお出かけください。
(余談)まだ3カ月先のことですが、私の心境は、「あと3か月、皆様方に見ていただいて、恥ずかしくない作品(10点くらいを出品予定)を早く仕上げなければ‥」と暫し作業の手を休め、外の景色(写真:ベランダから東油山山麓を望む)を眺め、やや焦り気味の今日この頃です。
by blues_rock | 2015-05-26 00:06 | 柏原生活/博多叙景 | Comments(0)
a0212807_19195342.jpgイタリアのトリエステでイレーナは、金細工商を営むアダケル家の家政婦になるために手段を選ばない常軌を逸した行動をとります。
アダケル家の家政婦になると不在の多い両親に代わり一人娘のテアに強い愛情(溺愛と厳しい躾け)を抱くようになります。
ここからイレーナの過去が、フラッシュバック(サブミナル・フラッシュ映像)で少しずつ明らかにされていきます。
映画は、トルナトーレ監督の「人間愛」が、胸に迫る感動的なシーン(必見)で終わります。
もう一つは、サイコミステリー映画「時の重なる女」です。
イタリアの映像クリエーター(ビデオ・クリップ・CMフィルム撮影ディレクター)で、新鋭映画監督ジュゼッペ・カポトンディ(1968~)が、2009年に長編映画を初監督した作品です。a0212807_19203922.jpg
ホテルの清掃員として働くスロバキア移民のソニア(クセニア・ラパポルト)は、人目を惹く美人ながら言い寄る男たちの誘いを避け、会員制お見合いパーティに出かけていました。
そこでソニアは、元刑事で警備員グイド(フィリッポ・ティーミ 1974~)と知り合います。
彼は、郊外の広大な森のある大邸宅(別荘)でセキュリティ警備員をしていました。
a0212807_1921353.jpgある日ソニアは、チェックアウトの済んだ客室を掃除するため室内に入るとまだ若い女性が、部屋にいました。
彼女は、ソニアに掃除するよう伝え「あなたは、髪を下しているほうが似合う。」と一言告げるとホテルの窓から投身自殺しました。
この事件からソニアの意識の中に現実と非現実が、混在するようになります。
自分の関わった事件すらも現実か、それとも夢の中の出来事か、区別できなくなり過去と現在が、交錯するようa0212807_19445649.jpgになりました。
映画には、ミステリーの伏線と云うべきナゾ解きのディテールが、至るところに散りばめられていますのでポイントだけ書きたいと思います。
ちなみに、これは、ナゾ解きのヒントではなく、しっかり覚醒して見ていないとミステリーの筋立てが、きっと分からないだろうと推察するからです。
ソニアが、グイドの招きで彼の警備する大邸宅を訪れたとき、押し入った強盗団にグイドは、銃で撃たれ流れ弾a0212807_19455034.jpgが、頭にあたり重傷を負ったソニアの幻覚(記憶障害)と記憶を交錯させナゾめいた展開となるよう脚色したカポトンディ監督の演出は、最後まで緊張感がありました。
ポイントは、「男性にもてるソニアが、なぜ合コンのようなお見合いパーティに行ったのか?」、「ソニアもグイドも行ったことのないブエノスアイレスでの二人の写真」、「ソニアが、大邸宅を訪ねた日、強盗団は、グイドが、大邸宅の森の警備セキュリティを解除することとどうして知っていたのか?」、「強盗団のボスは、大邸宅にあるドガの絵が、ソニアの好きなドガの絵であるとa0212807_19471755.jpgなぜ知っているのか?」‥などソニアの時間もまた現実と非現実が、重なり合いながら展開していきます。
映画のラスト、すべてに気づいたグイドが、空港ロビーでほんの一瞬ソニアと視線を合わせそして無言で立ち去るシーンは、名作映画「カサブランカ」のリック(ハンフリー・ボガード)に似て、男のダンディズムを感じました。
この映画でソニアを演じたクセニア・ラパポルトは、ヴェネツィア国際映画祭女優賞を受賞しました。
by blues_rock | 2015-05-24 00:04 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
a0212807_1834361.jpgロシア(サンクトペテルブルク市)の女優クセニア・ラパポルト(1974~)は、2006年イタリア映画「題名のない子守唄」(「La sconosciuta」意味‘よそ者’)の主演女優として名匠ジュゼッペ・トルナトーレ監督(1956~ 「ニュー・シネマ・パラダイス」、「鑑定士と顔のない依頼人」など数多くの名作映画を監督)に見出されました。
クセニア・ラパポルトが、主演した「題名のない子守唄」は、サスペンス・ミステリー映画で、その美しい顔立ちと姿態に加え、彼女の演じる主人公の精神状況や感情表現など名女優と云っていいすばらしい演技力を披露しています。 (下写真:クセニア・ラパポルトに演技指導するジュゼッペ・トルナトーレ監督)
a0212807_18404126.jpg私が、お薦めするのは、そのイタリア映画「題名のない子守唄」と同じくイタリア映画「時の重なる女」(2009年、原題「La Doppia Ora」意味‘二重の時間’)の2作です。
この二つのサスペンス・ミステリー映画に主演したクセニア・ラパポルトは、イタリアで開催される著名な二つの映画祭で主演女優賞を受賞しています。
a0212807_18421539.jpgイタリアの地方都市トリエステを舞台にサスペンスあふれるミステリーが、展開していく映画「題名のない子守唄」は、ジュゼッペ・トルナトーレ監督(と脚本)のメガホンで、主人公の家政婦イレーナをクセニア・ラパポルトが、演じています。
ウクライナでジョルジアと呼ばれていたイレーナは、5年前ある目的をもってイタリア、トリエステに移民しました。
a0212807_18474298.jpgそこで何かにとり憑かれたようにミステリアスで不可解な行動をする謎の家政婦イレーナ‥人生に絶望するような複雑な過去をもつイレーナの心理描写は、むずかしく、何よりトルナトーレ監督のイメージにマッチする女優が、ヨーロッパ内では見つかりませんでした。
トルナトーレ監督は、イレーナのキャスティング・オーディションをロシアまで広げ、やっとサンクトペテルブルクでa0212807_18482214.jpgミステリアスな謎の家政婦イレーナのイメージに合う当時まだ無名の女優クセニア・ラパポルトを発見しました。
クセニア・ラパポルトが、主演した「題名のない子守唄」の演技は、高く評価されイタリア映画の最高賞ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞(イタリア映画のアカデミー賞)主演女優賞を受賞しました。
「題名のない子守唄」は、音楽(サウンドトラック)もすばらしくトルナトーレ監督作品の常連で盟友の作曲家エンニオ・a0212807_18485754.jpgモリコーネ(1928~)の旋律が、映画の主旋律(メロディライン)であるトルナトーレ監督の演出と見事なハーモニーを醸し出しミステリアスな映画を作りました。
映画は、サスペンス・ミステリーなのでストーリーに触れずポイントだけをご紹介します。
映画は、まずウクライナの裏社会に蔓延(はびこ)る過激な性風俗(売春や人身売買)の現場を映しながら、顔a0212807_1853848.jpgに仮面を着け横一列に並ばされた全裸の女たちを壁の向こうからのぞく男の目を映します。
並んだ仮面の女たちから選ばれたのは、ジョルジア(後のイレーナ)でした。
このエロティクなオーディションは、映画の核心に繋がりますので省略いたします。
私が、怒り心頭なのは、下品にして愚劣な日本の映倫が、クセニア・ラパポルトの下半身にボカシを入れ、彼女の美しい身体をメチャクチャ(台無し)にしていたことです。(後編に続きます。)
by blues_rock | 2015-05-23 00:03 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
a0212807_19425537.jpg久しぶりに「猟人日記」(2005年作品、原題「ヤング・アダム」)を見ました。
映画の冒頭から見る者の気持ちを不穏にさせる音楽が、静かに流れ、川面を泳ぐ白鳥と川底に散乱した廃棄物を映していたカメラは、水中から波に揺られて水面を漂う若い女の水死体を捉えます。
「猟人日記」は、見るたびに映画のディテール‥脚本・演出・演技・撮影・音楽は、言うに及ばず、ラインプロダクション・編集などに新しい発見があり、新鮮な感動を覚える傑作映画です。
原作は、スコットランド、グラスゴー出身のビートニク(ニューヨークで生まれたアナーキーでアンチモラルの芸術運動)作家アレグザンダー・トロッキ(1925~1984)によるエロティック(発刊当時ポルノ扱い)にしてサスペンスタッチのミステリー小説「ヤング・アダム」です。
a0212807_19441442.jpg監督と脚本は、同郷の映画監督デヴィッド・マッケンジー(1966~ )、音楽のデヴィッド・バーン(1952~ ニューウェイブ・ロックバンド「トーキングヘッズ」、「きっと ここが帰る場所」の音楽)もスコットランド出身、主演もスコットランドの俳優ユワン・マグレガー(1971~ 「ベルベット・ゴールドマイン」・「ステイ」・2010年「ゴーストライター」など主演)で彼は、自らを‘スコットランド人’と云い、さらに共演のピーター・ミュラン(1959~ 2013年「ビトレイヤー」出演)もスコットランド出身の俳優a0212807_19445957.jpgですからスコットランドを舞台にした映画「猟人日記」は、スコットランド人によるスコットランド映画と云って良いでしょう。
スコットランドのクライド川をグラスゴーからエジンバラまで往来する平底荷船(バージ)に住込み労働者として作家志望の青年ジョー(ユワン・マグレガー)は、人の良い船主レズリー(ピーター・ミュラン)に雇われていました。
a0212807_19465668.jpgある日の朝、ジョーとレズリーは、クライド川に浮かぶ半裸の若い女性の死体を発見しました。
その日からジョーは、船主レズリーの妻エラ(ティルダ・スウィントン 1960~ 2014年「グランド・ブダペスト・ホテル」マダムD役で出演)に激しい欲情を抱くようになり、エラを積極的に誘惑しました。
a0212807_19523051.jpgエラは、ジョーの誘惑に最初戸惑いながらも、狭いバージでの閉塞した暮らしの倦怠感と欲求不満でジョーを受け入れ、夫レズリーの目を盗んでバージの中でセックスするようになりました。
エラを演じるイギリスの女優ティルダ・スウィントンが、実にすばらしく‥エラのモラルが、性欲に屈する瞬間のエロティックな表情、性フェロモン溢れる表情を演じれるティルダ・スウィントンa0212807_201465.jpgは、名女優の一人と思います。
映画は、若い女性の水死体を巡ってミステリアスに展開、さらにポルノっぽいシーン(R18指定)も交え、ジョーの回想をカットバックさせながら誰も知らない彼の過去が、陰鬱なタッチで描かれていきます。
ジョーにとって出遭った女たちとのセックスは、人生の倦怠から免れるため、性欲処理のため、虚無的な彼にa0212807_2021086.jpgとって生きることは、人生に何も求めないことでした。
ジョーと同棲するキャッシーを演じるイギリスの女優エミリー・モーティマー(1971~ 「ラースと、その彼女」)が、重要な役どころで好演しています。
イギリスBBCの映像カメラマンであった撮影監督ジャイルズ・ナットジェンズ(1961~)が、撮影した‘沈鬱な色調’の映像は、1940年代のスコットランド、グラスゴーの保守的で貧しく、ストイックな暮らしの中で蠢(うごめ)く欲求不満の女たちが、心理的に抱える欲情を妖しくリアルに表現しており、この映画「猟人日記」を名作にした貢献度は、大きいと思います。
by blues_rock | 2015-05-21 00:01 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
私は、普段からよく映画を見ますので友人や知人から時々「何かオモシロイ映画ない?」と質問されます。
映画の好みは、人によって千差万別なので、まず好みのジャンルを聞いてから①監督・②脚本・③俳優の順で
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紹介するようにしています。
総合芸術の映画は、監督・脚本・俳優のほか、撮影・音楽・美術(プロダクション・デザイン)・衣装・編集など注目すべa0212807_8455117.jpgきところが、いくつもあるものの、まず「監督・脚本・俳優」の3つに絞ってチョイスすれば、‘見て損した’と思うことはないでしょう。
今夜の「シネマの世界」は、いつもと少し趣向を変え、先日見た「ザ・バッグマン 闇を運ぶ男」をもとに、この映画と同じジャンル(クライム・サスペンス・スリラー)で良く似たプロットの‥例えば1987年の「エンゼル・ハート」、2011年の「クーリエ 過去を運ぶ男」なa0212807_8483460.jpgどと比較しながら私の基本としている「監督・脚本・俳優」について持論を述べたいと思います。
私が、2014年アメリカ映画「ザ・バッグマン 闇を運ぶ男」(The Bag Man)を見たのは、ジョン・キューザック(1966~)とロバート・デ・ニーロ(1943~)という名優2人の初共演が、見られるからでした。
a0212807_84995.jpgというわけで、今回私は、③俳優を最優先し、次に②脚本(クライム・サスペンス・スリラー)、そして①監督(監督については何も知らない)の順で選びました。
「エンゼル・ハート」や「クーリエ 過去を運ぶ男」と比較して見ていただくと映画に必要な「監督・脚本・俳優」の重要さをご理解いただけると思います。
a0212807_8495111.jpgさて、「ザ・バッグマン 闇を運ぶ男」は、筋立て(脚本)としてまずまずながら、凄腕のプロの殺し屋(ジョン・キューザックに殺し屋は似合わない)が、婚約者を何者かに殺されてから殺し屋としてのヤル気をなくし、元締め(ボス役ロバート・デ・ニーロの変幻自在な演技はさすが)は、彼の再起を図るため「バッグの中は絶対見るな」と厳命し、黒いボストンバッグをa0212807_8503333.jpg500㌔離れたモーテル(このモーテルのプロダクション・デザインが安直でした)まで運ぶよう指示しました。
これに娼婦然としたナゾの女(レベッカ・ダ・コスタ 1984~ ブラジル出身のトツプモデルで女優、背高足長の八頭身美人)が、絡んできます。
本作は、監督デヴィッド・グロヴィック(プロファィル不詳、製作総指揮・脚本)の監督デビュー作品で、少し力み過ぎたのか、演出の粗(アラ)さが目立ち
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クライムサスペンス映画なのに緊張感に欠け、スリラーの恐怖感もありませんでした。
グロヴィック監督の次回作に期待したいと思いますが、②脚本と③俳優は、すばらしくても、①監督の演出によa0212807_8583835.jpgり映画の出来が、決まる分かりやすい例として「ザ・バッグマン 闇を運ぶ男」を取りあげました。(念のため申し添えますがつまらない映画と言っているわけではありません。)
「監督・脚本・俳優」の三位一体でサイコミステリーとホラーが、見事に融合した「エンゼル・ハート」の予断できない不気味さ、「クーリエ 過去を運ぶ男」
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(ハニ・アブ・アサド監督 1961~ パレスチナ出身でオランダの映画監督)のミステリーとサスペンスが、重なりながら展開する筋立てとテンポ良いアクションで一気に見せる演出テクニック、この2本の映画と「ザ・バッグマン 闇を
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運ぶ男」を見比べてくだされば、私の述べる「映画は、監督・脚本・俳優で決まる」の意味をご理解いただけるのではないかと思います。
by blues_rock | 2015-05-19 00:09 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
a0212807_1015318.jpgブルースハープ奏者の友人(元同僚)が、大橋のライブハウスZOEでギグをすると云うので出かけました。
彼の名は、保土ヶ谷スリム(芸名)です。
1991年私がいた名古屋の職場に新人として着任、部署は違いましたがブルース好きということで仲良くなりました。
a0212807_14445772.jpg名古屋のライブハウスで初めて彼のブルースハープを聴いてから早いもので24年、福岡や東京のライブハウスで彼のブルースハープを聴いて来ました。
久しぶりにZOEで聴き、コツコツと精進しているだけあって一段と円熟していました。
私は、ブルース、R&B、ブギウギ、もちろんR&R、HRHMも‥心に響く音楽、気持ちをハッピィにさせる音楽が好きです。
                         (上写真:ブルースハープの名演奏家 リトル・ウォルター)
by blues_rock | 2015-05-17 10:00 | 柏原生活/博多叙景 | Comments(0)
玄洋窯の花器を購入(こちら下段の写真)した日の帰り道、車を運転していて、もう一つ、どうしても私の頭から離れない無釉焼き締めの‘四角の花器’が、ありました。
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家に帰り着くとすぐ購入予約して取り措いていただきました。
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玄洋窯の陶器は、すべてロクロで創られた作品です。
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この‘四角の花器’もしかり、ロクロで形成した陶土(つち)を板で四角に叩き形を整え、鞘(さや)に収め、回りに
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いろいろな発色用材を詰めて窯に入れ1280度という高温で17時間焼成すると四角五面に用材が、化学変化
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(炭化つまり強還元)して「緋色・桟切(さんぎり)・焦げ(こげ)」の文様を描きます。
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その神秘的な景色から銘を「アンドロメダ銀河」(地球のある天の川銀河の隣りにある銀河)と名付けました。
by blues_rock | 2015-05-15 00:05 | 金継ぎ/古美術/漆芸 | Comments(0)
2012年イタリア映画「眠れる美女」(原題 Bella Addormentata 直訳)は、子供向けディズニー・アニメ映画のようなタイトルながら巨匠マルコ・ベロッキオ監督(1939~)が、2009年イタリアで現実にあった尊厳死(脳死患者の安楽死)事件をもとに「人間の尊厳(生と死)」についてリアリズムに徹した演出によりシリアスに描きました。
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イタリア、ミラノで交通事故に遭った当時21歳の女性エルアーナは、入院先の病院が、施した延命装置により17年間植物状態で生き続けていました。
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エルアーナの両親は、脳死して眠り続ける娘エルアーナの姿を見るに耐えかねて裁判所に延命の停止を訴えて勝訴、この司法判断により、ついにエルアーナの延命装置が、外されるまでの社会現象を描いています。
a0212807_21223874.jpgイタリア議会は、エルアーナ延命続行法案を強行採決しようとする政権与党と野党が、世論を巻きこみ激しく対立、イタリア社会は、エルアーナの尊厳死に対する宗教論争で国内が対立、騒然としていました。
映画は、この騒ぎと並行し‘人間の尊厳と生きる意味’を問う三篇のストーリーが、同時に展開していきます。
a0212807_4302176.jpg妻の延命装置を止め看取った与党議員ウリアーノ(トニ・セルヴィッロ 1959~ 「湖のほとりで」、「イル・ディーヴォ 魔王と呼ばれた男」)と母親の延命装置を止めた父親に反感を持つ娘マリア(アルバ・ロルヴァケル 1979~ 「やがて来たる者へ」)親子の対立、次にエルアーナに重ね合わせ自宅ベッドの延命装置に繋がれ昏睡している娘ローザの眼覚め(回復)を願い、すべて(家族でa0212807_21301897.jpgある夫や息子二人の愛)を捨て信仰(神の奇跡)にすがる元大女優(イザベル・ユペール 1953~ 「愛・アマチュア」、「愛、アムール」)の狂乱、自殺願望もつ人生に絶望した女ロッサ(マヤ・サンサ 1975~ 「最初の人間」、「やがて来たる者へ」)を献身的に救おうとする医師パリッド(ピェール・ジョルジュ・ベロッキオ 1974~ マルコ・ベロッキオ監督の息子)の三つの物語が、交互に描かれて行きます。
a0212807_432157.jpg巨匠マルコ・ベロッキオ監督の演出に併せ、実力ある名優・名女優たちのアドリブと推察される演技は、この映画にドキュメンタリーのようなリアリズム(臨場感と説得力)を与えています。
見応えのあるイタリア映画でした、
by blues_rock | 2015-05-13 00:13 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)