ブログトップ | ログイン

心の時空

yansue.exblog.jp

a day in my life

カテゴリ:映画(シネマの世界)( 762 )

フランスの名匠ジャック・オーディアール監督(1952~)の最新作(2015年)「ディーパンの闘い」は、カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した傑作映画です。
a0212807_1184886.jpg
オーディアール監督の作品で強く印象に残っているのが、2009年カンヌでグランプリを受賞した「預言者」で、当時まだ無名俳優であったタハール・ラヒム(1981~)を主人公に抜擢、彼の才能を引き出しタハール・ラヒムを将a0212807_1192495.jpg来性のあるフランス若手俳優として有名にした演出の上手さ(それに応えたタハール・ラヒムも見事)にあります。
「ディーパンの闘い」で主人公のディーパンを演じたアントニーターサン・ジェスターサン(1967~)は、実際フランスに亡命したスリランカ内戦の元兵士で、劇中のディーパンと同じような厳しい悲惨な現実を体験しています。
いま彼は、フランスで作家として活動、映画初出演ながら彼の存在と演技が、あまり自然なのでドキュメンタリーa0212807_1213579.pngのようなリアリティを感じました。
映画は、スリランカ内戦の闘士ディーパンが、戦いに敗れ難民としてフランスに亡命するためとっさにニセ家族を偽装するところから始まります。
ニセの妻ヤリニを演じるカレアスワリ・スリニバサン(女優じゃないためプロファイル不明)とニセの娘イラヤル役のカラウタヤニ・ビナシタンビ(同じくプロファイル不明)の二人もまた演技経験が、なく映画初出演ながら自然なリアリa0212807_1225835.jpgティある演技を披露しています。
強制送還を逃れるためニセ家族を続けながらパリ郊外のスラムのような団地に暮らしディーパンは、団地の管理人になり、ヤリニも団地に住む老人の訪問介護の仕事を手にしますが、団地に屯(たむ)する麻薬密売グループの抗争に二人は、巻き込まれてしまいました。
a0212807_124577.jpg移民問題に揺れる荒んだフランス社会をバックにニセ家族ながら今日を生き抜くためにお互い助け合い、そして次第に家族のようになりながら明日に希望を託す人たちを描いた優れた人間ドラマでした。
オーディアール監督の作品は、これまでも人種・宗教・移民の問題を映画のモチーフ(プロット)にしています。
a0212807_1282100.jpg弱者(弱い立場の人間)が、不条理かつ劣悪な環境の中で追い詰められ理不尽な暴力と抑圧に晒されるとき爆発する怒り(人間の本能、動物的な衝動)は、オーディアール監督演出の真髄のようで「ディーパンの闘い」でも普段は、穏やかで我慢強い管理人のディーパンが、団地内で縦横無尽に我がもの顔に振る舞い銃を乱射し住民を怯えさせる麻薬密売グループに独りで戦いa0212807_1293842.jpgを挑む最後のシークエンスは、「タクシードライバー」のようで必見です。
オーディアール監督は、ラストシーンをロンドンで幸せに暮らすディーパンと妻ヤリニ、娘のイラヤル、そして新しく誕生した赤ん坊の4人家族を映しますが、見る者は、リアル(本当)なのか、ディーパン家族のファンタジー(願い)なのか分からないまま映画を終わらせます。
a0212807_1301938.jpg余談ながら、多民族国家フランス社会の多様性は、映画にもしばしば取り上げられ、異民族(異人種)・異宗教・異文化が、混在する社会で起きる事件を「ディーパンの闘い」のようにシリアスに描くかと思えば、2011年映画「最強のふたり」や2014年映画「最高の花婿」(Qu'est-ce qu'on a fait au Bon Dieu ? 神様、私たち何かしましたか?)のようにユーモラスかつコミカルに描きa0212807_1314040.jpgフランス国内外で多くの映画ファンに支持されています。
「最高の花婿」(フィリップ・ドゥ・ショーブロン監督 1965~)は、敬虔なカトリック教徒の両親と4人の娘たち、その4人の愛娘たちが、選んだそれぞれのパートナー(3人の夫と1人の婚約者)は、ユダヤ人でありアラブ人さらに中国人、そして末娘が、クリスマスの日、家族に紹介したのは、コート・ジボアール人の若者でした。
a0212807_133333.jpg保守的で頑固なフランス人の父親と同様にアフリカ民族の誇りとコート・ジボアールの生活習慣を頑なに守るアフリカ人の父親二人のぶつかり合いとドタバタ模様もユーモラスで笑えます。
「最高の花婿」は、異文化激突の騒動を描いた抱腹絶倒のコメディ映画でフランス国内の映画観客動員数が、歴代第6位の1.300万人強だとか、今年2017年のフランス大統領選挙は、フランスの ‘移民(難民)排斥’ が、最大の争点で多種多様な民族(人種)・宗教・文化との共生(折り合い)は、極めて身近な問題なのです。
オーディアール監督の配偶者もアフリカ系の女性だとか、インタヴューで共同生活のコツを訊ねられて「相手に‘慣れる’こと」と答えた監督の聡明さが、光ります。
by blues_rock | 2017-01-07 01:07 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
私は、「エクス・マキナ」の完成度の高さに魅了され、立て続けに 3回見ました。
初回は、SF映画「エクス・マキナ」を楽しみながら、2回目が、ガイノイド キョウコを演じる映画初出演の日系イギ
a0212807_11261080.png
リス人美女ソノヤ・ミズノに注目して、3回目は、もう一度ガーランド監督の演出によりアリシア・ヴィキャンデルが、演じるエヴァのデリケートな表情をしっかり見ました。
a0212807_11265519.jpg映画のラスト、意思をもったガイノイド2体(AIのエヴァとキョウコ)が、自分たちの創造主ネイサンへ反抗するシークエンス、さらにエンディングで、カメラは、舗道に映るエヴァの影を映し、次のショットで、ショーウインドゥに映る雑踏の中のエヴァの姿を捉えますが、このシーン(ショット)の演出とカメラワークは、見事です。
a0212807_11273982.jpgガーランド監督は、ガイノイド エヴァのイメージをブランクーシの彫刻(「眠れるミューズ」と推察)から得たそうで美しく、さらにエヴァの繊細な動作(動きに合わせた微かなロボット音も効果的)と映画のプロダクション・デザインも秀悦、映画全体の視覚芸術的な映像にも感動しました。
a0212807_11293855.jpg「エクス・マキナ」は、芸術的・哲学的なばかりではなく、前述しましたとおり、サスペンス・スリラーSF映画としての娯楽性も高く、何度見てもおもしろい傑作映画です。
少し長くなりますが、ネタバレしないように見どころを述べると研究施設内の徹底した監視カメラ網の中でときどき起きるなぞの停電(ネイサンは自家発電システムの不具合 a0212807_11302554.jpgと説明)、エヴァは、ケイレブに「ネイサンは、嘘つきなので、彼の言うことを信じてはいけない。」と停電でカメラが、止まっているときに耳打ちします。
停電は、電力を管理している自分が、仕組んだものでネイサンの監視を逃れ、二人で話をしたいからとエヴァは、ケイレブを誘惑するような態度を見せ始め、二人で外の世界に行きたいと言いました。
a0212807_11332451.pngケイレブは、エヴァの言動が、ネイサンによる自分を試すプログラムではないのかと疑いました。
ネイサンは、これを一蹴しガイノイドのエヴァに誘惑されそうになったケイレブの精神の弱さを痛烈に批判しました。
さらに、ネイサンは、停電の影響を受けない監視カメラで撮影していたことも告げました。
a0212807_1140827.jpgエヴァの優秀なAI能力を確信したネイサンは、エヴァが、集積した能力を次のガイノイドに書き換え(移し)、より革新的な究極のガイノイドを完成させたらエヴァを初期化する(廃棄する)とケイレブに伝えました。
ここから映画は、佳境に入り、美しい映像にシンクロした不穏を煽るような電子音楽もすばらしく、 7つの構成にした映画が、ゾクゾクさせる緊張感を維持しエンディングに至ります。 (上写真 : アレックス・ガーランド監督と演技を確認するエヴァ役のアリシア・ヴィキャンデル)
by blues_rock | 2017-01-05 00:05 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
人間の頭脳を超えるAI(人工頭脳)の登場に近年、チェスや囲碁・将棋の天才たちも苦戦しています。
2001年宇宙の旅」や「鉄腕アトム」の世界が、空想の夢物語から遠くない近未来に出現するという予感も強ち
a0212807_20181223.jpg
妄想ではない現実に私たちは、いま直面しています。
AIに魅せられたイギリスの小説家、脚本家アレックス・ガーランド(1970~)が、自分の脚本を自ら監督し長編映a0212807_20185449.png画にデビューした初監督作品「エクス・マキナ」(2016年6月日本公開)を見てもそう思いました。
この映画のタイトル「エクス・マキナ( Ex Machina )」とは、ラテン語で「機械じかけの」という意味だそうで‥映画は、「エヴァ・エクス・マキナ( Ava Ex Machina )」つまり ‘機械じかけのエヴァ’ の物語です。
主人公(ヒロイン)は、エヴァという ‘ガイノイド’ (アンドロイドは一般的に男性AIを意味する)で、AIながら人間そっくりなエヴァの能力をチューリング・テスト(AIの知能と感性のテスト)をするためにa0212807_20253282.jpg世界最大のインターネット会社CEOが、選んだのは、自社の検索エンジンを管理する青年プログラマーでした。
映画に登場する主要人物(メイン・キャスト)は、ガイノイドのエヴァを演じるスウェーデンの女優アリシア・ヴィキャンデル(1988~ 「リリーのすべて」の女流画家ゲルダ役でアカデミー賞助演女優賞受賞、「ジェイソン・ボーン」では、a0212807_20263065.jpgCIAの情報分析官ヘザーを名演)、エヴァのチューリング・テストを行なうプログラマーのケイレブを演じるのが、アイルランドの俳優ドーナル・グリーソン(1983~ 2010年映画「トゥルー・グリット」以来出演作品多い)、そして、世界最大の検索エンジン「ブルーブック」(Googleのようなイメージ)の創設者(CEO)にして‘ガイノイド’研究家(エヴァの製作者)であり天才プログラマー a0212807_3103972.jpgネイサンにグアテマラ出身の俳優オスカー・アイザック(1979~ 2013年映画「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」主演)、さらにネイサンの身の回りを世話するガイノイドのキョウコを演じるのは、日系イギリス人バレリーナでトップモデルのソノヤ・ミズノ(1988~ 映画初出演、セリフのない役柄ながらオリエンタルな美貌と美しいヌードそしてダンスシーンが印象的)、この4人a0212807_311913.jpg(2人と2体かな?)のスリル満点の心理劇でもあります。
その4人が、人里からヘリコプターで2時間以上もかかる北半球山岳地帯の奥地(ノルウェーの北西フィヨルド山岳地帯で撮影)にあるネイサンの地下邸宅(実は彼の極秘AI研究所)で、4人それぞれ相互に絡み、関わり合いながら‘虚々実々のドラマ’を展開していきます。
a0212807_3114093.jpg撮影は、アメリカの名撮影監督ロブ・ハーディ(1971~)で、長編映画初監督のガーランド監督との相性も抜群、AIと人間との近未来を描いたサスペンス・スリラーSF映画「エクス・マキナ」が、ハリウッド製SF超大作の数本をしのいでアカデミー賞視覚効果賞を受賞したのも頷けます。(後編に続く)
by blues_rock | 2017-01-03 00:03 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
a0212807_0272597.jpg2016年日本公開のノルウェー映画「ハロルドが笑うその日まで」は、ノルウェー版ロード・ムービ―で、監督(脚本)のグンナル・ビケネ(1966~)が、人間社会に向けるシニカルな視線と映画に登場する人物を見つめるヒューマンな眼差しは、相反するようにも思えますが、ビケネ監督は、映画に登場する人たちすべてに共通する人生のペーソスをウィットに富んだ会話とユーモアあふれる演出で見せてくれます。
映画の主人公、初老の家具店主ハロルド(ノルウェーの名優ビョルン・スンクェスト 1948~)は、品質重視で伝統的なノルウェー家具職人でした。
a0212807_0282499.jpg自分の店(工房)の前に隣国スウェーデンの世界的家具小売チェーン店「イケア」が、開店したことによりハロルドの手作り家具店は、立ち行かなくなりました。
糟糠の妻は、認知症を患い長年連れ添った夫のハロルドすら分からなくなりました。
夫のハロルドに「アa0212807_0293468.jpgホンダラ!」と悪態をつき、介護人の女性には、「アバスレ!」と暴言を吐く始末、やがて妻が、亡くなり、ハロルドは、タブロイド新聞の記者をしている一人息子に訃報を伝えようと彼の家族を訪ねますが、どこかトンチンカンな息子は、すでに新聞社をクビになり、愛想尽かした妻(と子供2人)が、家を出ていくところでした。
a0212807_0383528.jpg万事何ごとにも後ろ向きで自分の不遇を社会のせいにして逆恨みをするダークサイドのハロルドと途中から登場し何ごとにも前向きで謙虚を自分のポリシーにして「イケア」を世界的な企業にしたライトサイドのイケア創業者カンプラード(ノルウェーの俳優ビヨルン・グラナート a0212807_1233554.jpg1946~ 実在のカンプラードご本人そっくり)との真逆な二人のやり取り(ぶつかり合い)が、ユーモラスでウィットに富み実にコミカルで、この映画「ハロルドが笑うその日まで」の見どころです。
自分の人生が、上手くいかないのを「イケア」のせいにし怒りを募らせたハロa0212807_124743.jpgルドは、イケア創業者のカンプラードに復讐しようとイケアのあるスウェーデンに向かいました。
雪道で寝ているところをワケアリなスウェーデン娘エバ(スウェーデンの女優ファンニ・ケッテル 1996~)に起こされました。
ハロルドは、エバを仕方なく車に乗せa0212807_125254.jpg出発しますが、二人のコミカルなロード・ムービ―もなかなか笑えます。
ハロルドは、エバを家まで送り、雪道でエンストした車に出遭い困っている男を車に乗せると、何とこれが、自分でオンボロ車を運転しクリスマスイブに働く従業員を慰労しようとイケアの店に向う途a0212807_1332920.jpg中のイケア創業者のカンプラードその人でした。
カンプラードを誘拐したハロルドは、「お前のせいでウチの家具店が潰れた」と自分の人生が、上手くいかないのは、社会や他人のせいとばかり悪態を吐きました。
ホテルの一室にカンプラードを監禁してa0212807_1353717.jpgいるとき、エバが、突然現われました。
ここからさらに三人の奇妙な旅が、始まります。
映画の劇中、ハロルドが、「イケア」の製品をコケにするシーンやイケア創業者イングヴァル・カンプラード(1926~)の実名(下の写真はa0212807_1374580.jpgご本人)での登場、さらに映画の撮影(ロケーション)も実際にイケア店舗で行われイケアのロゴも堂々と登場します。
普通なら主人公ハロルドの敵役(ヒ-ル・イメージ)扱いを受ける「イケア」から抗議が、来そうなプロットなのに「イケアは、家具を売るのが仕事、あなたたちは、映画を撮るのが仕事」とクレームもなくa0212807_1412762.jpg撮影に協力してくれたとビケネ監督、イケア創業者カンプラードのしたたかな経営哲学(映画を媒体としてタダでイケアの宣伝をしてくれる)が、社内の隅々に行き亘っていることの証でしょう。

              (上写真 : 演技の打合をするハロルド役のビョルン・スンクェストとグンナル・ビケネ監督)
by blues_rock | 2016-12-30 00:03 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
悪徳刑事たちを主人公にしたクライム・サスペンスの名作「L.A.コンフィデンシャル」(1997)でアカデミー脚色賞を受賞したアメリカの名脚本家にして鬼才映画監督ブライアン・ヘルゲランド(1961~)が、イギリスに招聘され、
a0212807_17173286.jpg
イギリスの名優トム・ハーディ(1977~)と組んで創りあげた2015年ギャング映画「レジェンド ~ 狂気の美学」(原題: Legend 伝説)です。
a0212807_17194680.jpg
映画は、フィルム・ノアール(ギャングの犯罪映画)ながらヘルゲランド監督は、ギャングの抗争に付き物のド派手な銃撃戦や血しぶきの舞う殺りくシーンを少なくし(映画の性格上多少あります)、演出の力点を 1960年代のa0212807_17204381.jpgロンドンに実在したギャングのボスである 一卵性双生児のクレイ兄弟が、強い絆で築いたクレイ兄弟マフィアの栄華、双子の兄弟間の確執と亀裂、そして破滅に至る人間ドラマに置いています。
双子のギャング、レジーとロンのクレイ兄弟を演出するヘルゲランド監督と一卵性双生児クレイ兄弟を一人二役で演じるトム・ハーディの演技が、見事にコラボレーションした映画です。
a0212807_17304914.jpg名優トム・ハーディは、頭脳的で沈着冷静な兄レジーと暴力的で血気盛ん破滅的(抑パラノイア剤を常用)な弟ロンの二人をその性格の違いや立ち振る舞い、目の表情さらに話すときの口元などで秀逸に演じ分けています。
1933年のロンドン、イースト・エンドの貧しい家庭に生まれた一卵性双生児のレジーとロンは、恐喝・強盗・暴力など手段を選ばず、あらゆる犯罪に手をa0212807_17264270.jpg染め1960年代には、ロンドン全域の裏社会を支配下に収めていました。
クレイ兄弟は、アメリカのマフィア(チャズ・パルミンテリ 1952~)と結託しロンドンのナイトクラブやカジノを牛耳りイギリス政財界の有力者たちと密かに繋がりイギリス社会に絶大な影響力を波及させ向かうところ敵なしの栄華をa0212807_17273988.jpg極めていきます。
兄レジーは、手下の妹フランシス(エミリー・ブラウニング 1988~)と恋に落ち結婚、悪事から足を洗ってほしいと願うフランシスにナイトクラブ経営に専念すると約束しますが、レジーの引退を快く思わないゲイの弟ロンは、破滅的な行動を繰り返しクレイ兄弟の組織に亀裂が、入りました。
a0212807_17314443.jpgロンドン警察の執拗な捜査にクレイ兄弟の絆とロンドンの裏社会に築いたクレイマフィアの栄華も風前の灯かに思われましたが、ただ一人ロンを抑えることのできるレジーの復帰で組織も落ち着きを取り戻しました。
だが、レジーは、愛するフランシスを失うことになりました。
この映画は、はしゃぐにしても、言い争うにしても、兄弟ケンカして殴り合うにしても、一卵性双生児のクレイ兄弟a0212807_17382734.jpgを一人二役で演じる トム・ハーディの名演技が、何よりの見どころで「お見事!」の一言です。
by blues_rock | 2016-12-28 00:08 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
今から160年前の1856年(映画の舞台となる時代と風俗を日本の歴史に置き換えると江戸末期の幕末のころ)、フランスの文豪フローベール(1821~1880)は、4年半の歳月をかけて姦通(不義密通)文学の傑作と称賛される「ボヴァリー夫人」を発表しました。
a0212807_12465560.jpg
現在では、大人の自由恋愛(ロマンス)に大らかなフランスも当時、市民階級の既婚女性が、夫の他に恋人(愛人)をもち夫以外の男性と性的関係をもつことは、天下の大罪でした。
当時は、洋の東西を問わず妻帯者の男性が、愛人(日本の場合、妾)をもつことは、至極当然な行為で日本なa0212807_13144041.jpgら‘男の甲斐性’の一言で片づけられていました。
しかし、当時の既婚女性は、今では、死語となった‘夫への貞節’(貞操帯などと云う性行為を妨げる装具もありました)を強制されました。
恋愛(ロマンス)は、個人的な心の問題なのに、道徳と云う大義名分のもと他人の価値観(宗教観・道徳観など)a0212807_13153914.jpgが、女性に強要されていたのです。
倫理規範のない現在の男女同権社会において、男女間の自由な恋愛(性愛)を‘不倫’などと云う古典的な表現で‘言葉遊び’するなんて愚の骨頂と云うものです。
さて、映画「ボヴァリー夫人」の物語は、19世紀末のフランス、ノルマンディ地方の田舎町が、舞台です。
a0212807_13201454.png映画は、主人公のエマ・ボヴァリー(ミア・ワシコウスカ1989~)が、森の中をよろめきながら歩き倒れ絶命するところから始まります。
エマは、農家の子供に生まれるも貧乏と質素な暮らしが、イヤで少女の頃は、お姫様になることを夢見、子供心に夢が、叶わないと知ると娘時代は、胸に十字架を抱いた清楚な修道院の聖女に憧れますが、修道院の厳しい戒律と修業に耐えきれず挫折、つぎに手っ取り早く金持ちと結婚して自分の自尊心と虚栄心をa0212807_13205077.jpg満足させようとエマは、知り合いの金貸し商人が、紹介する年長の町医者と結婚しました。
しかし、エマは、鄙びた田舎の実直な町医者に嫁いだものの平凡な毎日、単調で退屈な結婚生活にうんざりしていました。
虚栄心の強いエマは、旧知の商人に煽(おだて)てられて身分不相応の衣装や装飾品、調度家具類を次々に
a0212807_13213339.jpg
購入し自己満足しようとしますが、働くだけの夫との生活(性生活も含め)は、退屈な時間の連続でした。
ロマンティックな妄想に囚われ積もり積もった莫大な借金(自己破産)に苦しむ町医者の妻エマは、若く美しい彼女に下心をもって近づいて来る資産家と交際(姦通=不倫)を始めました。
a0212807_13223474.jpg
やがて、夫が、邪魔になったエマは、病気になった夫の処方箋を書き変え毒殺しようとしますが、薬屋の主人に気づかれ殺人未遂罪で逮捕されました。
フローベールは、「ボヴァリー夫人は私だ」と喝破しています。
a0212807_13233255.jpgエマの少女時代から思春期のロマンティックな人生への憧れ、虚栄心を満たすための結婚、自尊心を満たすための贅沢三昧の浪費生活、恋愛という美名の姦通(不倫、援助交際)、借金地獄など自分の現実に押しつぶされて破滅(自殺)に至るまでをリアルな文章でシリアスに描き文学史上に写実主義という新ジャンルを確立しました。
「ボヴァリー夫人」は、発表当時、風紀紊乱(ふうきびんらん)による公衆道徳違反で発禁になりました。
a0212807_13251898.jpgしかし、フローベールの写実主義は、ゾラやモーパッサンの自然主義文学に大きな影響を与えました。
「ボヴァリー夫人」は、古くから何度も映画化され1933年フランスのジャン・ルノワール監督、1949年アメリカのヴィンセント・ミネリ監督、1989年ロシアのアレクサンドル・ソクーロフ監督、1991年フランスのクロード・シャブロル監督といずれも名匠の誉れ高い名監督ばかりです。
a0212807_13275133.jpg
2014年製作の最新「ボヴァリー夫人」は、フランスの女性監督ソフィー・バーセス(1974~)が、監督・脚本・製作を担い、撮影は、バーセス監督の夫アンドリー・パレーク撮影監督(1971~)が、務めています。
劇中に登場する男たち(夫以外)は、虚栄心に支配され自尊心ゆえに無いものねだりを続ける主人公エマ・ボa0212807_13321117.jpgヴァリーを ‘喰いもの’ にするロクでもない男ばかりで美辞麗句を並べ、欲望のために骨までしゃぶり、邪魔になるとポイ捨てするような男たちです。
女性監督ソフィー・バーセスの映画に登場する男たちに向ける視線(演出)は、男の本質を射抜き、容赦なく辛辣で映画を見ている私に「あなたのことですよ」と云っているかのようでした。
by blues_rock | 2016-12-24 00:04 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
a0212807_22213289.jpg
デストピアSF映画「ロブスター」(2015 カンヌ国際映画祭でグランプリ受賞)は、ギリシャの異才監督ヨルゴス・ランティモス(1973~ 監督・脚本・製作)と撮影監督ティミオス・バカタキス(1970~)コンビの長編第2作となる摩訶
a0212807_22224563.jpg
不思議(シュール)な非常に作家性の強い不条理劇です。
映画は、近未来のヨーロッパで、そのどこかの海辺の街(英語を話しているのでイギリスか)と森が、舞台です。
a0212807_222423100.jpg街に住むには、相性の好いパートナーと結婚して子孫を残すことが、義務付けられています。
妻と別れた独身男のデイヴィッド(コリン・ファレル 1976~)は、社会のルールに則って街の郊外にある独身者強制収容ホテルへ送られました。
そこに収容された者は、男女を問わず45日以内に相思相愛のパートナー(配偶者)を見つけなければ、懲罰(偽装結婚も同罪)としa0212807_22254279.pngて動物に姿を変えられ森へ追放される運命が、課せられていました。
デイヴィッドは、懲罰の変身対象に海の中で100年生きると云われる「ロブスター」を選定し申告しました。
ホテル収容の期限45日を延長し懲罰を逃れるためには、森へ逃げ込んだ独身者狩り(ハンティング)をして麻酔銃で一人捕獲すると1日の延長が、a0212807_22261372.png加算されました。
デイヴィッドは、パートナーを探しますが、見つからず独身者ハンティングへ動員されました。
ハンティングにも失敗したデイヴィッドは、独身者たちのコロニーが、ある森へ逃亡しました。
森で暮らす逃亡独身者たちを統率する女性リーダー(レア・セドゥー 1985~)は、厳しい「恋愛禁止」の規則を科a0212807_22392172.jpgしていました。
デイヴィッドが、森の規則を破り近眼の女(レイチェル・ワイズ 1970~ この映画のナレーター)と恋に落ちたことから独身者リーダーは、デイヴィッドに自分の墓穴を掘らせ、近眼の女の視力を奪いました。
デイヴィッドは、反乱を起こしリーダーを襲い墓穴に投げ込み、失明した恋人と街に逃げ込みました。
a0212807_224015100.jpgそして、光(視力)を失った恋人と同期(シンクロナイズ)するために自分も失明することにしました。(が、映画は、デイヴィッドが、躊躇いながらナイフを自分の眼に近付けたところで終わりました。)
ランティモス監督の演出とバカタキス撮影監督の映像さらに俳優陣が、前述の3人に併せ若手ながら芸達者な俳優ベン・ウィショーa0212807_22404770.jpg(1980~)、名脇役俳優ジョン・C・ライリー(1965~)など他にも多数演技者を揃えているのでシュールなデストピアSF映画ながらもダークにならず最後まで楽しめる映画でした。
by blues_rock | 2016-12-18 00:18 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
御年81歳になっても毎年平均して1作ずつ新作を発表している名匠ウディ・アレン監督(1935~)の最新作「教授のおかしな妄想殺人」(監督・脚本)を紹介します。
a0212807_18133775.jpg
ウディ・アレン監督のもうひとつの才能(名ジャズクラリネット奏者)が、プロのジャズ・クラリネット奏者であること、その音楽センスは、「教授のおかしな妄想殺人」の劇中に流れる軽快なジャズで聴くことができます。
a0212807_1814167.jpgピアノ・ベース・ドラム編成トリオの軽快なジャズのリズムが、映画のシーンに実に効果的に配置され、未だ衰えを見せないアレン監督のブラックユーモア才気にあふれる演出と軽快なジャズは、ある大学教授の殺人に関わる奇妙かつ哲学的なダークなコメディ映画をテンポ良くし、見ている者を退屈させません。
a0212807_18145258.jpg原題「Irrational Man(非合理的な男)」が、日本公開では、「教授のおかしな妄想殺人」とタイトルを変えられ‘妄想’という文言が、映画を見る者に間違った先入観を与え、アレン監督の脚本(プロット)と決定的な相違を生んでいます。
私は、「教授のおかしな殺人計画」のほうが、この映画のプロットに適正と思います。
a0212807_18153342.jpg人生に絶望し世の中すべてに虚無的で悲観的、変人として評判の哲学教授エイブを演じるのが、名優ホアキン・フェニックス(1974~)です。
ホアキン・フェニックスは、サイコティックにもシリアスにも、ユーモラスにも役柄に成りきるのが、上手い俳優で、世の中のすべてを疎ましく感じる自己喪失した哲学教授エイブの演技も目のあたりに鬱々とした表情を漂わせ、ウィa0212807_18162586.jpgスキーのスキットルを肌身離さず持ち歩きキャンパスでもガブ飲みする変人教授を実に上手く演じています。
「人生に無意味はない」という言い切る虚無的な哲学教授エイブに恋をする女子学生ジルを若手女優エマ・ストーン(1981~ キュートな容姿に似合わない低い声が魅力的)、エイブを愛する同僚の化学教授リタにベテラン女優パーカー・ポージー(1968~)の三人が、a0212807_18171250.jpg繰り広げるダークかつユーモラスなコメディ映画です。
映画は、見てのお楽しみながら、教え子のキュートな女子大生ジルの熱烈な恋にも同僚の女性教授リタの体当たりの求愛にも無関心であった虚無的な哲学教授エイブが、ある日レストランで隣の席にいる他人の不幸話を耳にしたとたん、それに関わる悪徳判事の抹殺(殺人の完全犯罪)を思いつき人生に生きる喜びをa0212807_18285874.jpg見出しました。
その日からエイブは、頑なに拒否していたジルの恋も受け入れ、性的不能であったリタとのセックスも巧くいくようになりました。
エイブは、誰にも云わず一人で悪徳判事の身辺を詳細に調べ、判事の生活の行動パターンからの殺人計画を用意周到に準備しました。
a0212807_18293254.jpg殺人計画は、大成功で、「ジョギング中の判事、心臓発作で死亡」の新聞・TVニュースで一件落着かと思われましたが、エイブを殺人の実行犯と疑ったのは、ジルとリタの二人でした。
映画のエンディングは、呆気(あっけ)なくもおもしろく小道具の使い方もなるほど!とアレン監督の冴えた演出に感心しました。
a0212807_1830599.jpgアレン監督は、アカデミー賞ほか各地で開催される映画祭の賞にもまったく興味を示さず、アカデミー賞に史上最多の24回もノミネートされ、かつ何度か受賞していますが、授賞式には、一切出席しないことでも知られています。
授賞式当日、ニューヨークのライブハウスでクラリネットを吹いていたこともあるそうです。
a0212807_18333937.jpgウディ・アレン監督は、人間の本質(深淵)とそれを的確に演出するユーモアと同時にニヒルでブラックな笑いを哲学的に表現するセンスを併せ持った希代の万能映画人として天才チャーリー・チャプリンと並び称されることでしょう。
by blues_rock | 2016-12-14 00:04 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
アクション映画が、得意なイギリスの名監督マーティン・キャンベル(1943~)が、 2000年レスキュー・アクション映画「バーティカル・リミット」と2005年アドベンチャー・アクション映画「レジェンド・オブ・ゾロ」の間に撮った2003
a0212807_19423730.jpg
年の戦争アクション(&ロマンス)映画「Beyond Borders すべては愛のために」は、主演した女優アンジェリーナ・ジョリー(1975~ 1999年映画「17歳のカルテ」でアカデミー賞助演女優賞を受賞、2001年の主演映画「トゥーa0212807_19433388.jpgムレイダー」が大ヒット)の、その後の人生観・世界観に大きな影響を与えたのではないかと推察します。
「Beyond Borders(国境を越えて)」は、ロンドンの国連難民高等弁務官事務所(UNHCR、本部 ジュネーブ)で難民救済のために働くサラ(アンジェリーナ・ジョリー)と激しい紛争地の最前線で飢餓と疫病に苦しむ難民たちの救援活動に私利私欲を捨て従事する医師ニック(クライヴ・オーウェン 1964~ 2006年「トゥモロー・ワールド」、2012年「シャドー・ダンa0212807_19443188.jpgサー」、2013年「マイ・ブラザー(Blood Ties)」のどれも感情を抑制した演技が印象に残る)との激しくも切ないロマンスを縦糸にして撮影カメラ(撮影監督フィル・メヒュー 1941~、キャンベル監督作品のほとんどを撮影)が、エチオピア、カンボジア、チェチェンの過酷な紛争地域の難民キャンプに入ったようなド迫力のリアリティ映像を横糸にして物語を織りなしていきます。
a0212807_1945066.jpgアンジェリーナ・ジョリーの魅力は、正しく「隗より始めよ」を不言実行する献身的な人(女性)で、慈善活動やUNHCR親善大使などボランティア活動に熱心なこと、私生活でも3人の孤児(カンボジアの男児・エチオピアの女児・ベトナムの男児)を養子に迎え3人の実子(父親はブラッド・ピット)と合わせ6人の子供の母親でもあります。
a0212807_194628100.jpgさて、映画のストーリーを簡単に述べるとサラは、ロンドンのギャラリーに勤め、郊外の邸宅で何不自由なく暮らす一児の母でした。
ある日、医師ニックが、社会奉仕団体のパーティ会場に押しかけ演説、サラは、エチオピア紛争地の厳しい難民救済活動の実態を初めて知ってショックを受け、夫が、止めるのも聞かず難民救済支援のためUNHCRのロンドン事務所で働き始めa0212807_1952427.jpgました。
そして、サラは、支援物資の到着を見届けるために現地へ向かいました。
途中、ゲリラ(強盗団)に襲撃され食料などの物資を強奪されましたが、医師ニックをリーダーとする現地の難民救済チームに助けられました。
内戦と旱魃により疲弊したエチオピアの砂漠で水・食料・医薬品もなく、難民キャンプが、紛争地からの避難民で溢れている衝撃的なa0212807_1954527.jpg実態にサラは、声も出ませんでした。
サラは、難民救済のためなら清濁併せのむ医師ニックに反発しながらも彼の不屈の情熱に次第に惹かれ愛し合うようになりました。
そして、二人は、内戦の続くカンボジアとタイ国境の山岳地帯で難民救援活動を行ないます。
そして数年後、ロンドンの国連難民高等弁務官事務所で働くサラは、難民救援活動中のニックが、ゲリラ(身代a0212807_19543665.jpg金ギャング)に誘拐され行方不明になったというニュースを知りました。
サラは、家族や回りの人たちが、制止するのも聞き入れずニック救出のために危険なチェチェンに向かいました。
キャンベル監督の演出とそれを受けたメヒュー撮影監督の映像が、とても印象的であるのは、大都会ながら空虚なロンドン、灼熱の砂漠エチオピア、亜熱帯ジャングル奥地のカンボジア、極寒の雪原チェチェンとそのシーンごとに色調を変え、それぞれの過酷な紛争地域で辛うじてa0212807_19561214.jpg生き、中には息絶えていく難民たちのリアルな姿(実写と推察)が、見ている者の心に疼くように迫るからです。
by blues_rock | 2016-12-12 00:12 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
a0212807_1810374.jpg
ブルースに取り憑かれたテキサス州生まれのリトル・ガールが、その唯一無二の声と歌唱力で、スゥーとこの世に現われ一夜にしてビッグ・ガールとなり一世を風靡するも孤独な自分の心を癒すためにヘロインとアルコール
a0212807_18131368.png
の悪魔に囚われ若干27歳で‘クロスロード’を渡り 27クラブ(The 27 Club) の一員になりました。 
映画「ジャニス:リトル・ガール・ブルー」の主人公ジャニス・ジョプリン(1943~1970没、享年27歳)のロックミューa0212807_1815710.jpgジシャンとしての人気は、死後46年経った現在もいまだ衰えず、後に続く大勢の女性ロックミュージシャン、ブルースシンガーに敬愛され影響を与え続けています。
この映画の監督エイミー・バーグ(1970~)は、ジャニスが、亡くなった年の1970年生まれで敬愛する ロックの化身 ジャニス・ジョプリン へのオマージュとして6年の歳月をa0212807_18205929.pngかけ、女性ファンの視線でライヴの模様、TV出演の様子、スタジオでの録音風景、家族や友人、元恋人やバンドメンバー、ジョン・レノンなど多くのインタビュー映像で構成、タペストリーのようにジャニスの素顔を紡ぎ上げています。
テキサスの保守的な小さな町で黒人音楽のブルースを愛しリベラルであったジャニスは、学校で酷いイジメに遭a0212807_18214828.jpgい、存在すら無視されるという辛い悲しみが、ジャニスの心に一生癒されない傷を残しました。
故郷に自分の居場所が、無かったジャニスは、家出同然で故郷を離れ自由な若者たちの集うサンフランシスコへ行き生活しますが、家族への思い断ち難く両親や妹弟に多くの手紙を書いています。
a0212807_031627.jpgインタビューに答えるジャニスに縁(ゆかり)のある人たちは、皆な70歳を超えているのに50年前のジャニスについて語るときの記憶が、鮮明なのには、驚かされます。
正しくジャニス・ジョプリンの存在は、いま70歳を超えている人たちにとっても1960年代という旧い時代に抗った保守的な小さな町の象徴だったのだろうと思います。
ジャニスの歌の魅力は、心の奥底にある生きる喜び、生きている悲しみ、痛み、怒り、切なさなど自分の素直なa0212807_2111660.jpg感情のままにクライ、シャウトし時にスクリーム(絶叫)するようなヴォーカルにあり人間としての魂を生々しく曝け出す歌唱力にあります。
1966年、ジャニスは、サンフランシスコで当時すでに有名であった「ビッグ・ブラザー&ザ・ホールディング・カンパニー」のヴォーカル・オーディションを受け、バンドの一員になります。
1967年、ジャニスは、バンドと共に伝説の大規模野外コンサート「モンタレー・ポップ・フェスティバル」に出演しa0212807_2111433.jpgビッグ・ママ・ソーントンの‘ボール・アンド・チェイン’を自分の感性で歌い野外コンサートに来ていた20万人の聴衆を唖然とさせました。
映画の中でジャニスの歌を初めて聴いたママス&パパス(こちら)のキャス・エリオットが、「ワーォ!」と驚嘆しているシーンを見ることができます。
a0212807_21123967.jpgジャニスのソウルフルな歌へのこだわりは、バンドに摩擦を生み解散、1969年ジャニスのこだわりを生かすためブラス・セクションを加えたコズミック・ブルース・バンドを結成し歴史的な野外ロック・コンサート「ウッドストック」に出演、名実ともに ロックンロール のシンボルになりました。
a0212807_21134886.jpgやがてジャニスの音楽指向は、ゴスペルに向かいキーボードを重視したフル・ティルト・ブギー・バンド(ピアノとオルガンのツイン・キーボード)を新たに結成して新アルバム「パール」を制作中、ヘロインの過剰摂取(オーバードース)で亡くなりました。
映画の最後に流れる「Little Girl Blue」は、ジャニスが、自分の激しい感情を諌めるようにしっとりと歌い深く心に残ります。
a0212807_21143793.jpg
        そのままそこへ座って        そう、それでいいわ
        そして指を数えるの          他に何をしようか
        ハニーしたいことはある?      痛いほど分かるわ
        あなたの辛い気持ち         もう懲り懲りよね
        そのままそこへ座って         いいから指を数えて
        不幸で可哀想な            でも愛しいリトル・ガール・ブルー
        辛い気持ちは             ハニー私には分かっているわ
        あなたの心の痛みそのままに
a0212807_0191378.jpg 
(付 録) 1969年のライヴ映像「サマータイム」は、ギグの世界遺産、必見(必聴)です。
ジャニス・ジョプリンをモデルにしたベッド・ミドラー主演の1979年映画「ローズ」もお勧めです。

(右写真 : ジャニス・ジョプリンへのオマージュ映画「ジャニス:リトル・ガール・ブルー」を撮ったエイミー・バーグ監督)
by blues_rock | 2016-12-08 00:08 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)