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心の時空

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a day in my life

カテゴリ:映画(シネマの世界)( 827 )

アルゼンチンの若手映画監督ロドリゴ・グランデ(1974~)による2016年クライムサスペンス映画「エンド・オブ・トンネル」もフレンチノワールと一味ちがったハードボイルドな映画です。
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主人公のホアキン(レオナルド・スバラーリャ 1970~)は、交通事故により妻子(娘)を失くし、自らも後遺症(下半身麻痺)で車椅子生活を余儀なくされ、自宅に引きこもり外との接触を避けて孤独な日々を送っていました。
a0212807_02484.jpg貯金もなくなりホアキンは、生活のために自宅アパートの2階を貸し出すことにしました。
行くあてのない幼い娘を連れたストリッパーのベルタ(クララ・ラゴ 1990~)が、どうしても借りたいと押しかけ、ホアキンの意思を無視して住み始めました。
a0212807_0255053.jpg暮らしていくうちにホアキンの沈んだ心も生前の妻子の姿を懐い浮かべることで慰められ少しずつベルタ親子(母娘)と打ち解けるようになりました。
ある日、ホアキンは、一日のほとんどを過ごす地下室で壁の向こうから聞こえてくる隣室の奇妙な音を聞きました。
壁の穴にマイクロカメラを入れ盗聴するとなんと銀行強盗団が、隣室地下室の下にトンネルを掘り、隣接する銀a0212807_0302156.jpg行の金庫を襲撃している現場でした。
さらに、ベルタは、銀行強盗団のボス(パブロ・エチャリ 1969~ 出演/製作ならびに製作総指揮)の情婦でホアキンに気づかれないよう監視役として命令され送り込まれた女性でした。
ホアキンは、ギャングたちに気づかれないよう現金を掠(かすめ)取る計画を考え、金のために強盗団のボスに利用されているベルタと幼い娘を貧困
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の泥沼から救い出すことにしました。
主人公を下半身麻痺の障害者にして車椅子を道具に使うグランデ監督の斬新な演出は、ベテラン撮影監督a0212807_0352068.jpgフェリックス・モンティ(1938~ 2009年「瞳の奥の秘密」の撮影監督)のダークな映像と相俟って好い味のアルゼンチンノワールを醸し出しています。
by blues_rock | 2017-06-24 00:24 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
a0212807_11123858.jpg2014年制作のフレンチ・ノワール映画「コルト45 孤高の天才スナイパー」(原題「Colt 45」)は、リュック・ベッソン監督の1990年作品「ニキータ」を想わせるテンポの好いアクション映画ながら、パリ市警の殺人捜査科と特殊犯罪捜査科の内部対立、フランス軍テロ対策特殊部隊の有無を言わさぬ介入、現金強奪グループや麻薬密売組織などのギャング団が、入り乱れ、ド派手な銃撃戦を繰り広げるノワールなドラマです。
主人公のパリ市警の若き警察官ヴァンサン(イマノル・ペルセ ベルギーの若手俳優 プロファイル詳細不明)とヴァンサンの先輩同僚でベテラン刑事クリスチャン(フランスの名優ジェラール・ランヴァン 1950~)のほか映画に登場するのは、パリ市警察の刑事、フランス軍特殊部隊隊員、強盗グループや麻薬組織のギャング団ながら、どの顔も人相悪く、映画をしっかり見ていないとダレが、善玉で悪玉なのか、見ている方は、区別が、つかなくなり次第に‘重大事件(凶悪犯罪)’に巻き込まれていく天才狙撃手のヴァンサンは、果たして善人なのか、悪人に利用される彼らの手下なのか、分からなくなっていきます。
a0212807_11144511.jpgストーリーは、パリ市警武器庫管理係のヴァンサンは、まだ25歳ながらまわりのダレもが、認める射撃の天才でパリの警察学校で射撃を教える教官でもありました。
ヴァンサンの射撃能力を高く評価するパリ市警の犯罪所管部署やフランス軍特殊部隊は、ヴァンサンを引きぬこうとしますが、人間関係より銃器を愛し他人(ひと)と付き合うのを避ける彼は、内勤の武器庫管理a0212807_11155376.jpg係を続けたいと上司に伝えます。
しかし、ヴァンサンの思いとは、裏腹にヴァンサンの狙撃能力を利用しようとする陰謀が、密かに進行していました。
この後は、映画を見てのお楽しみということにして軍が、目的(テロ対策の大義名分)のために警察を駒のように扱い、警察は、警察で犯罪捜査と事件解決のためにお互い協力し合うのではなく縄張り争いを繰り広げ内部対立、犯a0212807_1117264.jpg罪捜査のためなら手段選ばずギャングたちを脅して利用します。
「コルト45 孤高の天才スナイパー」は、銃撃戦のシーンが、多く、どのシーンもリアリティにあふれ迫力あり、ベルギーの監督 ファブリス・ドゥ・ベルツ(1972~)の演出を上手いものだと感心していたら、銃撃戦などの戦闘シーンは、元SAS隊員をアドバイザーとしてa0212807_11185131.jpg迎え(冒頭アドバイザーの元SAS隊員本人がアメリカ軍特殊部隊の将校役で出演)、リアルな銃撃戦の演出をアドバイスしてもらったのだそうです。
孤独なヴァンサンに好意を持つベテラン女性刑事にアリス・タグリオーニ(1976~ 「ブルゴーニュで会いましょう」)が、紅一点で出演しています。
a0212807_11213716.jpg映画ラストのシークエンスは、まさに「ニキータ」の冒頭のようで、警察官を殺したニキータが、その殺しの手際の良さで、殺しの才能を国家権力に見こまれ、非合法な司法措置により過去をすべて抹消され暗殺者(アサシン)として教育されるシークエンスに似ていました。
by blues_rock | 2017-06-22 00:22 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
フランスの哲学者サルトルの短編小説「指導者の幼年時代」をアメリカの俳優ブラディ・コーベット(1988~ 2011年23歳のときランス・フォン・トゥーリア監督作品「メランコリア」に出演)が、脚本を書き初めて長編映画の監督に
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挑戦した作品「シークレット・オブ・モンスター」を紹介します。
心理ミステリー、スリラー映画ながら、コーベット監督の演出は、どこかホラーっぽく、ベネツィア国際映画祭で
a0212807_8574777.jpg審査委員長を務めたジョナサン・デミ監督(1990年の傑作スリラー映画「羊たちの沈黙」の監督)が、ベネツィアで上映された「シークレット・オブ・モンスター」を見て、‘身震いする緊張感、戦慄の映画’と大絶賛、ベネツィア国際映画祭で監督賞と初長編作品賞を受賞しました。
映画は、第一次世界大戦末期の1918年、戦争終結の条約策定のためにパリ郊外のベルサイユに赴任したアメa0212807_924899.jpgリカ政府外交官(国務次官補)の幼い息子(美少年)を主人公に、第一次世界大戦もまだ終結しない中、早くも次の第二次世界大戦前夜を予兆させるファシズムの台頭(独裁者の登場)を描いています。
‘戦争の世紀’と呼ばれる20世紀初めの不穏な空気を漂わせた映像は、奇才コーベット監督の類稀な演出と相まってイギリスの撮影監督ロル・クローリー(1974~)の ‘闇’ を強調したカメラワーク、さらに映画音楽を担ったロックミュージシャン a0212807_944351.jpgスコット・ウォーカー(1944~ ロックバンド「ウォーカー・ブラザーズ」リーダー)による不気味にして不穏な不協和音が、映像とシンクロし幼い少年の心の歪みや、やがて大人の手に負えない狂気のモンスター(怪物=独裁者)に変貌していくさまを見事に表現しています。
不気味に歪んでいく美少年プレスコットを9歳の映画初出演のトム・スウィートが、‘次第に歪み 狂気のモンスa0212807_9164289.jpgターに変貌していく姿’ を見事に演じています。
子役俳優のトム・スウィートは、正しく天才的な演技才能をもった小さな名優と言っていいでしょう。
息子のプレスコットを厳格に教育し躾ける信心深いカトリック教徒のドイツ人母親をフランスの名女優ベレニス・ベジョ(1976~ 「アーティスト」、「ある過去の行方」など名作に多数出演)a0212807_917577.jpgが、一人息子のプレスコットによそよそしいアメリカ政府外交官(国務次官補)の父親をアイルランドの名優リアム・カニンガム(1961~ 「麦の穂をゆらす風」、「ハンガー」など名作に出演)が、さらにプレスコット少年の家庭教師としてフランスの新鋭女優ステイシー・マーティン(1991~ 「ニンフォマニアック」、2015年「パレス・ダウン」に主演)が、それぞれ心理描写の難しい役柄を見事に演じています。 (下写真 : ブラディ・コーベット監督)
a0212807_92155100.jpg登場する人物を後ろから撮った映像のエロティシズム、まわりの大人で唯ひとり自分にやさしかった家政婦の老婆を母親が、息子を甘やかすという理由で解雇し屋敷から追い出す時に見せるプレスコット少年の精神を崩壊させる表情、ベルサイユ条約調印を祝うホームパーティーの席上で、ホストである父親を無視し母親の命令を拒否する幼いプレスコット少年に解き放たれモンスターぶりは、この映画の見どころと云って良いでしょう。
by blues_rock | 2017-06-18 00:08 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
a0212807_330742.jpgドイツの俳優 ティル・シュヴァイガー(1963~)が、主演し製作を担った超弩(ど)級のリベンジアクション映画「アウトサイダー」(原題「Off Duty」)を今夜は、紹介します。
この手のB級ながら(つまらないと云う意味ではありません)超弩(ど)級のリベンジアクション映画でティル・シュヴァイガーに対抗できる俳優は、いまやイギリスの ジェイソン・ステイサム(1967~)くらいでしょう。
超弩(ど)級のリベンジアクション映画のシンボルと云えば、1988年から2013年まで5作シリーズで製作された「ダイ・ハード」で主演したアメリカの俳優ブルース・ウィリス(1956~)で、決して屈しないハードボイルドな中年男の象徴a0212807_564445.jpgでした。
この2016年ドイツ映画「アウトサイダー」のプロット、娘から嫌われているハンブルグ警察のアウトロー刑事でダメ父親が、事件に巻き込まれた愛娘の命を守るために犯罪組織と戦うストーリーは、2008年から2014年まで3作シリーズで製作されたフランスの超弩(ど)級リベンジa0212807_571399.jpgアクション映画「96時間」と重なるところあるものの元CIA工作員の父親を演じたリーアム・リールソン(1952~)のスマートなリベンジアクションに比べティル・シュヴァイガー演じる全身血(傷)だらけになり手段を選ばず拉致された愛娘を救おうとするアウトローな野獣刑事の典型的な超弩(ど)級リベンジアクション映画です。
a0212807_524137.jpgドイツの俳優ティル・シュヴァイガーは、製作・主演・脚本を担った1997年のロードムービー「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」で一躍有名となり、2009年映画「イングロリアス・バスターズ」、2012年映画「クーリエ 過去を運ぶ男」でハードボイルドな男優ぶりを発揮しています。
a0212807_524322.jpg「アウトサイダー」は、ドイツ製作のテレビ劇映画「ニック NICK」シリーズの劇場版としてドイツの監督クリスチャン・アルバート(1974~ テレビ劇映画「ニック NICK」シリーズの監督)が、監督・製作を、同シリーズの脚本を書いたクリストフ・ダルンスタットもまた劇場版「アウトサイダー」の脚本を担っています。
a0212807_527191.jpg映画の舞台は、テレビの「ニック NICK」シリーズが、ドイツの港湾都市ハンブルグであったのに対し「アウトサイダー」は、ドイツ、トルコ、ロシアと拉致された愛娘の行方を追うダイ・ハードな父親にして野獣刑事ニックの姿を描きます。
a0212807_5274719.jpgニックの娘役でティル・シュヴァイガーの実娘ルナ・シュワイガー(1997~)が、出演しています。
超弩(ど)級のハードボイルドなリベンジアクションものが、お好きな方にお薦めの映画です。
by blues_rock | 2017-06-16 00:06 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
カナダの鬼才監督ドゥニ・ヴィルヌーヴ(1967~)の新作SF映画「メッセージ」を博多区住吉のキャナルシティ13(福岡市内の上映館がユナイテッドシネマだけとは、嘆かわしい)で見ました。
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アカデミー賞8部門にノミネートされただけあって「すばらしい!」の一言です。
ヴィルヌーヴ監督独特の演出のすばらしさは、言うまでもありませんが、特筆すべきは、ハイクオリティな映像と
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音楽(サウンドトラック)さらに、これと相まった音響が、秀逸で芸術の域にあり音響編集を担当したカナダの音響編集技師 シルヴァン・ベルマーク(1968)が、アカデミー賞音響編集賞を受賞しています。
a0212807_8551573.png音楽(サウンドトラック)を担当したアイスランドの現代音楽作曲家 ヨハン・ヨハンソン(1969~)が、作曲した電子弦楽器を弓でこするような、時に指で弾いたような重低音の主旋律(緊張感のある同じメロディの繰り返し)は、得体の知れない 地球外生命体(ヘプタポッド、ラテン語で7本足の意)の摩訶不思議な存在感を 音で象徴的に表現するa0212807_8564979.jpg才能に驚きました。
私が、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の作品を最初に見たのは、2010年作品の傑作「灼熱の魂」ながら、その後2000年作品の「」から「灼熱の魂」、「プリズナーズ」、「複製された男」、「ボーダーライン」、現在公開中の新作「メッセージ」、そして最新作となるこの秋公開(2017年10月27日封切、初日に見る予定)の「ブレードランナー 2049」とすべて見ましたが、どれも上a0212807_859525.jpg質な作品(秀作・傑作)ばかりです。
SF映画「メッセージ」のプロット自体は、SFの定番‘未知との遭遇’ものですが、ヴィルヌーヴ監督のSF‘未知との遭遇’映画「メッセージ」は、ひとひねりした発想で製作されています。
ある日突然、地球上の12か所に、宙に浮く巨大な人類未知の物体が、出現しました。
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未知の物体にいる地球外生命体 ヘプタポッドは、いったいどこから 何のために地球にやってきたのか、言語学者のルイーズ(エイミー・アダムス 1974~)と物理数学者のイアン(ジェレミー・レナー 1971~)が、アメリカ軍かa0212807_912483.jpgら調査に参加するようベースキャンプに呼ばれました。
この巨大な浮遊物体は、18時間毎に112分だけ地面に近いところが、開くのでアメリカ軍ウェバー大佐(フォレスト・ウィテカー 1961~)指揮のもとルイーズとイアンは、浮遊物体の中に入り、地球外生命体ヘプタポッド2体とのコミュニケーションを試みました。
a0212807_925975.jpgルイーズは、ヘプタポッドが、空中に流す墨のような円形の図像は、彼らの言語ではないかと推察、表意を分析し交信を始めました。
ヘプタポッドの言語体系を解読したルイーズが、ヘプタポッドとコミュニケーションし始めるとルイーズは、意識に異変を感じ、母親の自分が、愛娘の不治の病に悲嘆するフラッシュバック現象に悩まされるようになりました。
a0212807_932920.jpgルイーズは、地球外生命体 ヘプタポッドとコミュニケーションするうちに彼らが、人類のような時間の概念(時の流れ)を持たないことに気が、付きました。
ヘプタポッドは、地球時間の3000年後に、人類が、自分たちを助けてくれるので、そのお礼のために来たのだとルイーズに伝え、地球から忽然と消えました。
a0212807_944894.jpgイアンは、ルイーズを愛するようになり撤退するベースキャンプの前でルイーズに結婚を申し込みました。
ルイーズは、イアンとの結婚が、不治の病で死ぬ娘の誕生につながることを予知しなかせらもイアンのプロポーズを受けるのでした。
by blues_rock | 2017-06-12 00:12 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
アメリカの名匠ジェームズ・グレイ監督(1969~)が、2013年に撮った「エヴァの告白」(原題「The Immigrant」 移民)は、第一次世界大戦(1914~1918)の戦禍から逃れ難民となり‘生きる’ために一縷の希望を抱いてアメリカ
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へ移住した一人のポーランド女性エヴァの艱難辛苦の物語です。
ポーランド人女性エヴァを演じるのは、フランスを代表する名女優 マリオン・コティヤール(1975~ 1998年a0212807_19204058.jpg「TAXI」のヒロインでブレイク、2004年「ロング・エンゲージメント」、2007年「エディット・ピアフ ~ 愛の讃歌」アカデミー賞主演女優賞受賞、2012年「君と歩く世界」、2016年「たかが世界の終わり」など世界の多くの名監督作品に出演)です。
第一次世界大戦の主戦場(映画「西部戦線異状なし」参照)は、ヨーロッパですが、戦争する帝国の支配する世界各地の植民地でも戦争勃発、1919年のベルサイユ条約で第一次世界大戦は、一旦終結したもののフランス・a0212807_19235766.jpgイギリス・アメリカなどの戦勝国が、無理難題に等しい莫大な賠償金を敗戦国ドイツに要求、その後のドイツ社会の疲弊と貧困は、ドイツ国内で共産主義とポピュリズム(ゲルマン民族主義)対立により混乱、独裁者ヒトラーの率いるナチスドイツが台頭し人類史上最悪にして未曾有の悲惨と破壊をもたらした第二次世界大戦へ突入して行きました。
映画は、第一次世界大戦後の世界が、混乱している1921年のアメリカ、ニューヨーク沖合のエルム島に設けらa0212807_19245883.jpgれた移民入国審査所から始まります。
物語のディテールを語ると100年前のアメリカでの出来事とはいえ、当時のアメリカの世相の暗さにうんざり(いまのアメリカもこれに近いかも)する方もいるでしょうから映画の見どころだけを紹介したいと思います。
何と言ってもこの映画は、いまやフランスを代表する大女優にして「美女 マリオン・コティヤール」を見るため映画でもあります。
a0212807_1927596.jpgイタリア映画「マレーナ」に主演した「美女 モニカ・ベルッチ」、同「ある天文学者の恋文」主演のウクライナの「美女 オルガ・キュリレンコ」と円熟期にある名女優を見るだけでも価値ある映画です。
エヴァと深く関わるヨーロッパ移民の二人の男に、一人を売春婦の元締めで厳格なカトリック教徒のエヴァを言葉巧みに口説き、生活のため(生き延びるため)に売春させる女衒(ぜげん)のa0212807_19323279.jpgブルーノ(ホアキン・フェニックス1974~)と、もう一人、ブルーノの従弟で、エヴァを愛する芸人の手品師オーランド(ジェレミー・レナー1971)の哀れで切ない物語でもあります。
ともあれ、映画は、1921年のニューヨークを舞台に第一次世界大戦下の祖国ポーランド戦火から逃れ、新天地アメリカへ妹と二人生きるために移民した女性エヴァの幸せ薄い過酷な運命を描いていきます。
エヴァのラストシーンをご覧になった方は、安堵されるとともに今世界で跋扈(ばっこ)する悪しきポピュリズムに対するグレイ監督
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のアンチテーゼ(反対メッセージ)が、きっとあなたの心に届くと思います。
by blues_rock | 2017-06-08 00:08 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
元MI6(エムアイシックス イギリス諜報機関)という経歴をもつスパイ小説作家ジョン・ル・カレ(1931~)が、書いた作品を原作にしたスパイ映画は、どれもサスペンスに満ちておもしろく裏切られることが、ありません。
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2016年クライム・サスペンス映画「われらが背しき者」(原題 Our Kind of Traitor 我々の反逆者)は、2011年のスパイ・サスペンス映画「裏切りのサーカス」や2014年のスパイ・アクション映画「誰よりも狙われた男」のスパイをa0212807_2139512.jpg主人公にしたプロットではなく、主人公が、民間人の大学教授です。
原作者のジョン・ル・カレ自ら製作総指揮、脚本をホセイン・アミニ(1966~ 「ドライブ」の脚本)、監督のスザンナ・ホワイト(1960~)は、クライム・サスペンス映画では、珍しく女性監督というところも、いつものスパイが、暗躍するハードボイルドなジョン・ル・カレ原作映画とは、違います。
a0212807_21393649.jpg映画の舞台となるモロッコ、フランス、スイスの映像を撮影監督アンソニー・ドッド・マントルのカメラが、シャープに捉え劇中のクライムとサスペンスを煽るマーセロ・ザーヴォス(1969~)の音楽と併せ、秀逸です。
映画のストーリーは、モロッコを旅行中のイギリス人大学教授ペリー(ユアン・マクレガー 1971~)と妻ゲイル(ナオミ・ハリス 1976~)が、レストランで食事しているとき、a0212807_2145484.jpgロシア犯罪組織の金庫番 ディマ(ステラン・スカルスガルド 1951~)から言葉巧みに近づかれ自分は、命を狙われており、家族だけでもイギリスへ亡命させたいので助けて欲しいと懇願されました。
MI6(エムアイシックス)のロシア犯罪捜査官ヘクター(ダミアン・ルイス 1971~)と部下のルーク(カリッド・アブダラ 1981~)は、ロシアの犯罪組織が、巨額のマネーロンダリングをロンドンに新設さa0212807_21465846.jpgれたキプロス銀行で行ない、その後ロシアの犯罪組織からロシアに友好的でイギリス政府の要職に就く有力な下院議員や複数の国会議員たちに多額の裏金(ワイロ)が、振り込まれることを察知していました。
そのマネーロンダリングとイギリスの国会議員たちの名前と口座を知っているのは、唯一ディマだけでした。
a0212807_21474781.jpgドラマは、最後まで二転三転しながら展開していきますのでクライム・サスペンス映画が、お好きな方にお薦めしたい映画です。
by blues_rock | 2017-06-04 04:44 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
a0212807_13584299.jpg2016年公開のイギリス・アメリカ合作映画「ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ」は、1920年代から1930年代にかけてアメリカ文学の傑作を数多く手がけ、アーネスト・ヘミングウェイ(1899~1961)などの世界的な作家を見出した実在の名編集者 マックスウェル・パーキンズ(1884~1947)と37歳で夭折した小説家 トマス・ウルフ(1900~1938)二人の人生と友情を描いた伝記映画です。
監督は、イギリス(ロンドン)の劇場ドンマー・ウエアハウスで長年芸術監督を務め「ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ」が、長編映画初監督となるマイケル・グランデージ(1962~)で、映画の原題は、「Genius(天才)」です。
a0212807_141885.jpgある日、編集者 パーキンズ(コリン・ファース 1960~)の元に無名の作家 トマス・ウルフ(ジュード・ロウ 1972~)の原稿が、持ち込まれました。
数多くの新刊本を編集するパーキンズは、多忙でしたが、ウルフの原稿を何気に見たパーキンズは、その才能を見抜きました。
a0212807_1421542.jpgパーキンズは、若く名もなき小説家 ウルフを編集者として厳しく、時に父親のようにやさしく支えながらトマス・ウルフの処女作「天使よ 故郷を見よ」をベストセラーにしました。
若き無名作家トマス・ウルフの才能を信じ家庭(夫と子供)を捨てウルフと同棲し生活を支える年上の女性アイリーン(ニコール・キッドマン 1967~)、若いころ時代のa0212807_1444158.jpg寵児として一世を風靡するも創作に苦悩する作家F・スコット・フィッツジェラルド(ガイ・ピアース 1967~)、編集者パーキンズが、その才能を見出したノーベル文学賞を受賞した作家アーネスト・ヘミングウェイ(ドミニク・ウェスト 1969~)、仕事を家に持ち帰っても愚痴一つ言わず多忙な夫を支えるパーキンズ夫人(ローラ・リニー 1964~)など個性的な人物が、何人も登場します。
a0212807_1472588.jpgウルフの処女作「天使よ 故郷を見よ」が、ベストセラーとなり二人は、さらなる大作に挑戦、パーキンズが、昼夜たがわずウルフに付きっきりで執筆させ編集した第二作も完成するやウルフは、「この本をパーキンズに捧げる」との献辞を残しヨーロッパへ旅立ち、これを最後に二人が、一緒に仕事をすることは、もうありませんでした。
by blues_rock | 2017-06-02 00:02 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
【 トラ・トラ・トラ】(1970)は、20世紀フォックスによる日本とアメリカ合作映画で、日本版とインターナショナル版 (アメリカ版) の二つが、あります。
a0212807_2028343.jpg私は、‘インターナショナル版(アメリカ版)’が、断然おもしろいと思います。
監督は、アメリカのシーンをリチャード・フライシャー監督(1919~2006)が担当、日本のシーンを舛田利雄監督(1927~)と深作欣二監督(1930~2003)が担当し共同監督としてクレジットされています。
a0212807_20351620.jpg当初、黒澤明監督のもと撮影は、始まりましたが、航空母艦6隻とゼロ戦(戦闘機)300機を要求され製作会社の20世紀フォックスは、巨額の制作費オーバーに激怒し「黒澤は、病気だ!」と監督を解雇していました。
a0212807_20354799.jpgそれにしても当時のアメリカ映画製作会社(20世紀フォックス)は、良い映画製作にかける情熱と気持ちが、太っ腹でどう考えても、アメリカ人の喜ぶような企画ではないのに、巨額を投じ戦争映画の超大作「トラ・トラ・トラ」を製作するとは‥この映画は、謎のハリウッド超大作映画と語りa0212807_20382347.jpg継がれています。
とにかくフライシャー監督ほかアメリカの製作陣が、撮ったシークエンスは、スゴイ!の一言です。
「ワレ奇襲ニ成功セリ」と突然始まった日本海軍のハワイ(オアフ島)真珠湾(パールハーバー)奇襲攻撃は、ド迫力! ‥ ゼロ式艦上戦闘機・九九式艦上爆撃機・九七式艦上攻撃機に改造された160機の旧式軍用機が、ハワイの空を飛びまわり、真珠湾(パールハーバー)a0212807_20384751.jpgに停泊している戦艦や駆逐艦、巡洋艦さらにハワイ オアフ島のアメリカ軍基地を爆撃する様子、迎え撃つアメリカ軍の高射砲など本物の実写映像に度肝を抜かれました。
映画は、太平洋戦争(第2次世界大戦)開戦前夜の日本とアメリカ国内の模様が、交互に淡々と描かれて展開していきます。
a0212807_20405011.jpg映画前半は、日本海軍の連合艦隊が、アメリカ太平洋艦隊の母港(海軍基地)ハワイ真珠湾(パールハーバー)を奇襲攻撃するまでの日本側とアメリカ側それぞれ双方の思惑(政治家と官僚の意見不統一)ならびに軍部の対立(日本側の陸軍と海軍の対立、アメリカ側のワシントンと軍の齟齬)など両国内の虚々実々の舞台裏を描いています。
a0212807_20412216.jpg映画後半は、日本連合艦隊の真珠湾(パールハーバー)奇襲攻撃とそれを迎え撃つアメリカ軍との‘リアリティ’あふれる圧倒的な戦闘シーンです。
とにかく、真珠湾(パールハーバー)のアメリカの戦艦や駆逐艦が、日本の戦闘機により破壊されていくシーン、ハワイ上空での戦闘機による空中戦のシーン、地上のアメリカ軍施設への爆撃シーンなどすべて実写で撮影しており、その迫力には、度肝(どぎも)を抜かれます。
a0212807_20432962.jpgアメリカ政府(ワシントン)は、当時日本の怪しい動きを察知するも表向き外交による和平交渉を続けつつ、すでに日本海軍の暗号を解読しており日本連合艦隊が、真珠湾(パールハーバー)を攻撃することを予知していました。
連合艦隊司令長官 山本五十六(アメリカ留学経験者)は、アメリカに勝つには、唯一短期決戦でアメリカの戦意a0212807_20441100.jpgを喪失させるしかないと判断、自論である真珠湾(パールハーバー)にいるアメリカ太平洋艦隊壊滅のための奇襲攻撃を提案しました。
ワシントンの日本大使館は、東京からの暗号解読に手間取りアメリカへの ‘宣戦布告’ が、間に合わず、日本海軍連合艦隊の真珠湾(パールハーバー)a0212807_20445440.jpg攻撃は、‘宣戦布告なし’で行われたため、当時のルーズベルト大統領演説「卑怯な国 日本」が、アメリカ国民の愛国心に火をつけました。
アメリカは、日本側の暗号をすでに解読、その動きを察知していながらワシントンの大統領府(ホワイトハウス)と軍統合参謀本部a0212807_212989.jpg(情報の隠匿体質と楽観論)、さらにワシントンから現地ハワイへの連絡が、遅く日本の戦闘機編隊は、警戒のないハワイに容易(たやす)く侵入しました。
アメリカは、アメリカで官僚的な政府高官が、軍事情報を共有しておらず(隠ぺいし合い)次々に、作戦ミスを犯すシーンや日本軍に先制攻撃させて開戦の口実を作ろうとするところなど今につながる普遍的なストーリーとリアルな演出にいたく感心しました。
a0212807_213780.png映画は、前半「アメリカに勝てないことが 解っていても戦争せざるを得ない独裁国家の軍国日本」と「日本から攻撃されることが 解っていながら楽観して現場に情報を伝えない民主的官僚国家のアメリカ」という当時の両国内事情を公平に描き、後半の戦争シーンでは、実物の戦闘機を多数用いて空中戦や爆撃の実戦シーンを撮影、CG(SFX・VFX)のない時代に、アメリカの軍人経験者から絶賛されるほどのリアルな戦闘シーンやスペクタクルなアクションシーンを ‘実写’ で撮影した そのド迫力の映像が、見る者を圧倒いたします。  (上写真 2枚 : アメリカ軍が撮影した真珠湾攻撃の記録写真)
by blues_rock | 2017-05-30 00:03 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
アメリカ(ハリウッド)製作の超大作戦争映画にして不朽の名作を2作品、二夜連続でご紹介したいと思います。
a0212807_1950263.jpg「西部戦線異状なし」が、1930年製作、「トラ・トラ・トラ」は、1970年とそれぞれ今から87年前、47年前とかなり旧い映画ながら、アメリカ(ハリウッド)が、第一次大戦(ヨーロッパ戦線)の敗戦国 ドイツの若い兵士たちを主人公にその悲劇を描いた「西部戦線異状なし」ならびに第二次世界大戦(太平洋戦争)の敗戦国でアメリカの敵国であった日本の視点も入れてハワイ真珠湾奇襲攻撃を描いた「トラ・トラ・トラ!」は、ハリウッド製作が、製作したゴマンとある戦争映画の中でも画期的な超大作戦争映画の異色作です。
映画のプロットもアメリカ国民受けするポピュラーな戦争ヒーロー物語ではなく、前述のとおり仇敵‘ドイツ’と‘日本’から本質にアプローチしています。
それもハリウッドのメジャー映画会社が、巨額の資金をつぎ込んで製作した戦争スペクタクル超大作映画にして不朽の名作であることは、特筆すべきことです。
【 西部戦線異状なし 】は、 戦争映画の古典にして映画芸術としても傑作です。
a0212807_1952756.jpg現在(いま)に至る映画100年史の中で原点となる ‘トーキー(音声映画)’ が、1927年に誕生し、その3年後ユニバーサル映画は、戦争映画の超大作「西部戦線異状なし」を製作しました。
原作は、ドイツの作家レマルク(1898~1970)が、1929年に発表した小説「西部戦線異状なし」で 1930年にこの映画を製作、監督したルイス・マイルストン(1895~1980)は、アカデミー賞監督賞(と作品賞)を受賞しています。
a0212807_19554330.png「西部戦線異状なし」は、1917、18年ごろのエーヌ川沿いに掘られた塹壕の最前線を舞台にドイツ軍とフランス軍が、向い合う中で両軍兵士たち死屍累々の塹壕戦を描いています。
映画は、ドイツの一兵士ポール・バウマー(演じるのは、リュー・エアーズ 1908~1996、生涯独身であった伝説の大女優グレタ・ガルボ、お気に入りの俳優)が、大学の老教授から愛国心を煽られて志願兵になり、熾烈な戦闘を繰り返す西部戦線へ送られるところから始まります。
a0212807_19565292.jpgポールは、すぐに悲惨な戦場で 身近な人の死と肉体の痛み、不安、恐怖、不条理や理不尽への怒り、そして殺戮の虚しさに やがて精神を破壊され、人の死や人生に無感覚になり 負傷による帰省故郷にも平安はなく、休暇を切り上げて前線へ戻りました。
a0212807_19574359.jpgそして、塹壕戦の最中、目の前にいる 一匹の蝶 に気を奪われた途端、敵狙撃兵の銃弾に倒れ戦死しました。
映画は、CGのない時代なので すべて実写、塹壕戦など砲弾が、飛び交う激しい戦闘場面は、リアルで凄絶です。
その中での撮影なので 出演している俳優たちの緊張した息遣い(テンション)が、見る方にも伝わり、血だらけになって塹壕や泥沼のなかを這いまわa0212807_19582794.pngる 敵味方入り乱れた兵士たちの迫撃戦の実相(リアリティ)を撮ったカメラワークは、見事の一言です。
どこからともなく聴こえるハーモニカの音の中、ポールが、戦闘中であることも忘れ 目の前の蝶に心奪われ身を乗り出したとたん銃弾に倒れるラストシーンは、見る者の心も打ち砕きます。
ポールが、戦死したその日の司令部への報告書には、「西部戦線異状なし、報告すべき件なし」と記載されていました。
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後編に続く)
by blues_rock | 2017-05-29 00:09 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)