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心の時空

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「西部戦線異状なし」と「トラ・トラ・トラ」(後編) シネマの世界<第729話>

【 トラ・トラ・トラ】(1970)は、20世紀フォックスによる日本とアメリカ合作映画で、日本版とインターナショナル版 (アメリカ版) の二つが、あります。
「西部戦線異状なし」と「トラ・トラ・トラ」(後編) シネマの世界<第729話>_a0212807_2028343.jpg私は、‘インターナショナル版(アメリカ版)’が、断然おもしろいと思います。
監督は、アメリカのシーンをリチャード・フライシャー監督(1919~2006)が担当、日本のシーンを舛田利雄監督(1927~)と深作欣二監督(1930~2003)が担当し共同監督としてクレジットされています。
「西部戦線異状なし」と「トラ・トラ・トラ」(後編) シネマの世界<第729話>_a0212807_20351620.jpg当初、黒澤明監督のもと撮影は、始まりましたが、航空母艦6隻とゼロ戦(戦闘機)300機を要求され製作会社の20世紀フォックスは、巨額の制作費オーバーに激怒し「黒澤は、病気だ!」と監督を解雇していました。
「西部戦線異状なし」と「トラ・トラ・トラ」(後編) シネマの世界<第729話>_a0212807_20354799.jpgそれにしても当時のアメリカ映画製作会社(20世紀フォックス)は、良い映画製作にかける情熱と気持ちが、太っ腹でどう考えても、アメリカ人の喜ぶような企画ではないのに、巨額を投じ戦争映画の超大作「トラ・トラ・トラ」を製作するとは‥この映画は、謎のハリウッド超大作映画と語り「西部戦線異状なし」と「トラ・トラ・トラ」(後編) シネマの世界<第729話>_a0212807_20382347.jpg継がれています。
とにかくフライシャー監督ほかアメリカの製作陣が、撮ったシークエンスは、スゴイ!の一言です。
「ワレ奇襲ニ成功セリ」と突然始まった日本海軍のハワイ(オアフ島)真珠湾(パールハーバー)奇襲攻撃は、ド迫力! ‥ ゼロ式艦上戦闘機・九九式艦上爆撃機・九七式艦上攻撃機に改造された160機の旧式軍用機が、ハワイの空を飛びまわり、真珠湾(パールハーバー)「西部戦線異状なし」と「トラ・トラ・トラ」(後編) シネマの世界<第729話>_a0212807_20384751.jpgに停泊している戦艦や駆逐艦、巡洋艦さらにハワイ オアフ島のアメリカ軍基地を爆撃する様子、迎え撃つアメリカ軍の高射砲など本物の実写映像に度肝を抜かれました。
映画は、太平洋戦争(第2次世界大戦)開戦前夜の日本とアメリカ国内の模様が、交互に淡々と描かれて展開していきます。
「西部戦線異状なし」と「トラ・トラ・トラ」(後編) シネマの世界<第729話>_a0212807_20405011.jpg映画前半は、日本海軍の連合艦隊が、アメリカ太平洋艦隊の母港(海軍基地)ハワイ真珠湾(パールハーバー)を奇襲攻撃するまでの日本側とアメリカ側それぞれ双方の思惑(政治家と官僚の意見不統一)ならびに軍部の対立(日本側の陸軍と海軍の対立、アメリカ側のワシントンと軍の齟齬)など両国内の虚々実々の舞台裏を描いています。
「西部戦線異状なし」と「トラ・トラ・トラ」(後編) シネマの世界<第729話>_a0212807_20412216.jpg映画後半は、日本連合艦隊の真珠湾(パールハーバー)奇襲攻撃とそれを迎え撃つアメリカ軍との‘リアリティ’あふれる圧倒的な戦闘シーンです。
とにかく、真珠湾(パールハーバー)のアメリカの戦艦や駆逐艦が、日本の戦闘機により破壊されていくシーン、ハワイ上空での戦闘機による空中戦のシーン、地上のアメリカ軍施設への爆撃シーンなどすべて実写で撮影しており、その迫力には、度肝(どぎも)を抜かれます。
「西部戦線異状なし」と「トラ・トラ・トラ」(後編) シネマの世界<第729話>_a0212807_20432962.jpgアメリカ政府(ワシントン)は、当時日本の怪しい動きを察知するも表向き外交による和平交渉を続けつつ、すでに日本海軍の暗号を解読しており日本連合艦隊が、真珠湾(パールハーバー)を攻撃することを予知していました。
連合艦隊司令長官 山本五十六(アメリカ留学経験者)は、アメリカに勝つには、唯一短期決戦でアメリカの戦意「西部戦線異状なし」と「トラ・トラ・トラ」(後編) シネマの世界<第729話>_a0212807_20441100.jpgを喪失させるしかないと判断、自論である真珠湾(パールハーバー)にいるアメリカ太平洋艦隊壊滅のための奇襲攻撃を提案しました。
ワシントンの日本大使館は、東京からの暗号解読に手間取りアメリカへの ‘宣戦布告’ が、間に合わず、日本海軍連合艦隊の真珠湾(パールハーバー)「西部戦線異状なし」と「トラ・トラ・トラ」(後編) シネマの世界<第729話>_a0212807_20445440.jpg攻撃は、‘宣戦布告なし’で行われたため、当時のルーズベルト大統領演説「卑怯な国 日本」が、アメリカ国民の愛国心に火をつけました。
アメリカは、日本側の暗号をすでに解読、その動きを察知していながらワシントンの大統領府(ホワイトハウス)と軍統合参謀本部「西部戦線異状なし」と「トラ・トラ・トラ」(後編) シネマの世界<第729話>_a0212807_212989.jpg(情報の隠匿体質と楽観論)、さらにワシントンから現地ハワイへの連絡が、遅く日本の戦闘機編隊は、警戒のないハワイに容易(たやす)く侵入しました。
アメリカは、アメリカで官僚的な政府高官が、軍事情報を共有しておらず(隠ぺいし合い)次々に、作戦ミスを犯すシーンや日本軍に先制攻撃させて開戦の口実を作ろうとするところなど今につながる普遍的なストーリーとリアルな演出にいたく感心しました。
「西部戦線異状なし」と「トラ・トラ・トラ」(後編) シネマの世界<第729話>_a0212807_213780.png映画は、前半「アメリカに勝てないことが 解っていても戦争せざるを得ない独裁国家の軍国日本」と「日本から攻撃されることが 解っていながら楽観して現場に情報を伝えない民主的官僚国家のアメリカ」という当時の両国内事情を公平に描き、後半の戦争シーンでは、実物の戦闘機を多数用いて空中戦や爆撃の実戦シーンを撮影、CG(SFX・VFX)のない時代に、アメリカの軍人経験者から絶賛されるほどのリアルな戦闘シーンやスペクタクルなアクションシーンを ‘実写’ で撮影した そのド迫力の映像が、見る者を圧倒いたします。  (上写真 2枚 : アメリカ軍が撮影した真珠湾攻撃の記録写真)
by blues_rock | 2017-05-30 00:03 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
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