デンジャラス・プラン 裏切りの国境線 シネマの世界<第722話>
原題の「Mercury Plains」(水銀平原)のほうが、この映画のプロットを一言で言い表しており、アメリカ(テキサス)とメキシコの国境線に広がる赤土の砂漠地帯、つまり真っ赤な辰砂(Mercury 水銀鉱物)の平原(Plains)を舞台に退役軍人のキャプテン(=大尉)と自称する男が、麻薬取引の横行する国境の無法地帯でみなし子や精神に欠陥のある10代の若者たちを集め私設部隊を編成し彼らに軍事訓練していました。
主人公のアメリカ人青年ミッチは、メキシコとの国境にあるテキサスの寂れた町で職もなく母親のもとで無為な日々を過ごしていました。
ミッチが、友人に誘われメキシコへ遊びに行きバーで飲んでいるとトラブルに巻き込まれ身ぐるみ剥がれて外に放り出されました。
途方に暮れていると得体のしれない怪しげなアメリカ人の退役軍人(自称 キャプテン)が、彼の前に現われ言葉巧みにミッチをスカウトし自分の軍事訓練に参加させました。
寡黙なミッチは、閉塞的な生活への焦燥感と抑圧への抑えきれない衝動で暴力をふるいますが、瞬く間にソルジャー(傭兵)としての才覚を発揮するようになりキャプテンや仲間の傭兵たちに一目置かれるようになりました。
キャプテンが、彼らに軍事訓練をさせていたのは、メキシコ国境地帯の麻薬取引を独占するためでした。
ミッチたちは、次第にメキシコの麻薬カルテルと抗争に巻き込まれていきます。
アメリカ人のモラトリアム青年ミッチというこの映画の重要な役割を演じたのが、期待の若手俳優スコット・イーストウッド(1986~)です。
父親が、名優にして名監督のクリント・イーストウッド1930~)で、若いころの父親ゆずりの端正なマスクが、印象的です。
クリント・イーストウッドの長男カイル・イーストウッド(1968~)も俳優で2008年のフランス映画「夏時間の庭」に出演しています。
私は、チャールズ・バーマイスター監督(プロファィル不詳)の作品を初めて見ましたが、B級のストーリーながら、結構凝った演出(見ている者をウンザリさせる登場人物たちのキャラクター)に、結構上手い映画作りをする監督だなと感心しました。
映画に登場する若い俳優たちも私の知らない俳優ばかりで、大人(社会)から見捨てられた孤独な少年や精神疾患のありそうなアブナイ若者など彼らが、演じたどの人物もリアリティに溢れていました。
ボス(キャプテン)の若い情婦を演じていたアルメニア出身の女優アンジェラ・サラフィアン(1983~ 2014年映画「エヴァの告白」に出演)が、殺風景な背景に紅一点の花を添えていました。