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ハッピイエンド  シネマの世界<第831話>

オーストリアの名匠 ミヒャエル・ハネケ監督の最新作「ハッピイエンド」は、2012年製作の名作「愛、アムール」に続く、フランスの名優 ジャン=ルイ・トランティニャン(1930~、1966年 クロード・ルルーシュ監督作品「男と女」で
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世界的に有名となる)と、名女優 イザベル・ユペール(1953~、近作では、2015年作品「アスファルト」、2016年作品「エル ELLE」・「未来よ、こんにちは」・「母の残像」いずれも秀作)の二人を親子にした秀作映画です。
ハッピイエンド  シネマの世界<第831話>_a0212807_04223801.pngフランス北部の港町カレーを舞台に元建設会社のオーナーで富豪ながら自殺願望のある85歳のジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティニャン)と、その後継者で現オーナー娘のアンヌ(イザベル・ユペール)を軸に、ジョルジュの孫娘エヴ(ファンティーヌ・アルドゥアン 2005~、現在13歳ながらハネケ監督の‛お眼鏡’に適う不穏な雰囲気と辛辣な眼差しの少女を見事に演じた新人女優)の冷徹な視線(クールで批判的な目)で、この三世代を取りハッピイエンド  シネマの世界<第831話>_a0212807_04224317.png巻く家族の欺瞞・悪意・不穏・エゴなどネガティブな感情をあからさまに暴いていきます。
ハネケ監督は、冒頭いきなり エヴが、自分のスマホで撮影した一緒に暮らす離婚した母親のプライベートな日常生活(下着姿・洗面・トイレなど)の映像を見せて見る者の心を挑発、そして妙な不快感にさせるハネケ監督ならではの演出は、さすがです。
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2009年秀作「白いリボン」、2012年秀作「愛、アムール」と二作続けてカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞したハネケ監督の “人間” を見つめる視線は、2017年製作の最新作「ハッピイエンド」でも健在です。
ハッピイエンド  シネマの世界<第831話>_a0212807_04230029.jpg映画は、難民が、多く暮らすフランス北部の港町カレーで彼らを雇い、豪華な邸宅に暮らす建設会社経営者のロラン家家長で祖父ジョルジュ85歳の誕生日に、三世代の家族が、集まるところから始まります。
この家族は、皆な嘘や裏切りなど家族の誰にも言えない秘密を抱えており、いつも一緒に食事していますが、温かい団欒(だんらハッピイエンド  シネマの世界<第831話>_a0212807_04230485.jpgん)には、ほど遠くいつもギスギスした雰囲気に包まれています。
一家の長ジョルジュは、高齢のためすでに事業から引退、娘のアンヌが、家業を継いでいました。
社長のアンヌは、建設現場の作業員の人身事故に会社の管理責任を問われ、その問題解決に次期後継者である一人息子のピエール(フランツ・ロゴフスキ 1986~)をハッピイエンド  シネマの世界<第831話>_a0212807_04230738.jpg担当させるも対応能力が、なく、さらに社長の母親アンヌが、創業者の祖父ジョルジュ85歳の誕生日パーティに招待した顧客の前で母親への当てつけのような恥さらしの大失態を演じました。
アンヌの弟の医者トマ(マチュー・カソビッツ 1967~)は、前妻と暮らす13歳の娘エヴが、起こした事件をきっかけに再婚した妻アナイス(ローラ・ハッピイエンド  シネマの世界<第831話>_a0212807_04233355.jpgファーリンデン 1984~)との新しい家族に彼女を迎え入れるも父トマには、すでに新しい愛人が、いることをエヴは、すぐ見抜きました。
お互い無関心な家族を冷徹な目で眺める13歳の孫娘エヴに自殺未遂の後遺症で車いす生活の祖父ジョルジュは、自分の秘密を打ち明けました。
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ハネケ監督が、13歳の少女エヴの目を通して描く人間ドラマは、どこまでも辛辣でクール、同朋の撮影監督 クリスティアン・ベルガー(1945~、2013年撮影の「悪童日記」は、秀逸)が、撮った映像もハネケ監督の演出同様
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ひんやりしています。
映画のラスト・シーンでアンヌ(イザベル・ユペール)が、自殺未遂ながらジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティニャハッピイエンド  シネマの世界<第831話>_a0212807_04240328.jpgン)の自殺を幇助しようとしたエヴ(ファンティーヌ・アルドゥアン)に振り返りながら向ける‘何とも言いようのない冷ややかな視線’は、映画史に残るイザベル・ユペールの名演技と言って良いでしょう。  (上写真 : ジャン=ルイ・トランティニャン、ファンティーヌ・アルドゥアンと撮影の打ち合わせをするミヒャエル・ハネケ監督)

by blues_rock | 2018-04-22 00:02 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
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