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心の時空

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ライオン 25年目のただいま  シネマの世界<第699話>

オーストラリアの新鋭ガース・デイビス監督、初めての長編映画が、現在KBCシネマで公開中の「ライオン 25年目のただいま」です。
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長編映画にデビュー(初監督)し、いきなりこの「ライオン 25年目のただいま」のような‘質の良い作品’を撮れる才能ある若手監督は、そう多くないと思います。
a0212807_821387.jpg映画の原作は、サルー・ブライアリー(1981~、右写真)が、自分の実体験を綴ったノンフィクション自伝「25年目のただいま~5歳で迷子になったぼくと家族の物語」で、この実話をリアルに再現した映画です。
1986年、5歳のサルウ(子供時代、サニー・パワール 2009~、成人になりデブ・パテル 1990~)は、西インド、ヒンディー地方の炭鉱がある田舎町カンドワで文盲のa0212807_833663.jpg母親と兄妹3人、貧しいながらも幸せに暮らしていました。
ある日、兄と出かけたサルウは、駅のベンチで待つよう云われていたものの帰らない兄を待つうちに止まっていた回送列車の中で眠ってしまいました。
無人の回送列車は、2日2晩山岳地帯の見知らぬところを走り続け1,600㌔離れた東インド(ベンガル地方)の港湾都市コルカタ(カルカッタ)に着きました。
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道行く人たちに5歳の幼いサルウは、‘迷子’であることを必死になって訴えるもののヒンディー語しか話せないサルウの言っていることが、ベンガル語のコルカタ市民には、理解できませんでした。
a0212807_891144.jpg映画の前半は、幼いサルウのサバイバルが、描かれ、5歳の幼いサルウに降りかかる波乱万丈のエピソード(自伝にある実話)を挿入しながら展開していきます。
後半は、コルカタで路上生活している(ストリートチルドレンの)5歳のサルウが、孤児院に保護されタスマニアに住むオーストラリア人夫婦の養子になり、大切に育てられメルボルンの大学に進学しました。
a0212807_8112629.jpgサルウは、成長するにつれインドのどこかで自分のことを想い暮らしている実の母と兄妹のことが、気になるようになり、きっと ‘迷子’ になった自分を捜しているに違いないと思い始めていました。
ある日、パーティに招かれた家で幼いころ好きだったインドの揚げ菓子を見て微かな記憶が、よみがえり兄と別れたおぼろげな駅の名前と近くの給水塔を思い出しました。
a0212807_8125739.jpgサルウと同じ大学のインド人留学生が、記憶の断片を「Google Earth」で検索し辿(たど)っていけば、分かるかもしれないとサルウにアドバイスしました。
その日からサルウは、憑かれたように「Google Earth」を駆使しコルカタまでの列車の推定スピードや乗っていた日数(時間)から距離を割り出しながら、おぼろげな自分の記憶にある駅名とその近くの給水塔を捜しました。
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映画は、サルウに残る幼いころの記憶の断片をフラッシュバックさせながら、養子になった時から自分を大事に育て愛してくれた養母スー(ニコール・キッドマン 1967~)の心情やサルウを支える恋人ルーシー(ルーニー・
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マーラ 1985~ 「ドラゴン・タトゥーの女」、「キャロル」)の愛情も丁寧に描かれています。
突然いなくなった幼い息子が、帰って来ることを信じ、どこへも行かず25年間待ち続けた実母カムラ(プリヤン
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カ・ボセの母親役も秀逸 下段写真)、何よりこの映画で特筆すべきは、5歳の幼いサルウを演じた当時5歳のサニー・パワールが、映画の前半に見せる圧倒的な存在感(リアリズム)で必見です。
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オーストラリアの撮影監督グリーグ・フレイザー(1975~ 「ゼロ・ダーク・サーティ」)が、「Google Earth」 の検索機能をドラマの道具立てにして見せる衛星画像や俯瞰ショット(ズームアウト、ロング)のカメラワークも秀逸です。
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ちなみに映画のタイトル「ライオン 25年目のただいま」のライオンは、ヒンディー語で「シェルゥ」と言うのだとか、幼いサルウが、人から名前を訊ねられたとき自分の名前「シェルゥ(ライオン)」を正しく発音できず、「サルウ」と
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答えたことに由来し「サルウ(シェルゥ=ライオン) 25年目のただいま」となりました。
by blues_rock | 2017-04-22 00:02 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)