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心の時空

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わたしは、ダニエル・ブレイク  シネマの世界<第698話>

a0212807_19403592.jpg映画監督デビューから半世紀(50年)、真にリベラルにして社会派の映画監督であるイギリスの名匠ケン・ローチ監督(1936~)の最新作「わたしは、ダニエル・ブレイク(I, Daniel Blake)」でもローチ監督は、90歳になった今も筋金入りの強靭な、鋼(はがね)のような精神力を見せ敬服いたします。
製作のレベッカ・オブライエン(1957)、脚本のポール・ラバーティ(1957)、撮影のロビー・ライアンなどケン・ローチ監督あうんの常連組なのでローチ監督の演出は、年齢を感じず生き生きとしています。
「わたしは、ダニエル・ブレイク」は、「麦の穂をゆらす風」に続きローチ監督にとってカンヌ国際映画祭2度目の最高賞パルムドールを受賞となりました。
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映画のプロットは、イギリスの失業者や移民などの貧民層を取り巻く劣悪な社会環境やイギリス保守党政府が、強行する反福祉政策の現実を実話に基づいたストーリーで構成しつつもドキュメンタリーのようなカメラワーa0212807_19524646.jpgクにより映画は、リアリティに徹しています。
だからと云って映画は、金切り声をあげて声高に叫ぶのではなく、静かな視線で社会の底辺であえぐ弱者が、生きていくのに最低眼必要な食料やライフラインなど経済的なこと、持病を抱えた人たちの健康のことなど人間としての権利を奪われ追い詰められていくイギリスはおろか世界共通の貧困の現状を描いています。
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ローチ監督は、2014年の秀作映画「ジミー、野を駆ける伝説」を最後の作品と引退宣言していましたが、冒頭でもご紹介したとおり、鋼(はがね)のような筋金入りの正義感の強いローチ監督は、いまイギリスやEU始め世界a0212807_19544681.jpg中に蔓延している差別や階級格差、貧困にあえぐ人々の窮状を見過ごすことが、できず弱者同士の助け合いで‘何かが変わる’という普遍的なメッセージを伝えるためまるで遺言のような新作「わたしは、ダニエル・ブレイク」を撮ったのだろうと私は、推察いたします。
a0212807_19553996.jpg映画の主人公ダニエル・ブレイクは、イギリス北東部のニューカッスルで精神疾患のある妻を看病しながら40年間大工として働きうち妻も亡くなり、自分の心臓病が、悪化すると主治医のドクターストップで大工として働けなくなりました。
そのためダニエルは、失業保険の申請に職安へ行くと官僚的なスタッフから仕事を捜すよう冷たく言われました。
a0212807_1956936.jpg長年、大工として働いてきた誇りと自信をもつダニエルは、爆発しそうな怒りを抑え静かに「大工として40年働き税金も納めてきた。 これからも大工として働きたいが、心臓病のため働けないので失業保険の申請に来た。」と伝えました。
それなら福祉センターへ行き、国の生活支援制度の申請をするようたらい回しされました。
ダニエルが、福祉センターに行くと今度は、「あなたは、働けるはずです。 就労活動をした証拠書類の提出と(パソコンのできないダニエルに)PCサイトの様式により生活支援の申請をしてください。 こちらから後日連絡します。」とけんもほろろの回答で門前払いされました。
a0212807_19574831.jpgここでも冷静に行政スタッフとの交渉に臨んでいたダニエルでしたが、若いシングルマザー ケイティ(ヘイレイ・スクワイアズ 1988~)と2人の子供の移民家族への官僚的な態度を見たダニエルは、ついに堪忍袋の緒が、切れました。
妻を亡くし 一人暮らしのダニエルと移民のケイティ家族は、隣人として助け合ううちに親しくなりますが、ダニエルもケイティの家族もともに厳しい社会のa0212807_19595087.jpg現実に追い詰められていきました。
ダニエル・ブレイクを演じるコメディアンのデイブ・ジョーンズが、長編映画初出演ながらリアリティある秀逸な演技を披露、社会の底辺で、貧しくとも誇り(=自尊心)を失わず真面目に働き生活しようとするダニエル・ブレイクの姿をコミカルな不条理劇であるかのように演じ俳優としてのその優れた才能を私たちに披露してくれました。
 (右上写真 : 演出の確認をするケン・ローチ監督)
by blues_rock | 2017-04-18 00:08 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)