密 偵 シネマの世界<第795話>
「密偵(スパイ)」は、この夏見た「お嬢さん」と同じ旧帝国主義軍事国家の日本が、1910年朝鮮半島を領有(日韓併合=植民地)し、朝鮮総督府の統治のもと1945年の日本敗戦までの35年間、朝鮮半島を支配していた時代の歴史映画です。
現在も従軍慰安婦問題が、韓国と日本の外交問題として根深く刺さった瑕疵(トゲ)として残るのは、正しくこの時代の出来事です。
韓国では、今でも韓国併合の元凶(チンイルパ=国族、売国奴)として李完用(りかんよう 1856~1926、チンイルパの代名詞、大韓帝国最後の内閣総理大臣)のほか親日反民族行為者として李氏朝鮮王族、閣僚、国会議員、朝鮮総督府官吏、日本軍将兵など1、000人余りの韓国人が、チンイルパ(国族、売国奴)として怨念と憎悪の対象になっています。
ともあれ、終戦時10歳だった方たちもいまや82歳、まして戦後(1945年)生まれの人も72歳、軍人や徴兵兵としてあの忌まわしい戦争に駆り出された人たちもほとんどが、鬼籍に入り従軍慰安婦問題も韓国と日本の‘戦争を知らない世代’間の不幸な対立(マスコミが煽るので余計深い溝)となっています。
誰が、誰に謝罪するのか ‥ この歴史の瑕疵を乗り越えなければ、永遠に両国間の友誼は、得られません。
対立と紛争に与するのは、戦争を煽る連中に加担することで好都合、良識ある韓国と日本の国民が、望んでいる未来の国の姿とは、思えません。
さて、前置きは、これくらいにして映画の紹介をしますと監督が、韓国映画を代表する巨匠キム・ジウン監督(1964~ 2010年「悪魔を見た」)、製作スタッフも撮影監督キム・ジヨンほか精鋭揃い(公式サイト こちら)です。主演は、朝鮮総督府の日本警察イ警部を名優ソン・ガンホ(1967~、1999年「シュリ」、2000年「JSA」、2002年「復讐者に憐れみを」、2009年「渇き」など韓国を代表する名監督作品に出演)、イ警部と対立するも心を通わせていく義烈団リーダーのキムにコン・ユ(1979 2013年「サスペクト 哀しき容疑者」)、そして二人に関わるのが、義烈団メンバーの女をハン・ジミン(1982~)、
義烈団を徹底して取り締まる日本警察の警務局部長ヒガシに鶴見辰吾(1964~)、ヒガシの部下で同僚のイ警部を密通者として疑うハシモト警部をオム・テグ(1983~)、義烈団の団長チョンに名優イ・ビョンホン(1970~)と見応えがあります。
ジウン監督は、大日本帝国の大韓帝国併合から10年経った1920年の京城(現ソウル)を舞台に大韓民族独立の地下組織義烈団と日本警察との熾烈なエスピオナージ(諜報活動)攻防を描き、日本警察イ警部(ソン・ガンホ)の祖国の支配に協力しなければならない哀しみと辛さそして怒りを義烈団リーダーのキム(コン・ユ)に向けていく様は、胸を打ちジウン監督が、演出するアクションは、スタイリッシュで美しくジヨン撮影監督のカメラワークが、秀逸です。
義烈団と日本警察の諜報活動が、活発になる中、義烈団は、日本の主要施設を破壊するための爆弾を上海から京城(現ソウル)へ向かう汽車に積み込みました。
それを察知した日本警察、内部情報が、漏れていることに気づいた義烈団も日本警察のイ警部へ接触するようになりました。
密偵(スパイ)は、一体誰なのか、互いの組織が、疑心暗鬼となり裏切り者を捜しながら大量の爆弾を積んだ汽車が、中国の国境を越えて京城へ向かっていました。