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心の時空

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a day in my life

最低。  シネマの世界<第772話>

現在、福岡市 中洲の大洋映画劇場にて単館上映中の「最低。」が、最低どころか、今年最高の日本映画(傑作!)だろうと私は、思います。
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映画は、現役AV女優 紗倉まな(1993~)の純文学小説「最低。」を監督の瀬々敬久監督(1960~ ピンク映画=ポスト・ロマンポルノ系の成人映画で有名)が、たいへん気に入り名脚本家の小川智子(2005年「狼少女」脚本)
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と共同で脚本を書いて監督した‘AV女優とその家族の断絶した愛と再生の物語’です。
主人公は、三人の女性です。
a0212807_0423588.jpg一人は、放浪癖のある元AV女優の母親をもち自分を育ててくれた祖母と三人暮らしの女子高生のあやこ(山田愛奈 1998~)、二人目が、自分に関心を示さない夫との単調な日常生活に耐え切れず新しい世界(AV女優)へ踏み出す美穂(森口彩乃 1986~)、三人目は、家出同然に田舎(釧路)を飛び出し東京に出て人気AV女優となった彩乃(佐々木心音 1990~)です。
a0212807_0434056.jpg瀬々監督の演出は、主人公女性三人の心の襞(ひだ)を繊細(こまやか)に描き、リアリティにあふれる彼女らの表情を撮影監督 佐々木靖之(1980~)のカメラが、丁寧に捉えています。
AV撮影現場のシーンは、非日常ではありますが、いやらしさは、なく性行為もリアルな自然さで‘なるほど ‥ たぶんそうだろうな’と、AV撮影現場を見たことのない私も撮影現場の一生懸命さに感心しa0212807_0445652.jpg納得した次第です。
女子高生あやこを演じた山田愛奈のいつも哀しげで鬱屈した表情や孫のあやこに、いつも穏やかに接し、やさしい愛情を注ぐ 祖母役の根岸季衣(1954~)、元AV女優であやこの母親を演じる高岡早紀(1972~、)が、全身から放つ虚無的で投げやりな態度の秀逸さ(2006年の秀作映画「長い散歩」で演じた育児放棄したネグレクト母親も秀逸でした)、さらにAV出演に躊躇(ためら)いつつもa0212807_0484360.jpg現在(いま)の自分に踏ん切りつけるため夫に嘘をつき、AV撮影現場へ行き撮影を終えた後に、危篤の父の死を聞いたときの美穂役の森口彩乃(オールヌードで初めてAVの撮影に臨むシーンの女優としてのリアルな演技もすばらしい)の絶望感あふれる自己嫌悪の表情も秀悦でした。
a0212807_0524621.jpg原作者のAV女優 紗倉まなが、最も投影されているのは、佐々木心音が、演じる人気AV女優の彩乃であろうと推察いたします。
劇中、釧路から自分を迎えに来た渡辺真起子(1968~)演じる母親に娘の彩乃が、「AV女優は、私の天職なんだ」と激しく食ってかかるシーンは、どうやら原作者の紗倉まな自身にあった本当のエピソードのようです。a0212807_0533914.jpg
「最低。」は、主人公女性三人の日常を同時進行でシャッフルしながら‘AV女優’という非日常的な性愛行為を売る職業に就いた女性たち(あるいは家族)が、日常の生活でヒトに公言できない(ヒトから知られられたくない)という悲観を心の奥にもつ等身大の彼女たちと家族とのデリケートな感情を丁寧かつ正確に描いた傑作映画です。a0212807_055469.jpg
いまやスマホでAVを見ようと思えば、いつでもどこでもだれでも見れる時代にあって、性愛の向こう側(AVや売春という非日常の世界)とこっち側(普通の性愛がある日常)を区別することは、できなくなりました。
映画の中で重要な道具となるのが、ポーランドの画家 ズジスワフ・ベクシンスキ(1929~2005)の画集です。a0212807_055483.jpg
私は、この映画「最低。」の原作を読んでいませんのであくまで私の想像ながら、人間の絶望と滅びを描いた終焉の画家として有名なポーランドの画家 ズジスワフ・ベクシンスキの絵が、劇中、主人公たちの心象風景のように 時どき登場するのは、原作に主人公三人のこれからの人生が、触れられていない(瀬々監督)ので、起承転結の ‘結(終わり)の章’ を瀬々監督は、ベクシンスキの絵を見せながらその真逆のイメージである “希望” を加える演出をしたのだろうと推察しました。
by blues_rock | 2017-12-06 00:26 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)