アトミック・ブロンド シネマの世界<第783話>
シャーリーズ・セロンを一躍有名にしたのは、彼女の美貌とスレンダーな長身(177㌢)目当てにオッアァされるのが、セクシーなブロンドの役ばかりであることにうんざりしていた頃、パティ・ジェンキンス監督(脚本・監督)の2003年映画「モンスター」に出演(こちら参照) ‥ この映画に‘シャーリーズ・セロン’の美しい姿は、どこにもなく、醜く太った(役作りで14㌔肥満)殺人鬼を怪演し、アカデミー賞主演女優賞ほか、多数の映画祭で主演女優賞を受賞、私は、そのシャーリーズ・セロンの姿に、女優としてのプロ魂を強く感じそれ以来の大ファンになりました。
2012年のSF映画「プロメテウス」では、痩身の謎の女(ウェスト50㌢の衣装を装着)を演じ、2015年デストピアSF映画「マッドマックス 怒りのデス・ロード」で登場したシャーリーズ・セロンは、スキンヘッドにノーメークという出で立ち ‥ マッチョで勇敢なウーマン戦士ながら、なかなかセクシィで魅力的でした。
2017年の「ワイルド・スピード ICE BREAK」では、世界を容赦なく破壊していく極悪非道なサイバーテロリストをシャーリーズ・セロンが、顔色一つ変えず冷酷に演じ、そして新作の「アトミック・ブロンド」(製作・主演)は、そのクールさに加え‘長回し(ノーカット撮影)’による過酷な格闘シーンを披露、この凄腕女スパイ‘ロレーン・ブロートン’の役づくりにトレーニング・ジムに通い筋肉を鍛えながら格闘技も習得、男性相手のスパークリングを行ない、撮影では、歯を折りながらもスタントを使わず自ら激しい格闘シーンを演じています。
シャーリーズ・セロンは、プロデューサーとして監督に、長編初監督ながら、これまでアクション映画のスタントマンや助監督キャリアのあるデヴィッド・リーチ(プロファィル不詳)を抜擢し自分の演じる女スパイ‘ロレーン・ブロートン’を近年の‘ジェームス・ボンド’をしのぐ‘ジェイソン・ボーン’並みのスパイ映画の主人公にしました。
映画の舞台は、1989年東西ドイツの国境であったベルリンの壁が、崩落するその頃、世界情勢に致命的な危機をもたらす工作員の極秘リストを何ものかに奪われ、イギリス諜報機関MI(エムアイ)6の凄腕工作員ローレン・ブロートン(シャーリーズ・セロン)は、リスト奪回の指令を受けました。
CIAの要人にアメリカの名優 ジョン・グッドマン(1952~)、ベルリンで時計職人を装うMI(エムアイ)6の連絡員をドイツの名優 ティル・シュヴァイガー(1963~、1997年製作・脚本・主演の西ドイツ映画「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」は秀逸)などが、アトミック・ブロンドと呼ばれるロレーン・ブロートンと絡み、極秘リスト奪回のためにソ連のKGB、東ドイツの諜報機関と丁々発止の策略により陰謀と裏切り(内部通報者の存在)の応酬を繰り広げ、映画は、なるほど‘そう来るか’のエンディングになります。
ローレン・ブロートン(シャーリーズ・セロン)の魅力は、危機察知能力と危険回避のための判断力に優れ、同時に身の回りにある物を瞬時に使って脱出する応用力の高さなどジェイソン・ボーンのような能力にあります。
格闘にしても女である弱点をロレーン・ブロートンは、肘で顔面を攻撃したり膝を狙って動けなくするなど、相手の急所を狙い、また相手の力を利用して投げ飛ばしたりと攻撃に無駄がなく、戦闘に慣れたプロの特殊工作員である動きを見せてくれます。
その壮絶にしてリアルなアクションシーンをデヴィッド・リーチ監督は、1シーン1カットの長回しで撮影、それに応えたシャーリーズ・セロンの女優魂に敬服いたします。
(右上写真 : 撮影の合間に談笑するデヴィッド・リーチ監督とシャーリーズ・セロン)